表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エロゲ世界でハーレム無双? ふざけんなあっ!  作者: 空也真朋
第五章 魔の城アルザベール城
161/265

50話 ゴールデン岩長劇場

 「岩長くん、やめてください。この場にはご協力いただいた警察関係者の方もいるんですから」 


 「い、いや警察に何の協力をさせていたと……まさか、僕たちのことを調べたのか?」


 「はい。岩長くんは高校卒業後、デイトレーダーになってたいへん稼いでいますね。たしかにデイトレーダーはパソコンひとつで出来ますが、銀行証券業の経験はおろか、大学で経済すら習っていない岩長くんが、富を築くほど稼ぐのは不可能なはずです」


 「不可能だからどうした。そんな事を調べて何の証明になる」


 「さらに言えば新宿事変の数時間前、岩長くんは手持ちの株をすべて売り払い、危険なレートで空売りに走りましたね。普通なら狂気の沙汰ですが、異界から城が現れ、あらゆる株が暴落。日本……いや世界中が経済崩壊しつつある中で、いったいどれほど稼いだのか」


 「…………」


 「岩長くん。あなた、未来を知ることが出来ますね。能力持ちと考えると、これが一番しっくりハマります」


 「くっ……」


 「咲夜さんの驚異的な身体能力、南原真琴さんの治癒の魔法とアンノウンを殺せる力。いったいただの少女に、いかにしてこのような能力を持たせることが出来るのか。いかがでしょう、あなたがその力を持った経緯についてお聞かせ願えませんでしょうか」


 「知らん! ぜんぶ竜崎の想像だ! 裁判になろうと抵抗する!」


 まさに土俵際の粘り腰! 圧倒的有利な状況なのに決められない竜崎さんは微妙にあせる。


 「やれやれ。ご家族の団らんでは成長したように見えましたが、ぜんぜん変わっていませんでしたね。遠回りなやり取りにつき合うのにも限度があります」


 「ざぁまぁーみろ竜崎。異世界がどうたらなんて話、認めなければどうにでもなる。法律もまだ整備されていないのだからな」


 なんかもう、すっかり僕っ子キャラが跡形もなくなったね。


 「では、新宿の異変についての重要参考人としてご同行願いましょう」


 「フッそれは強制できまい? オレも親父のグチを聞いて手続きの重要性は知っている。一般市民を不当に拘束した場合の責任問題は誰に行くんだろうなぁ?」


 お父さんのこめかみがピクピクしてる。

 自分の苦労話を屁理屈に使われてるんだから、腹立たしいことこの上ないね。


 「ふぅ。どうにも岩長くんが偏屈すぎて話が妙な方向へ行ってしまったようですね。私たちは別に逮捕や拘束といった処置をとりたいわけではないのですよ。ただ岩長くんの持っている異世界技術を学び、新宿の異変に対処する方法を知りたいだけなのです」


 「知ったことか。オレはオレで仕事がある。そんなことにつき合っている暇はない」


 「無論、ただで教えてもらおうとは言いません。防衛研究所の職員資格と異世界技能顧問の就任についての話が決まっています。ゆくゆくは試験部隊指揮官としての出世も……」


 圧迫があまり効果がないので、次は懐柔路線。

 本来は鞭でたっぷり脅した後に飴玉をしゃぶらせて言いなりにする。警察とかの黄金パターンだ。

 でもお兄ちゃんにとっては、その飴玉はちっとも甘くない。


 「うわーーッいやだーー!! 働きたくないーーッ!!!」


 お兄ちゃん、いきなり地面に寝っ転がってもだえた。


 「毎日朝早く起きて、糞な上司の言う事きいて、激務マシマシの仕事なんかしたくなーい!」


 手足をジタバタさせて喚き散らす。まさにだだっ子だ。

 さっきまでの爽やかイケメンとのギャップで、さらにヒドい。


 「やめろ岩長ぁッ! 防衛省幹部の方々の前でお前は何をやっとるのだぁッ」


 「お父さん……なんて絶望的な顔……」


 昔からお兄ちゃん絡みで激昂した顔はよく見てたけど、今まで一度も見たことがないくらい絶望に染まっている。

 無理もない。政府のお偉いさん方の前で息子のコレをさらされたら地獄だ。


 「うるせーーッ! 咲夜、こいつらをみんな殺せーーッ!」


 私の名前を出してムチャクチャ言わないで欲しい。

 みなさん懐に手を入れて私を剣呑な目で見ているんですけど。


 「あ、大丈夫です。殺しませんから」


 手のひらをヒラヒラ振って無害アピール。

 さすがに、こんなんで大量殺人に走ったらバカだろう。


 「岩長あッ! 本当にいい加減にせんかッ。首相の使いの方もいるのだぞ!」


 もっともお父さんだけは死んだも同然。社会的立場がストップ安に暴落だ。

 



 「く……フ、フフフ……フハハハハハハはははははははははは」


 ―――!?


 突然お兄ちゃんが、うずくまって笑い始めた。

 そして「ユラリ」立ち上がり、ナナメ視線で皆を見回す。


 「そうだ……竜崎、お前の言う通りオレは異世界技術をこの手に握った」


 え? それ認めちゃっていいの?


 「あっ、やっと認めてくださいましたか。では、先ほどの話も……」


 「ならば、どうする。オレを殺すか」


 「いえ、別に犯罪者というわけではありませんから。ですが先ほども言ったように、その力を日本のために役立ててほしいんです。未曾有宇の困難と異世界技術に興味を持った人々への対処。そのために、その技術を我が国で管理させてほしいんです」


 「フッ、つまり『働け』ということか……だが、断る!」


 「……では、何を? それを認めてどうするつもりです」


 さすがにこの頃には、お兄ちゃんが思惑にまったくはまらない人間だと竜崎さんも分かったようだ。その不安顔は、思惑から外れた方向にお兄ちゃんが進んでいく予感か。


 「いいか、オレは異世界技術を貴様らに先んじて握った。それ、すなわち……」


 ゴクリ。


 「新時代の神だ!」


 ええーーッ! 働きたくないがために、神にまでなっちゃうの?

 あ、元創造神だっけ。


 「世の中は堕ちるところまで堕ち人間は腐るところまで腐っている。腐った人間が多すぎる。ならば正さねばならない」


 竜崎さんも顔色がみるみる悪くなっていく。

 こういう事を言う人って、標的はたいてい権力者だからなぁ。つまりここに居るみなさんのこと。


 「オレは使命に目覚めた。オレになら出来る! この腐った世の中を(あらた)め、真の平和、理想の世界を創生することが。この力は腐った政治家官僚どものエゴのためなどではなく、そのために使うべきなのだ!」


 みんな蒼白な顔でお兄ちゃんの演説に聞き入っている。

 その理由を説明するように竜崎さんは語る。


 「岩長くんの資金力。異世界技術を求める潜在的な支持者と支援者。新宿の脅威から守るカリギュラの実績と戦闘力。それらが反社組織の創生に使われるとしたら恐るべきテロ組織が誕生しますね」


 まさに新たな日本の悪夢の誕生だーーッ!!


 「咲夜さん。あなたは、どうするのです」


 「え……『どう』って何がです?」


 いきなりカヤの外の私に話がふられる。


 「あなたはどちらにつくのです。父親の希望にそって私達に協力していただけるか。それとも、そこの新時代の神に従うか」


 「新時代の神に従います」


 私の答えに竜崎さんは目を見開く。

 私にお兄ちゃんを押さえさせようって魂胆だったんだろうけどね。

 でも私も防衛省なんかに就職するわけにはいかないんだよ。


 「馬鹿者(ばかもの)おーーッ!! 咲夜、誰についている!? ふざけるなぁーっ!!」


 ううっ、ゴメンナサイお父さん。さすがに親にあわせる顔がないよ。

 竜崎さんは疲れたように椅子に座って料理をつまみ食いしながら言う。


 「わかりました。岩長くん咲夜さん。あなた方を防研に入れるのはあきらめます。ですから新時代の神はやめてください」


 「おおっ! いいだろう、働かなくていいなら新時代の神なぞやめてやるわ」


 この中で一番腐っているのはお兄ちゃんじゃないかなぁ。


 「いいのですか管理官。異世界技術の研究は首相からも是非にとおっしゃられている案件ですが」


 あ、長舩さんだ。この人も来ていたのか。


 「国防機関に思想的に問題のある人間を入れるわけにはいきません。多少の強引な手段も、咲夜さんが向こうにいる以上使えませんし。対立して新宿の対処に遅れが出るのも問題です。現状引き下がるしかないでしょう」


 竜崎さんの敗北宣言にお兄ちゃんはニヤリ。「計画通り」と悪い顔で呟く。

 なんという悪魔的知略! お父さんの社会的立場を破壊しつくして勝利をもぎとったよ。……抜け殻みたいになったお父さんを見ると心が痛むなぁ。

 

 「野花咲夜さん」


 帰ろうとする私たち。その背中に長舩さんが声をかける。


 「残念です。あなたなら日本の英雄になっていただけると思っていました。共にこの大いなる国難に立ち向かう同志になっていただけると」


 「私は大人達の英雄より、子供達のヒーローが性に合っているみたいです。だから『共に』じゃないけど、カリギュラになって国難に立ち向かいます」


 カリギュラのキメポーズで応える私に、長舩さんは苦笑した。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ