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エロゲ世界でハーレム無双? ふざけんなあっ!  作者: 空也真朋
第五章 魔の城アルザベール城
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45話 ふたりはカリギュラ

 「絶対死守! コウモリを一匹も後ろに通すな!」


 ガガガガガガガガ……

 小銃の一斉射撃をコウモリの群れに見舞うも、銃弾は貫通もせずその体内に飲み込まれるだけだった。


 「やはりダメか。ここまで小銃(ハチキュー)の斉射が通用しない生物とは……いったい何でできている?」


 その生物は―――

 無数の銃弾も爆発も、ものともせず。

 人を殺し、喰らい、蹂躙する。


 「きゃあああっ」

 「うわああああああっ」

 「だっ、だずげっ……うぎゃああああっ」


 何故かヤツラは踏みとどまり戦う我々より先に、おびえ逃げまどう背後の市民を優先して襲い始めたのだ。無念であれ、我々になす術はない。


 「完全に抜かれました! 脱出中の市民が次々に襲われています。走行中のトラックすら襲撃されて、犠牲を止めることが出来ません!」


 「ヤツラ、人間を一人も逃がさないつもりのようだな。せめて自衛隊の一分として、市民だけでも逃がしたかったが……無念だ」


 暗澹たる心の闇に惑ったその時だ。

 


 カアアアアアアッ


 ―――!?


 突如深い闇のようなこの場所に、まばゆい光がほとばしった。


 すると、市民をもてあそぶように殺戮にはげんでいたアンノウンどもは、逃げるように空へ逃げていく。


 そして、市民達の中心に、先ほどまではたしかに居なかった奇妙な恰好の一団があらわれた。


 「なん……だ? あれはいったい何者?」




 ◇◇◇◇


 サクヤ視点


 とりあえず真琴ちゃんの術の精度を見るために、転移と同時に攻撃白魔法を放ってもらったのだが。


 「ホワイト。大技つかったのに、ほとんど仕留められなかったね。狙いがぜんぜん甘いよ」


 「ごめんなさいブラック。術の集中だけで精一杯で」


 「まぁ、そうだろうね。経験不足どころか、経験まったくナシだもんね。とりあえず登場したんだし、言われた通り名乗りしようか」


 「ううっ。やっぱり、しなきゃなんないんですね」


 真琴ちゃんと背中合わせに、モミジのカメラ前でカッコかわいいポーズ。


 「光の使者ギュラブラック」


 「光の使者ギュラホワイト」


 「ふたりはカリギュラ!」


 モミジは「ププッ」と吹き出し、ラムスは「アホか」と小さく呟く。

 くそう、まるでコスプレなりきりガールズ。恥ずかしくてたまらない。


 とにかくノルマの茶番は果たしたし、さっさと本業をはじめよう――

 と、メガデスを抜こうとしたところで、プロデューサー様から「待て」がはいってしまった。


 『おいブラック、ホワイト。絵ズラ的にイマ一歩足らん。視聴者に何しに来たのかもちっとも伝わらんし。もうひと言カッコいいキメゼリフ頼む。ビシイッとカメラ目線でキメろ』


 ダメ出しまであるの? たくさんの人間が死んでいる前で、何やらせてるんだ。

 光の使者じゃなくてDQNの使者だよ。


 まぁ吟遊詩人が私の活躍を謳ったヤツを適当にパクればいいか。私が戦う前に吐いたとかいう、ありえないセリフなんかあったし。

 カメラに向かって「ビシイッ」


 「許されざる罪の泥濘と闇の深淵に住まうものたちよ!」


 「さ、さっさと、おうちに帰りなさーい!」


 ガクンッ

 真琴ちゃん、魔族相手に『おうちに帰りなさーい』はないでしょう。小学校のケンカじゃないんだから。

 

 「ごめんなさい、こういうのって、何言ったらいいかわかんなくて」


 「……いい。どうせ茶番だ。それより魔族も、どうやら態勢を立て直したみたいだ。来るよ」


 空に逃げたヤツラの中から、五匹のデーモンが猛禽のごとく私たちに襲い掛かる。

 「きゃあっ」「うわっ」と、みんなは叫ぶも、私は冷静にメガデスを抜く。

 

 「そらっ、つばめ返しはお手のもの!」


 ビュッビュンッ

 瞬時、五匹すべての翼と腕をメガデスの刃で切りおとす。

 バランスをくずしたデーモンが地に落ちる前、胸を切り裂きトドメを刺す。


 「なにっ!?」


 トドメを刺したはずのデーモンたち。

 されどその活動は停止せず、地に伏したまま不気味な唸り声をあげ続けている。


 「なんて生命力! 魔断の剣メガデスでも倒しきれないんじゃ、お兄ちゃんの言う通り職業(クラス)剣士じゃ分が悪いね。ま……じゃなくてホワイト」


 「【浄化キュアライト】!」


 真琴ちゃんの浄化の光が、うめく魔族どもに降り注ぐと、それらは枯れたような骸になって果てた。


 「やっぱり魔族を倒すにはホワイトの力を当てるのが一番か」


 されど真琴ちゃんには術を敵に当てる技量はない。ならば……


 「よし、ホワイト。私に浄化をどんどん撃ってきて」


 「ブラックに? ……わかりました。【浄化(キュアライト)】!!


 私に浄化の光が当たる瞬間、それをメガデスにとりこみ、刃にしてデーモンに放つ!


 「そりゃあっ! 【聖光雷鳥剣】!!」


 光の刃に当たったデーモンは切り裂かれ、地に落ち、活動を停止する。


 「一発でこれか。いける!」


 私と真琴ちゃんの合わせ技なら、上級魔族といえども簡単に倒せる。


 ビュンッ ビュンッ ビュンッ

 人間を襲おうとするグレーターデーモンを優先に堕としていく。


 『いいぞ、いいぞ、視聴者数が一億突破したぞ。リソースもガンガン入ってきている。このリソースがあれば、また世界をひとつ創っちまえるかもな。ブイ・チューバーはいい仕事だ』


 腐れチューバーめ。人の不幸を金と力に変えるんだから、救いようがないね。

 されど冒険者とはこういうお仕事。

 おのれの罪を嘆こうとも、戦うことをやめたりは出来ない。


 「ホワイト、早く次を……」


 だんだん浄化の間隔が長くなってきた。

 見ると、真琴ちゃんの顔色が悪く息も乱れている。


 「ホワイト、疲れてきた?」


 「い、いえ……がんばります。ここで疲れてなんていられません」


 「気力だけで最後までいけないよ。いったん止めて」


 モミジがカメラをラムスに渡して真琴ちゃんを診てみる。


 「魔力切れ……やないな。術を使った集中とフィードバックで精神が消耗したみたいやわ。経験不足がたたっとるな」


 真琴ちゃんを小休止させてざっと空を見回してみるも、まだまだグレーターデーモンは舞っている。


 「魔力切れなら回復薬あるんやけど、これはなぁ。残念やけどシマイや」


 「冗談じゃない。この状態でシマイにしたら、ここに居る人達みんな殺されちゃうよ」


 「真琴はんに無理させんのか? 精神崩壊してまうで」


 ギリッ……

 空を見ると、早くもこちらの不調を見とったデーモンは再び人々を襲い始めている。

 私達に助けを求める声が痛々しい。


 「……モミジ。ホワイトに回復薬を飲ませたら、カメラかまえて」


 「やるんか? いいんやな」


 「今の私達はヒーローだ。殺される人達を見捨てたりはしない。ホワイト、あと一発だけがんばって」


 「は……はいっ、やります」


 ヒュルンヒュルンヒュルン……


 真琴ちゃんを回復させると、私はメガデスを頭上にかかげ大きく回転させる。

 私の決断は、ただ一発の大技ですべてのグレーターデーモンを殲滅させること。

 一方、真琴ちゃんは杖をかかげ、術の構えをとるも不安げな顔。


 「いいんですね? 【セイクリッド・フレア】は最高位の白魔法攻撃術。魔の者に絶大な効果を発揮しますが、直撃すれば人間も生きていられません。本当にそれをブラックに当てるんですね?」


 「『(えん)(きわ)むれば(あた)(わざ)無し』スキル【竜円(りゅうえん)制極覇(せいきょくは)】を覚えた時頭に浮かんだ言葉だ。大丈夫、私は死なないよ。剣王だもん」


 「心配いらんぞホワイト。こういう時のブラックは無敵だ。貴様の半端な術など軽くいなすわ」


 「そや! ブラックはんホワイトはんのカッコいい所、この世界の(もん)に知らしめたるわ。バッチリ撮ってやるで」


 ラムス、モミジ、ありがとう。こういう時、やっぱり仲間っていいな。


 「……いきます! 『祈りは大地に満ち、祝福は天より降り注ぎ、闇照らす灯火(ともしび)求む(なれ)に、光芒(めぐ)り白き主は降臨(こうりん)したもう。【セイクリッド・フレア】!!!」


 圧倒的な極大の浄化が天より私に降りそそぐ。

 このまま白い光と一体になって、そのまま昇天してしまいそうだ。


 されど私は剣王。

 森羅万象、風火水地光闇の元素も、神も仏も、遍くすべてを刃に変えわが身わが剣となす!


 ギュルンギュルンギュルン……


 浄化の光をメガデスの回転に乗せ、それを渦とする。

 やがてそれは巨大な白光の渦となり、私の周囲を奔流となって回る。


 「スキル【白光(びゃっこう)竜円(りゅうえん)制極覇(せいきょくは)】ぁぁぁ!!!」


 光の渦を魔の気配のあるが場所に流し、置き、叩きつける。

 『ここでデーモンすべてを倒しきらなければ、後はない』

 ただその思いひとつで、巨大な力の奔流を制御し続けた。



 

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