15話 女の子ハンター華麗なる敗北
「私がリーレット家に仕える、ですか。それは【栄光の剣王】を終わらせ、ラムスを裏切ることになりますね」
「筋を通せばよろしいのです。ラムス様には別の役割があります。わが家は彼の実家の力も必要としています」
まぁドルトラル帝国と不穏な状況下だし。
実際、原作では戦争がはじまった。
だから彼女が、領主様の家の者として遮二無二戦力を集めたい心情は理解できる。
でも、それは無理だよ。
私がオトさなきゃならないターゲットはロミアちゃんだけじゃないから、この領にはとどまれない。
私は早く帰ってラムクエの続きをやりたいんだよ。
日本のご飯とお菓子も食べたい。
ここのマズ飯から一刻も早く解放されたいんだーっ!
「ロミア様、たいへん光栄なお申し出ですがお断りいたします」
「あら、理由をお聞きしても?」
「私はラムスと互いに『英雄になる』と志を誓った身です。その誓いを破ることは、剣士の義に背きます」
お、今の私、ちょっとカッコ良くね?
こりゃエロテクなんか使わなくても、ロミアちゃんオトせちゃうなぁ。
なんてね。
「ラムス様とともに夢に生きると?」
「ええ、私は夢のようにしか生きられません。ロミア様なら、私などが仕えなくても、良い領主になられて政をしていかれますよ」
と、いきなりロミアちゃんは席を立ち「フワリ」舞うように私の近くに来た。
「ああ、悔しいなぁ。サクヤ様。領主ってね、強く見せているけど本当はすごく臆病なんだよ」
「ロ、ロミアさま?」
ロミアちゃんは鼻先が私のとくっつくくらいに顔を近づけてきた。
ロミアちゃんの可愛い顔がアップになってドキマギ。
「普通の人は物語の人のようには生きられない。英雄なんか目指して夢みたいに生きられるのは、何かに選ばれたすごく強い人だけ」
天使の笑顔に一瞬視えた。
「本当に残念。私はこんなに弱いのに。こんなに強い人を求めているのに」
ロミアちゃんは……すごく怒っている?
ハッ!
考えてみたら、この状況ってすごいチャンスじゃね?
ここに来る前、スマホでエロテクをレベル7にまで引き上げてきた。
いまの私は、さながらエロテクモンスター。
ウブなネンネ(古い)なんて、唇ひとつでダウンさ。
ロミアちゃんはアヘ顔で倒れて、目覚めたら私にメロメロになるのだ。
フフフ女の子ハンターに無防備に近寄ったことを後悔しなさい。
「ズキューーーン」と擬音がブッ飛びそうなキス一発で。
その可愛い顔をブザマなアヘ顔に変えてあげるわ、原作みたいにね!
そういえば、あの頃はエッチなシーンも女の子のアヘ顔も嫌いだったけど。
ノエルと経験積みまくった今なら興味しんしん。
いくよ、ロミアちゃん!
アヘ顔が原作と同じか、見せてもらおうじゃない!
ズキューー……
コツン
ロミアちゃんが額をぶつけて止めた。
「サクヤ様、そういう趣味があります?」
ドッキーーン!!!
その一言だけで、何かすごくバツが悪くなってしまったぁ!
動け、私!
もう二度とチャンスなんてないぞ!
強引でもキスして、エロテクパワーでロミアちゃんをオトすんだ!!
システム再起動!
ググッ……
「いいよ、サクヤ様になら。殿方の前に唇の貞操をささげても」
――――!!!?
「もし、サクヤ様が当方に仕えてくださるならね」
もしかして、逆にオトされている!?
ロミアちゃんの透き通るような目を見ていると、吸い込まれそうになる。
行くことも退くこともできなくなった私は……
ガタンッ
椅子から落ちた。
幾多のモンスターを屠ってきた私が、こんな華奢な女の子を前に、尻もちをついて、ただ見上げている。
「驚いた? こんな、ふしだらなことを言う子で」
ロミアちゃんは、変わらず天使のような笑顔のまま。
「でもね、私は次期領主なんだよ。この程度の覚悟はあるよ」
どうして、こんなにも、ただ綺麗でいられるんだろう。
彼女をオトすためにエロテクモンスターなんかになった自分が、ひどくみじめに思えてきたよ。
「風が冷たくなってきたね。今日はここまでにしようか、サクヤ様」
この冷たい風が私を悲しませるよ。




