A選択 「そうするよ。やっぱり信用ができないから、別の方法を探す」
「そうするよ。やっぱり信用ができないから、別の方法を探す」
「ほほう、まさか本当にその選択を選ぶとは」
「どうにもアンタの浮かれっぷりに嫌な予感がしてね。これは絶対ロクでもないことを企んでいる。このまま話を進めてアンタの言うままに行動するのは危険だからね」
「しかし、ここを出てどうするのです。まさか何かアテでもあるのですかな?」
「まぁね。それじゃあね、ルルアーバ」
くるりと踵をかえし、出入り口へ速足に向かう。
そんな私の背中からルルアーバのつぶやきが聞こえた。
「残念ですよ。その選択を後悔いたしませんように。いかな試練があろうとも」
こうして宝物庫を出て城の出口を目指す。
別のアテというのはお兄ちゃんだ。あの創造神チートの兄なら、相談すれば上のヤツラを魔界へ送り返す方法くらい考えてくれるだろう。
そう思って城から出る前にスマホでお兄ちゃんに連絡をとろうとしたがつながらない。
「そうか、この城の中は魔法が一切使えないんだった」
このスマホも魔法を使用して世界線を越え電波を飛ばしているので、当然使えないんだよね。
しかたなくスマホをしまった時だ。
ズズーーン……
―――――!!?
いきなり城の上が激しく振動し、「ギャアギャア」と激しい鳴き声が聞こえた。
そして無数もの魔物の気配が生まれた!
「アイツ、まさか魔物の封印を解いて!?」
一瞬ルルアーバの元へ戻ろうとしたが、気配が城の外へあちこち拡散しているのを感じて踏みとどまった。
「外にいるみんなが危険だ!!」
外へ駆け足で出てみると、高速で飛来する巨大な黒い怪物の群れがみんなを襲い掛かろうとしていた!
あれはグレーターデーモン!?
「雷鳥けーーん!!!」
ズバアアアアアアッ
斬撃によって肉体の大半をえぐられ、グレーターデーモンどもは地に落ちる。
「よしっ、さすが魔法斬りの剣メガデス。上位魔族にも通用する」
とはいえ、次々に襲い掛かってきてキリがない。
おまけに生命力がハンパなく、体の半分を失っても生きていて、なお襲い掛かってくる!
「みんな! 急いでここから逃げるんだ!」
「サクヤ、いったいどういう事なのだ。なぜいきなり城の中の魔物の封印が解けた?」
「ルルアーバだ。アイツやってくれたな!」
まちがいなくルルアーバが魔物どもの封印を解いた。
まさか奴の誘いを断ったことで、こんなとんでもない真似をするなんて!
「と、とにかくゲートを開きます。ここに来る前に寄った村跡にポイントをつくってありますので、そこまでいけます。……ヒッ!?」
いきなりノエルが全身の羊毛を逆立たせておびえた。
「ヤベェ……なんだ、このとんでもねぇ巨大な魔の気配は」
ゼイアードも同じように毛を逆立たせてひたすら脂汗をかいている。
そしてふたりを怯えさせている気配は私も感じている。
「アイツ……まさか貴族まで解放したのか? なんて奴だ!」
城からは魔の瘴気が城を覆わんといきおいよく噴出している。
瘴気をまとい黒く変貌しつつあるアルザベール城は、まさに魔の城。
さらにグレーターデーモンどもは次々這い出てきており、天をも覆わんと空を黒くそめあげる。
「ノエル、ゲートを。このままじゃ私たちもヤバイ」
この世界にふたたび魔の軍勢の脅威がやってきた事を予感しつつも、私たちは帰るしかなかった。
その後なんとかアルザベール城を脱し、ゼナス王国へ帰還を果たしたが、そこでも試練が待っていた。
ユリアーナがすでに国の政権を掌握しており、ゼリアさまは幽閉されたという。
そしてドルトラル帝国からやって来る魔物は今までにないほどに強力。
私たちはユリアーナの命で、それらの迎撃に駆り出される日々を送る。
私たちは必死に戦うも、毎日何百もの人間は死に、人間の生存圏は日々小さくなってゆく。
「糞っ、ルルアーバめ。こんな事なら宝物庫から出る前にヤツを斬っておくべきだった」
BADEND ~今さら後悔しても遅い~




