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エロゲ世界でハーレム無双? ふざけんなあっ!  作者: 空也真朋
第五章 魔の城アルザベール城
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35話 宝物庫での惑い

 長い長い地下への階段を降りたその突きあたり。

 まるで核シェルターを思わせるブ厚い扉の部屋を目の当たりにした。 


 「つきました。ここが宝物庫です」


 ルルアーバが「パチン」と指を鳴らすと、その扉は「ギギィ」と開いた。

 ゼイアードがここの鍵をユリアーナからもらっていたけど、意味なかったね。


 「しかし、なんてブ厚い扉だ。頭のおかしいレベルで頑丈だね、これは」


 厚さは一メートル程なうえ、材質もそうとう密度の濃いものだ。

 メガデスと私の剣術スキルでも破壊できるかは疑問だ。閉じ込められたらヤバイな、これは。


 「帝国中の財を集める場所ですからな。魔人王軍の健在なりし頃の拙者の仕事は、ここの管理でした。すなわち、我が家も同然の場所なのですよ」


 「つまりホームという訳か。罠もしかけ放題だね」


 「フフフ、では中に入るのはおやめになりますか? 時に臆病は、危険に身をおく者にとって必要な資質でありますゆえ」


 「それが出来ないことを知っててわざと言っているだろう。危険をかってここを調べることを名乗りでたんだ。引けやしない。さっさと中を見せてくれ」


 「これは失礼いたしました。では、どうぞ」


 気配探知を最大にして、奴の案内で宝物庫に足を踏み入れる。

 中は奇怪な魔導具(アーティファクト)が綺麗に陳列されていた。


 「ずいぶん色んなものがあるね。モミジに見せたら喜びそうだ」


 「魔人王陛下が製作したり収集したりのアーティファクトコレクションですよ。もっともほとんどは人間の命を代償に効果を授かるものですので、お気に召されないかもしれませんが」


 召されないね。全部ぶっ壊したいよ。

 ともかく怪しい気配はどこにも感じられないので、奴の案内のまま奥へ奥へと進んでいく。


 「さて、お待たせいたしました。これが魔界貴族を魔界へ送り返せる魔導具です」


 奴がそう言って紹介した魔導具は宝物庫の突きあたりに鎮座する巨大な機器。

 コンソールパネルなんかもあって、まるで専門機関のコンピュータみたいだ。


 「デカいな。これはどういったものなの?」


 「【世界線超弦半径跳躍動波縮退霊励起魔導器】。上階の魔界貴族および魔界の住人の危険度が最大となった場合、それらを魔界へと送り返すための魔導器です」


 「そうか、魔界貴族や上位魔族は魔人王にとっても危険。奴はそのための安全装置を用意していたんだ」


 「左様。魔人王陛下が魔界貴族を捕獲したのは、その力を我が物とするため。不死の力や魔物支配など、その力を取り込み魔人王となられました。ですがその危険性もご承知でした。万一貴族が捕縛結界を破り世界に解き放たれては、自らも世界も終わりですからな」


 なるほど、たしかにこれは私たちがもっとも欲しいもの。

 魔人王の命が尽きる前に、これで上の物騒な奴らを魔界へ返せば何の憂いもなくなる。


 「それで、これはどうやったら動くの。まさか人の命とか?」


 「人の命千人程度でしょうか。召喚時は三千人を使いましたので、だいぶ安く使えるようになりましたよ。ハッハッハ」


 この野郎……

 まさかイケニエのための人間狩りでも要求するつもりか?


 「ですが、緊急時に千人もの人間を集めて儀式を行うわけにはまいりません。そこであらかじめそのエネルギーをとある物質にストックしておき、それを組み込むことで、素早くこれを起動できるようしてあるのです。その整備も拙者の仕事でありました」


 ドルトラル帝国国民のみなさん、悼みます。

 こうやって何万人もの人の命が魔導具のエネルギーとして使われて、この世界は一度人類滅亡寸前にまで陥ってしまったんだろうね。


 とにかく事の是非を問うのは時間の無駄。

 あえて善悪を無視して、これの情報を聞かないと。


 「それで、これはどうやったら動くの。そのとある物質ってのは?」


 「それは今、サクヤ殿が持っておられますよ」


 「私が? ……あっ、まさか!」


 「左様。拙者がバーラウム殿に預けた聖者の石。それこそがこの転移魔導具のエネルギーであるのですよ。今現在はサクヤ殿が所持しておられまるでしょう」


 「これか……」


 背嚢からバーラウムが使っていた岩の塊のような聖者の石と呼ばれるそれを取りだす。

 やたら硬いと思っていたが、人間の命千人分をエネルギーにして凝縮してあるらしい。


 「さて、あらためて聞かせていただきましょう。その聖者の石、これを起動させるために拙者にいただけませんかな?」


 「ふうん? これを起動させて、上の危険物を魔界に送り返してくれるんだ」


 「もちろんです。魔界貴族や上位魔族は拙者にとっても危険極まりない存在ですからな。一刻も早く送り返したいという気持ちに嘘はありませんよ」


 「………………」


 たしかにコレを魔界貴族を送り返すために使うなら、渡してしかるべき。


 奴にとってもアレは危険だろうから、その動機に納得はする。


 しかしコレは元々奴が所有していたもの。いつでも送り返すことは出来たはず。


 なのに私たちがここへ来るタイミングまで、それをしなかったのは何故だ?


 それに奴の妙に浮かれた様子にも、悪い予感がする。

 

 「どうしました。迷っておられるのですか? それを渡して拙者にすべてまかせていただけませんかな。それともまさか、ここを出て別の方法でも探すつもりですかな?」


 「くっ!」


 「さぁ、返答はいかに?」


 さらに「ヤバイ!」という直感が警鐘を鳴らしている。

 どうする。イヤな予感はするが、奴にコレを渡すか?

 それとも……



 ――選択――


 A 「そうするよ。やっぱり信用が出来ないから、別の方法を探す」


 B 「私の答えはこれだあっ!」と、ルルアーバを斬り捨てる


 C 「わかった。聖者の石は渡す。魔族どもを魔界へ送り返してくれ」

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― 新着の感想 ―
[一言] Aだな。兄に相談すべきだ。
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