26話 お兄ちゃんはおしまい!
某アニメの影響で、このタイトルで書きたくなりました。
ちょうど、おしまいにしても良いような兄もいることだし。
その夜。私は寝室で真琴ちゃんと二人っきりになった。
今までこの世界のくわしい事情なんかを教えないまま引っ張りまわしてきたけど、そろそろ限界。私と離れて生活しなきゃならないこのタイミングに、教えることにした。
「――異世界……小説なんかでよくある設定だけど、本当にあったなんて」
「私は明日から遠出のクエストだから、何かあっても助けることは出来ない。でも強く生きてほしいんだ」
「はい。必ず生きぬいてみせます。家族を置いて死んだりできませんから」
その強いまなざしに安心を感じる。
うん、この娘なら大丈夫。
何があっても、たとえ股間に象さんが生えようとも、強く生き抜くはずだ。
私は憂いなく安心してクエストへ行くよ。
「ええっと、それで聞きたいんだけど。真琴ちゃんはシャラーンやセリア様とヤっちゃったよね。女の人とそういう関係になるの、どうだった?」
「うん……覚悟はしてきたことだし、それに悪くはなかったと思います。もう女性とそういう事をすることに嫌悪感はありません」
「そっか、それは良かった。私も最初は女の子とのえっちには抵抗あったんだけどね。元の世界に帰るために経験積んでいるうちに普通になってた」
「え……サクヤさんも? ええっと、元からの趣味じゃなかったんですか?」
「まぁね。レズは強制的になっちゃったんだよ。いいことなのか悪いのか分からないけど、でも生きるためだもん。しょうがないよね」
「私も……そうしなければならないんでしょうか。この世界から生きて帰るために」
「そうなるね。とくに明日から私はいなくなるから、それが真琴ちゃんが生きる術だよ。だから……今ここで、君にやり方を教えておく」
「サクヤさん……」
それからは、私たちは無言で見つめ合った。
最近はコンビニ感覚でも女の子とヤれるようになったけど、今は妙に緊張する。
やっぱり真琴ちゃんの象さんのせいだね。
正直言えば今までペニバンやら張り形つかったプレイはしたことないし、私はもっぱら男役専門だ。だから自分の中にモノを入れるのは、これが初体験ということになる。
ああ、ヤバイな、真琴ちゃんの顔。
女の子らしい所もあるけど、中世的な男の子にも見えるし。
真琴ちゃんの美少年みたいな顔に魅かれキスをした。
押し倒されながらも、しばらく見つめ合う。
長い間、ほんとうに長い間、見つめ合いながら自然と私たちは合わさい……
――『ヤメロオオオオッ!! サクヤ、お前は真琴とやってはいかぁぁぁん!!!』
………………………………お兄ちゃん?
なぜかお兄ちゃんの叫びが部屋の中で響いた。
私と真琴ちゃんは見つめ合ったまま固まった。
「……なに? 今の声って」
「サクヤさんのお兄さん? でも……どこから?」
ぐるり見回しても誰もいない。
【気配察知】スキルを使っても、私たち以外の気配はない。
されど女性が生来持っている危険信号が激しく鳴っている。
最悪な変態行為にかかっている予感だ。
落ち着いてさっきの声の出どころを思い出す。
それは……
「ここだ!」
「ガバッ」と毛布をめくりあげ、そこにある真琴ちゃんの象さんを睨みつける。
長年エモノの気配を探ってきた勘が、コレだと告げているのだ。
「お兄ちゃんだね? 真琴ちゃんの象さんに意識があるんだね?」
「ぐっ……よくわかったな。そうだ、この象さんはオレの分身だ」
「お……おち〇ちんがしゃべっている!!?」
おち〇ちんが話す異常事態に真琴ちゃんは真っ白になっている。
『この娘なら何があっても大丈夫』とかさっき思ったけど、こんな異常事態が起こったんじゃ、ぜんぜん大丈夫じゃないぞ!
「それにしても、口もないのにどうしてしゃべれるのよ」
「オレの念に合わせ周りの空気を振動させ、声に変えている。お前に挿入なんて危機に瀕して、新たなスキルを開発してしまったのだ」
しかしこうして下半身と会話するってシュールな光景だよね。
さっきまでコレにドキドキしてた乙女心は何だったんだ。
「それで? なんでこんな事してんのよ。そもそもの『エロゲ開発のためのモニター』ってのも嘘だね?」
「そうだ、それは真っ赤な偽り! この象さんはオレの象さんと感覚がつながっている。真の目的は、コレでそっちの女を味わうことだったのだ!」
ガアアアアアンッ
身内のあまりの変態行為にめまいがした。マジこの兄の妹やめたい。
「最初は童貞野郎の象さんに、感覚だけつなげるつもりであったのだがな。お前が紹介したこの真琴の、ジャニタレみたいな面を見て直観した。コイツは変態女にモテると! ゆえに創造神の御業をもって股間にオレの象さんの分身を創造したのだ」
神の力を変態に使うなんてギリシャ神話のゼウスみたいだ。
全能神ってこういうものだろうか。
「わ……私のおま〇こにサクヤさんのお兄さんの分身が……いつも見られていたってこと?」
「ああっ真琴ちゃん!」
真琴ちゃんはショックで「カックン」と意識を失った。
この兄はどれだけ女の子の尊厳を破壊すれば気がすむのだろう。
「最初の質問に答えて。どうしてこんな事したのよ! お兄ちゃんならこんな事しなくても、そっちで女の人と経験しまくりでしょ!」
「うむ。ハイレベルキャバ嬢やらアイドルやら、いい女は何人もヤったな。だがな……むなしいのだ。ラムスだった頃に女に感じた愛は、誰からも得られなかった」
そりゃ札ビラで買い漁った女から愛なんて得られないでしょ。
「そしてお前を通し、かつて心から愛し共に戦った女たちを見ていると、どうにも衝動は抑えられなくなった。もう一度ヤツラに触れ、そのぬくもりを感じたいと! 創造した世界に触れられない創造神の宿命に抗おうとも!」
一人の元神は、愛深きゆえに愛を求め愛に狂い、妹をレズにした。
そして今また一人の少女の股間に己の象さんの分身をあたえフタナリにした。
なんなんだ現代に生まれたこの神話は。
変態話の多いギリシャ神話なら、片隅にのせても気づかれないかもしれない。
「わかるよ。私も同じ女たちを愛した身だからね。みんなに触れることが出来なくて、さみしかったんだよね」
そっと象さんをやさしく手でつつむ。
「サクヤ……わかってくれるか」
「人は愛ゆえに苦しみ、愛ゆえに悲しむ。それでも愛を求めずにはいられない。だけど……」
そして一気にひねり上げた!
ギュムーーッ
「ギャアアアアッ!!? やめろ、強く握るな! それはオレのアソコとつながっているんだぞ!」
「『愛ゆえに変態行為に走る』はしちゃいけないんだよ! そのムクイとして、コレをプチッとしてあげる。これでもうココがさみしくなくなるね」
「ヤ、ヤメロォォォ! サクヤ、キサマ実の兄を殺める気かあああっ!」
「その通り。お兄ちゃんはおしまい! お姉ちゃんになる心の準備はできた?」
「い、いやだあああああっ!!」
「あははははははっ、そーれプチ……」
「サクヤさん……やめて……死んじゃう……」
「あ……」
真琴ちゃんのかすれた苦しそうな声で我にかえった。
しまった、コレは真琴ちゃん自身のモノでもあったんだ。
「わ、わかったか。コレを潰せば真琴もタダではすまんぞ。ショック死するかもしれん」
くっ……なんという皮肉!
そんな! 真琴ちゃんの身のために、真琴ちゃんを蝕む変態を見逃さなければならないなんて!
「それに明日からセリアの相手をしなければならんのだろう。オレにまかせておけ。象さんの遠隔操作でメロメロのアヘアヘにしてやるからな。フハハ」
くうっ、嬉しそうな声がムカつく。
しかし、そんなことをしたら、ますます深みにハマってしまう気がする。
ああ、こんな特大の不安を置いたまま、遠出のクエストに行かねばならないなんて!




