25話 セリア様のお茶会
本日は私の遠征前の祝いということで、セリア様がお茶会を開いてくれた。
というのは表向きで、対ユリアーナの進捗状況を聞かせていただけるそうだ。
お呼ばれしたのは私とロミアちゃん、そして病の治療のお礼ということで真琴ちゃんも参加した。
「セリア姫殿下、ご快気心よりお祝いいたします。」
「いたします」
「い、いたします」
「ありがとうロミア様、サクヤ様、マコト。こうして元気に政務に復帰できたのも、皆のおかげ。わたくしの病をはらっていただけた事、心より感謝いたします」
うーん、あの治療法については問題ないのかな?
私もノリノリではっちゃけちゃったし、絶対何か言われることを覚悟したんだけど。
そのことについては何も言われないまま、お茶会ははじまった。
異国よりとりよせたという茶葉を使いセリア様自らお茶を淹れて皆に提供する。
「ハームベルク国のマルメクチップですね。この時期一番の香りの良い茶葉ですが、よく手に入りましたね」
「ふふっ、少し無理をしましたわ。ですが、こうしてお茶を楽しむことができるのも健康な証拠ですわね」
「頭を悩ませていた問題はみな解決しそうですしね。で、いつ頃ですの?」
これは『ユリアーナの断罪はいつ頃?』という意味だ。
王族の暗殺はものすごい重罪。ゼイアードから証拠も出されており、あとはユリアーナを逮捕するだけなんだけど……。
なぜかセリア様は困ったような顔をした。
「それが……残念ですが、ユリアーナ殿を断罪するのは延期せねばならなくなりました」
延期? 自分を暗殺しようとした危険な女なのに?
「それはどうして? セリア様を呪詛にて暗殺しようとした証拠はゼイアードから提供されたのでしょう?」
「ええ、その通りです。王族の暗殺を企てたものは極刑。当然、ユリアーナ殿にもその報いを受けさせなければならないのですが……やれば兄王の親征が問題になってしまいます」
「はい? 陛下の親征って何の話です?」
セリア様の説明によるとこうだ。
昔、ゼナス王国にはリーレット領のさらに向こうに【ベルガモス領】と呼ばれる豊かな穀倉地帯を有した領があったそうな。
だがそこはドルトラル帝国との戦争によって奪われてしまったそうだ。
現在そこはザルバドネグザルの放った魔物が徘徊し占領されているが、そこを取り返す計画が立ち上がっているそうだ。そしてその遠征は、ホルガー陛下の親征となる予定だという。
「広大な穀倉地帯を組み込むことによって難民の食料を賄い、兄王陛下の『魔人王戦で何もしなかった』という汚名を払拭する二得を狙った計画です。現在、その遠征費用を捻出している最中でした」
「はぁ。それがユリアーナの断罪を延期しなければならない事に、どうつながるんです?」
「ユリアーナ殿は、どこからか莫大な遠征費用を募ってきたのです。それによって即時の親征が決まってしまいました。もしここでユリアーナ殿を断罪してしまえば……」
「ち、中止になるんですか?」
「いいえ。兄王陛下が大々的に宣伝をしてしまったので中止はできません。代わりにわたくしが費用を集めなければならなくなりますね」
「あちゃー」
それはキツイ。ここでユリアーナを断罪したら、セリア様は激務でまたゲソゲソにやせてしまう。
「ま、まぁユリアーナの急所はおさえてあるんだから、急ぐ必要はないでしょう。呪詛を使ったバーラウムという奴は倒したし、セリア様もご健在ですから、ユリアーナも大したことは出来ないはずです」
ゼイアードの批評では、ユリアーナ自身はただの偉そうな女にすぎないらしい。
こと政治に関してはチートスキル持ちのセリア様に勝てるわけもないし、慌てることはないよね。
「そう……ですね。ですがユリアーナ殿の遠征費用の捻出、あまりにタイミングが良すぎる気がするのです。本当にまだゼイアード殿がこちらに寝返ったことに気づかれていないのでしょうか?」
「あ、それは大丈夫です。帝室財宝を取りに行くことを任され、皇城の詳細な情報と通行のための鍵までもらったそうですよ。ユリアーナは完全にゼイアードを信用しています」
「そうですか。やはり偶然でしょうね。となると、機会をおとなしく待った方が良さそうですね」
その後、話題はドルトラル帝国帝都の皇城アルザベール城の探索の話に移った。
「サクヤ様は明日から帝都へ行くという話でしたね。メンバーはどうなりました?」
「はい、私の方は私とラムスとノエル。それにアーシェラとモミジとゼイアードですが、他に王国監察官の方やベテラン冒険者などが集い、総勢二十八名で皇城の探索を行うことになりました」
「遠征の間はマコトさんはどうなされるのです?」
「私の方であずかります。いちおうわがリーレット家の侍従官という事にしてますし」
ドルトラル帝国領内はモンスターがそこらに居る危険な場所。そして皇城内はさらに危険なモンスターが居るらしいから、とても真琴ちゃんを連れてはいけない。
私自身が真琴ちゃんを守れないことは不安だけど、ロミアちゃんにまかせるしかないね。
「そのことなのですが、マコトはわたくしが預かりましょう」
「はい?」
「あの……私をですか? 治療とはいえ、あんなことをしたのに?」
セリア様の様子が変わった。
妙に不安そうで、顔はうっすら朱がさしている感じだ。
「その……不安なのです。ふたたび呪詛をかけられ倒れた場合、またしても政務に穴が開いてしまいます。なので万一のためにマコトをわたくしの側に置いておきたいのです。もちろん責任をもって身の安全はお守りいたしますわ」
「え? いや呪詛をかけた術士は倒したし、もうその心配は……」
と、言いかけたが、セリア様の様子を見て口を閉じた。
気づいたのだ。セリア様の真琴ちゃんを見る目がやけに熱いのを。
さらには妙にモジモジして女らしくなっている。
え? え? これはまさか……セリア様、ハマっちゃったの?
そういやあの時、騒がれると面倒なんで、かなりエロテクをがんばった気がする。
で、真琴ちゃんのアレを挿入するときはものすごい絶頂だった。
もしかして思った以上にタラしちゃったの?
メス堕ちしちゃった?
ロミアちゃんも気づいたようで、私に目配せする。
こんな……何も知らない美少年をさみしい女に提供するようなことして良いのかなぁ。
「わかりました。では真琴はセリア様にお預けいたします」
「そうですね。セリア様になら安心です」
実際、不安だらけだけどね。
セリア様を騙してヤっちゃった手前、断れないんだよなぁ。
「え? え? 私がセリア様の所へ?」
ゴメン、真琴ちゃん。帰ってくるまでセリア様のお相手よろしくね。
行く前に、セリア様をタラしたエロテクを伝授しておくから。




