22話 狼は見た! 謎の治癒術の正体
さて、セリア様謁見前に、彼女付の侍女やら騎士やらをロミアちゃんが用意してくれた薬で眠らせた。まるで私たちがくせ者みたいだね。
そして野外にしつらえたテーブルチェアに鷹揚に座るセリア様に謁見をしたんだけど。
やはりシャラーン同様やせ細り死相が色濃く出ている感じだった。
それでも彼女は美しく、理知的な眼差しには魅かれるものがある。
まずは庭園入り口で起こったくせ者騒動のことを聞かれるだろう。
でもそれより、病の治療のことに話をもっていかないと。
「サクヤ様。サクヤ様にはわたくしの病を治す術があると耳にしました。それはまことですか?」
え、いきなり?
しかもセリア様の方から切り出した?
いや、たしかにあるけども。
いったい、どこのどなた様から耳にしたんだろうね?
まぁいいや。
時間が無いから、『話が早くて助かる』と思っておこう。
「その通りです。私の故郷には二千年の歴史を刻み受け継がれてきたおそるべき治癒術があるのです!」
「ええっ! 二千年も!?」
「そしてこの真琴こそ、その一子相伝の継承者! この真琴にかかれば、セリアさまのその難病も、指先ひとつでダウンでしょう!」
「そ、そんなすごいお方だったのですか。それをこんな野外の、もてなしもない場所にお招きして、たいへん失礼いたしました」
セリア様は佇まいを正して立ち上がると、ドレス裾をつまみ深々と淑女の会釈を真琴ちゃんにした。
それに対して、真琴ちゃんは泣きそうな顔。
そういう設定なんだから、もっと堂々としててよ。
「おいサクヤ、なんだそのワケワカラン設定は。二千年の一子相伝の治癒術ってなんなのだ」
「それってもしかして、日本一有名な暗殺拳とかでは?」
ごめんねラムス、真琴ちゃん。
私が創作の設定なんか考えるには、どっかの漫画かアニメから持ってくるしかないんだよ。
「マコトさま、どうかよろしくお願いいたします。今、宮廷ではたいへんな問題が持ち上がり、わたくしは一刻も早く復帰せねばならないのです」
やせ細ってはいてもこぼれるような美しい笑顔で、真琴ちゃんに微笑むセリアさま。
「え……あ、あの……治療というのは、その……」
ええい、罪悪感なんか感じてどもってんじゃないよ。
まったく、世話がやけるな。
「セリアさま、これは真琴の家の秘術。それゆえこのまま行うことに些かためらいがあるようです。なので、お目を隠すことご容赦を」
「あっ?」
すばやくセリア様の背後にまわり目隠しをする。
そしてこの間合いにはいったなら戦闘開始だ!
たしかに二千年も一子相伝も大嘘だけどね。
でも『指先ひとつでダウン』ってのだけは嘘じゃない。
くらえ、エロテクフィンガー!!
「あっ、ああっ! な、なにをなさるのです。サクヤさま」
「治療です。少しばかり体をほぐさないといけませんので、不快かもしれませんがご辛抱を」
「い、いえ不快ではありませんが……ああっ! ヘンな……気持ちに……」
私の指がセリア様の体をはうごとに高貴た佇まいは崩れ乱れてゆく。
アンアンあえぐセリア様の姿に、ラムスも真琴ちゃんも前かがみ。
フフッ、その様子だとビンビンだね。
ならば! 今こそ三つの心を一つにして合体だ!!
レェェッグオープン! ぐぁばっ!!
「ああっ、な、何をするのです。はしたない!」
受け入れ態勢完了!
恐れず迷わず悲しまず、ただ飛びこめ!
戦士よ叫べ! 獣となり牙を突き立てろ!!
「真琴ちゃん、今こそ合体だ! チェェェェンジ! ゲッタァァァァ……」
ロボにはなりません。
「は、はいっ! セリアさま、ごめんなさい!」
ガッガッシィィィィィン
究極レディ合体! ありえるはずのない幻の合身が、今ここに!
「ああっ、あ、あなた男!?」
「ち、ちがいます! これは意味不明の謎ペニバンで……ああっ止まらない!」
おおっ! 真琴ちゃん、すごい腰使い。
では、とどめだ! ダブルエロテクフィンガーー!!!
「「ああああああああああっ!!」」
ふうっ、治療終了。
心なしか、事がはじまる前までは死相が色濃く出ていたセリア様のお顔に生気が戻っている。
セリア様と真琴ちゃんは、折り重なるように可愛く眠っている。
フフッ、無邪気なもんだ。
「これでセリアさまの病は治ったかな。あれ? ラムス、前かがみなんかになって、どこ行くの」
「う、うむ。オレ様のアレがおさまらなくなってたまらん。そこの泉で冷やしてくるから待ってろ」
ふーん。男の人のアレって冷やすとおさまるのかな?
あとで真琴ちゃんに教えてあげよう。
「ま、とにかく護衛騎士が到着する前に終わらせることは出来たし。急いでセリア様を離れの寝室に運んで……なにっ!?」
【気配察知スキル】を離れ正面入り口あたりに集中させていたから、気づくのが遅れた。
反対側の森林から視線、そして人の気配があったのだ。
そこに目を向けて見てみると、そこには……
「ゼイアード!」
木々の間に潜むようにあの狼獣人のゼイアードがこちらを覗いていた。
彼は私が声をあげると逃げ出すでもなく、不機嫌そうに頭をかいて出てきた。
私は反射的に、あられもない姿で抱き合って眠るふたりを体で隠した。
まったく意味のないことだけども。
「み、見た?」
「見たよ。お前、病の治療とか言って、こんな状態の殿下とヤリに来たのか? どんだけシゲキあるエロスに飢えてんだよ。ある意味感心するぜ」
「ち、違う! これは病の治療なんだよ! そうは見えなかったろうけど、本当にそうなんだ!」
「二千年の間、一子相伝で受け継がれてきた? ねえよ! そんな与太話、信じられるか!!」
うわああっ! たしかにそれは嘘だけどおおっ!!!
この物語、削除の危険と戦いながら、いやらしくないえっちシーンを書かないといけないんです。大変。




