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エンディングB 現代に生きよう!……と思ったけど

 「現代に戻るよ。私はやっぱり向こうの世界の人間だ。ここの世界も好きだけど、やっぱり現代でやりたい事があるからね」


 「そうか。じゃ、帰るか」


 というわけで、この場にみんなへのお別れの置手紙を残して、私は現代へと帰還したのだった。



 ◇ ◇ ◇


 現代に戻った私は学校に復学した。

 お兄ちゃんのせいで留年しなきゃなんないとか、何の因果で……いや、それを恨むのはやめよう。

 そのお陰でノエルやロミアちゃん、その他のみんなにも出会えたんだし。

 そして彼女らの住む世界を救えたことは、私のひそかな誇りだ。どうどうと下級生たちと勉強してやろうじゃないか! ……とか思ったんだけど。


 ある日学校が終わると、私は家には戻らずお兄ちゃんの住んでいるタワマンに直行した。


 「お、お、お兄ちゃん! い、いったいどういうこと⁉」


 「何だ、いったい何を聞いているのだ。最初から話せ」


 「今日、授業で体力測定があって、走ったり飛んだりの測定があったんだよ。そしたら百メートル走ったら六秒台、跳躍力は十メートル以上とかの記録を出しちゃったんだよ!」


 「ああ、スキルだな。向こうでいろいろスキルをつけただろう。今さら驚くことか?」


 「驚くよ! 向こうの世界で身につけたスキルとか、そのままなの?」


 「んん? 何でなくなると思ったんだ。オレがラムクエ広めて集めたリソースで出来たスキルだ。一生大事にしろ」


 「いや、体育測定で世界記録とか出してどうすんのよ! 体育連の人とか呼ぶって大騒ぎになっちゃったんだよ!」


 「好きに騒がせとけばいいだろう。お前が慌てることはない」


 「で、でもこのままじゃ、アスリート予備生の合宿とかに行かされて、スポーツ選手になっちゃうよ! どうしよう?」


 「将来のことをオレに相談するか? 好きにすればよかろう。やりたいならやれ。やりたくないなら断れ。向こうの世界でのことを思い出せ。いつだって自分で考えて行動しただろう」


 「それは……そうだけど。学校の先生とかより偉い人がすすめる進路とか断れそうにないなぁ。でも、やっぱりアスリートの世界でスキルはズルだ」


 「つまらん事を気にするやつだな。世の中には努力しようがしまいが、結果のみが求められる世界がある。お前の言ったあの世界はまさにそういう場所だったろう」


 「それは……スキル使わなきゃ生きられなかったし、世界の命運とかがかかっていたからしょうがないよ。アスリートの記録とかとは、ぜんぜん違う」


 『スキルだろう何だろうが結果がすべて!』という考え方もまちがっちゃいないだろうけどさ。

 記録を伸ばすために懸命に努力している人達の横で、スキルで軽く限界突破とかしてみせるのか?

 ……無理だ。どうしても罪悪感まみれになって、ぜんぜん楽しくない。


 「やっぱり私がアスリートになるってのはないな。明日、断るよ」


 「それがお前の考えなら、そうしろ」


 「けど、これからどうしよう。『現代に帰ってきたら勉強とかがんばって、ちゃんとした大人になろう』とか思っていたんだけどさ。こんな力を持ってたら普通に生きられそうもないよ」


お兄ちゃんは「ふむ」と言って何か考えるような顔をした後に言った。


 「だったら話してもいいか。じつは向こうの世界がマズいことになっているのだ。ザルバドネグザルをあの時点で放置したのは甘かったらしい」


 ふいに向こうの世界のヤバイやつの名を聞いて戦慄した。


「ザルバドネグザルがどうしたの? あの状態じゃ、自殺を繰り返す以外何も出来そうにないけど」


 「ああ、そうだ。今も自殺を繰り返しているんだが、そのうちにヤバい考えに至ってしまったらしい。全世界を道連れにして死のうとしているようなのだ」


 「ええっ! 大丈夫なの?」


 「大丈夫ではない。世界的な天変地異が連続して起こっているし、世界中の生物を死滅させるようなヤバい魔物の召喚もこころみてるようだ。今、手をうたなきゃヤバい。世界中が地獄だ」


 「ど、どうして言ってくれなかったのよ! そんなことになっているなんて!」


 「しかしなぁ。お前はもう学校に復学して、ここでの生活をはじめたんだろう。向こうのゴタゴタにまた巻き込むのもなぁ。もちろんオレも何とかしようと試みてはいる」


 「でも上手くいってないんでしょ? そんな顔してる」


 「まぁ、な。向こうの人間に力を貸すのにも限界がある。やはりお前が行ってくれるのが一番だが、どうする?」


 「……行くよ。そんなことを聞いたら放っておけない。【栄光の剣王】を復活させて世界を守るよ」


 向こうの世界の危機だというのに、妙に高揚している自分に驚く。

 やはり私は向こうの世界に行きたかったんだな。


 「んじゃ、さっそく行ってこい。ほら、メガデスだ。頼んだぞ」


 お兄ちゃんはメガデスと向こうの服や装備を出してきてくれた。

 なんだ、ちゃんと用意してくれてるじゃない。お兄ちゃんも結局は私を送ることになるって思ってたんだな。


 向こうの服に着替え、鎧なんかの装備を身に着けメガデスを握ると妙に気が引き締まる。

 また、みんなと戦うんだな。


 「しかし、復学したばかりだってのに、またまた行方不明になっちゃっていいのかな学校のこととか頼んでいい?」


 「ああ。こっちのことはオレが上手くやっておく。心配するな。んじゃ転移陣に立て。送るぞ」


 「うん。じゃ、行ってくるね」


 お兄ちゃんが展開した魔方陣で、私はまたまた異世界に行く。

 こうなってくると、もうこっちの世界でしか生きられないような気がするな。

 まぁいいか。剣王サクヤが必要だというなら、行ってやろうじゃないか。

 さよなら現代。大好きだったよ。



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― 新着の感想 ―
[一言] 実は戦いはまだまだ続くパターン。 ぴょっとして続編の伏線じゃないですよね。
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