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105話 決着と、そして選択

 本来、創造神というものは自分の創った世界に行くことは出来ない。

 あまりにその存在が世界に対し大きすぎるため、来てしまったらその世界が壊れるほどの衝撃が起こってしまうそうだ。


 だから創った世界を壊しかねない害悪が出現した場合、勇者なり使徒なり代理人をたてて力を与え、退治をまかせるのが普通だ。


 しかしお兄ちゃんは、あくまで自分の手で魔人王にケリをつけることにこだわった。

 私がこの世界に送られてきた本当の目的は、お兄ちゃんがこの世界に来られるよう、いろいろ工作する為であったのだ。


 途中その達成が困難になって、やっぱり私が魔人王を倒そうか、なんて話になったりもしたけど。

 どうにか七人の女の子に力を与えることができて、さらに奴の方から強力な結界が張られた。


 「執念が実ったね。まったく、お兄ちゃんの復讐につき合わされて、とんだ目にあったよ」


 本来は私がスキルで結界を作る予定だったんだけど、でもそれで創造神の存在に耐えられるかは不安があった。

 けど、さすが本職で超越者の作った結界は格が違う。これなら十分にいける。


 そして一面の銀色世界の中に大きな召喚陣が七つ。

 あれ一つ一つが、彼女らの愛なんだろうね。


 「ほほう、ずいぶんなモノを召喚したようじゃな。いったい何を呼び寄せた? 高殿に住まう神か、深淵に眠る暗黒の獣か。そのようなものを呼び出して、お主も無事なのか?」


 「そんな大したものじゃないよ。ただの小さい男さ」


 「なに……んん、何だあの男は?」


 やがて七つの召喚陣の中心に人影が一つ立つ。

 背が高くボサボサ頭で、普段着にもしているスーツ姿の男。

 お兄ちゃんだ。


 「よォ、サクヤ。ようやく、ここまで来たな。ありがとよ」


 「お兄ちゃん。世界をまたいで宿敵の前に立つんだから、ちょっとはそれらしい恰好したらどうなの」


 「奴のためにドレスアップしろってか。ごめんだね。それに、すぐ終わる」


 お兄ちゃんはぶっきらぼうにザルバドネグザルの前に立つ。

 そして奴は驚愕してお兄ちゃんを見ている。


 「あれほどの壮大な召喚陣を用いて、呼び寄せたのがただの人間ひとりだと? いったい何なのだ、その男は⁉」


 「覚えてないか? オレのこと。前にサクヤと一緒に、もう一人のお前を呼び寄せたこともあるんだがな」


 「なに? ……ほう、たしかにその記憶はある。たしかに異界に呼ばれた先に、お主を見た記憶があるな。すぐに送り返された記憶も」


 「あの時はまだ、お前を消すわけにはいかなかった。この時が来るまで、生きててもらわにゃならなかったからな」


 私もあの後、うっかりザルバドネグザルを倒さないように注意された。

 それはお兄ちゃん自身の手でケリをつけるため、という話だけじゃない。


 「なるほど、サクヤの背後に居る存在はお主のようじゃな。そして世界に起こった不可思議な現象の元凶も」


 「まあ、な。お前をこの手で倒すために、世界までいじくり回してしまったぜ。ようやくその時が来たってわけだ」


 「フム、ワシを恨む者か。多すぎて検討がつかぬがな。じゃが、装備の一つも纏ってないのはどういう訳じゃ? 見たところお主はただの人間。ワシと相対するに、それでは脆すぎやせんか?」


 「ためしてみろ」


 「よかろう」


 ザルバドネグザルは、老人から元の魔人の姿へと変化していく。

 四メートル程の人型の魔物となり、その手に極大の魔力を発生させる。

 だが……


 「動くな」


 ビックン


 「なにッ!!!」


 お兄ちゃんのただ一言に反応するように、魔人王ザルバドネグザルはその動きを止めた。


 「な、なんだコレは! ワシの意識が勝手に動くことを拒否している⁉」


 「神であることはやめても、オレはこの世界の創造主。いや正確には混じり合った二つの世界の一方を創った主だがな。だからオレの言葉は、この世界の絶対の命令となってしまうんだよ」


 そう、これこそがザルバドネグザルを倒すための計画。

 宿敵のザルバドネグザルを、お兄ちゃんの創造した方のザルバドネグザルと融合させ、その影響下に置くことこそが計画であったのだ。

 だからこそ、融合する前の奴を倒すわけにはいかなかったのだ。

 そう言えば、初対面の時にサクッと殺しそうになった事があったけ。

 思えばあれは危うかった。お兄ちゃんの遠大な計画が、いきなり水の泡になる所だったよ。


 「何かしまいのセリフでも言おうと思ったが、何も言うことはないな。オレにとって、お前はただのケジメだったみてぇだ。じゃあな」


 人類を滅ぼしかけた最凶最悪の魔人王ザルバドネグザル。

 それほどの存在が、ただの一言で終わった。


 「ザルバドネグザルよ、自害せよ!」


 「グアアアアアアッ」


 ザルバドネグザルは魔法の炎を吹き上げ、自らを焼いた。

 本当に一瞬で焼き尽くして、その魔力の高さがうかがえる。


 「終わった……あれ?」


 その煤が宙に舞い、みるみるうちに人型となり、元の魔人王となっていく。


 「甦った? あ、たしか、『この結界空間内じゃ自分は不死身』とか言っていたっけ。まさか煤になっても甦るとは思わなかった」


 今度は地面から無数の剣が生えてザルバドネグザルを貫いた。


 「ギャアアアアッ」


 それでも、また甦る。

 次は地面が割れ、そこに落ちたと同時に岩で潰される。


 「ゲブッ」


 また甦った。

 そんな事を繰り返し、奴は延々と死ぬことと復活を繰り返してゆく。


 「すごいな。本当に魔力が無尽蔵みたいだ。あんな奴、まともに相手をしてたら命がいくつあっても足りなかった」


 「そうだな。前世で対決した時は苦労させられた。さて、あんなものをいつまで見てても仕方がない。オレは帰るが。しかしサクヤ、お前はどうする?」


 「そうだね。私はみんなの所に戻るかな。魔人王との戦いにケリが着いたことを報告しなきゃなんないし」


 「そうではない、そうではなくてだな。お前の決断を聞いているのだ」


 「決断?」


 「お前の役目は終わった。もう、この世界のことは心配ない。現代に戻るか、この世界に残るか、どうするのか聞いているのだ」


 「あっ……」


 そうか、すべて終わったんだ。

 もうこの世界に居る理由もないんだし、帰らないと。

 ……いや、本当にそうか?

 この世界で出来た仲間との絆は、現代の誰とより深いものだ。

 なにしろ、大半が肉体関係を結んでできたものだし。

 いやしかし、いつまでも女同士でハーレムなんてやってていいのか、とも思う。

 みんなの将来を歪めてしまいそうだし。

 それに現代でもやりたい事はあるし、ここらで私は帰るべきなんだろうか。


 「どうした? 決められないのか。ならば……」


 「いや、決めたよ。私の選択は……」


 

 1. この世界に残る⇒エンディングAへ


 2. 現代に帰る⇒エンディングBへ


 3. 決められない⇒エンディングCへ

 



 最後はエロゲ風にマルチエンディングで。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんかあっさり過ぎる決着……まあ、今作の主題は、魔人王との戦いじゃなかったからね。 >マルチエンディング なかなか悩ましい選択ですね。現代とこの世界を行ったり来たりできるとかダメ?
[一言] みんな現世に移転したら?
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