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102話 魔物軍団の実力

 魔法と矢の飽和攻撃を城壁下の魔蜘蛛にたたきつけ、一方的な殲滅によって開始された魔物軍との戦い。この圧倒的な戦果にラムスはご満悦だ。


 「わははは、魔物の軍勢など何ほどのこともない! オレ様の手にかかれば、こんなものよ!!」


 「そりゃ、ここまでお膳立てされたら誰でも勝てるよ。国軍を編成して、要塞を改修する手はずを整えたセリア姫殿下の手腕のおかげだよ」


 「ふふっ、よろしいのですよ。ラムス様のためにがんばったのですもの。それより、まだ勝ってはいません。足の速い魔蜘蛛が先に到達していますが、この後にはもっと強い魔物も出現するはずです」


 「ふふん、いくらでも来い。この程度で終わってはオレ様もつまらんからな」


 「私もまだ気を抜いてはおりません。おそらくこの要塞を攻略するために、飛行する魔物が来るでしょう。ロミアちゃ……いや、リーレット領主様、危険ですので奥にお控えください」


 「でも、この中央指揮所まで魔物を来さないようには出来ているんでしょ?」


 「まぁ、そうだけど……」

 

 「だったら、ここで戦の成り行きを見ているよ。また私が煽ってあげなきゃいけない時があるかもしれないし」


 さすがに、大勢の兵士を奮い立たせた英雄領主様は勇敢だね。

 たしかにこの中央指揮所の守りはそうとう堅固だし、私たちも守りについているし。ここまで敵が来ることはないから、まぁいいか……


 「……え?」


 ふいに嫌な気配を感じた。

 気配察知スキルが発動している!


 「サクヤ様、どうしたの?」


 「殺気だよ。ヤバいくらいするどい殺気を感じるんだ。モミジ、空に異常はない?」


 モミジはドローンを四方に飛ばして空の警戒をとっている。

 彼女は周りの水晶モニターを一つ一つチェックした後言った。


 「何もないで。飛んでる魔物の影も見当たらん。ヤバい奴がるとしても、まだ遠くやないか? 慌てるのは早いで」


 気配察知スキルの誤作動?

 いや、そんなことは一度もなかった。何者かが、ここを狙っている。


 「これは仕留める瞬間の殺気だよ。すこし警戒させてもらうよ。アーシェラ、指揮所周囲に防壁を張って」


 「了解。【聖騎士の盾パラディン・シールド】」


 アーシェラは構えた盾より光の防御結界を出し、指揮所周囲に張った。

 皆は私を怪訝な顔で見るが、この気配察知スキルには何度も助けられてきたし、間違ったことは一度もない。杞憂だったとしても、私はこのスキルを信じる。



 ―――ビカァァッ


 突如、まばゆい光が指揮所をおそった。


 「うおおおおッ」「きゃああッ」「これはッ⁉」


 ドガガガガガアアアアッ


 アーシェラの張った防壁結界が激しく振動し、弾かれた魔力が外周の物を破壊した。


 「これは……魔法光? でも、いったいどこから?」


 魔法の怪光線が発射されたと思わしき正面には、敵影ようなものは何も見えない。突然の見えない襲撃に周囲は大混乱。


 「魔法狙撃だ! 狙いはここ中央指揮所! 魔法師は障壁を張れ!」


 ラムスは声を張り上げ統率。指揮所が無事なことで致命的な混乱は起きなかったが、それでも敵の姿の見えない攻撃に皆動揺している。


 ビカアァァァァァッ


 「うわっ、また来た!」


 ドガアアアアアッ


 今度は魔法障壁をあらかじめ張っておいたので、さほどの被害はない。

 それでもこれだけの攻撃が連続して起きたことは、戦慄すべき事態だ。


 「さっきので方向を特定できたで。どうやら正面のララチア山からみたいや。行くで」


 すぐさまモミジはそこへドローンを飛ばす。


 「あんなに遠くから……いったいどんな魔物が? いえ、もしかすると魔人王自身の可能性もあります」


 「セリア姫殿下、身を低くしてください。また来ました!」


 ビカアアアアッ


 「くっ、間隔が短い!」


 怪光線は三たび光り、また魔法障壁を揺らす。こいつの魔力は底なしか?


 「い、いけません! 攻撃がおろそかになったため、魔蜘蛛が城壁を上ってきました!」


 その報告に、いまさっきまで戦っていた相手を思い出す。

 ラムスは声を張り上げる。


 「弓兵は魔蜘蛛を攻撃してろ! 魔法師組は障壁を張るのを集中!」


 しかしまたしても、皆を震え上がらせる事態をモミジが告げる。

 どうやら、ここで一気にたたみかける予定のようだ。


 「山の方の空から新手の魔物が来たで! あれは飛行竜ワイバーンと……ヒッ! あ、あれは悪魔! 特徴から、多分レッサーデーモンや!」


 「な、何だとおぉぉっ!? 魔界の中級悪魔が地上に出たというのか!!」


 間断ない怪光線の攻撃。

 魔蜘蛛の地上よりの侵攻。

 そして新手の魔物軍の本隊と思しきレッサーデーモンと飛竜ワイバーン

 これが魔人王の本気。

 これほどまでに強固に固めた要塞が陥落寸前だ。

 セリア王女様は私の正面に立って聞いてきた。


 「この状況をどうにかするのは、人間では不可能ですね。サクヤさま、【栄光の剣王】なら何とかできますでしょうか?」


 「ユクハちゃんの召喚術なら、レッサーデーモンに対抗できる召喚獣を呼べると思います。でも問題は怪光線ですね。こうも連続して撃たれたんじゃ、アーシェラも魔法師のみなさんも持ちません」


 怪光線はよほど強力らしく、それを受け止めているアーシェラも魔法師のみなさんも顔色が悪い。

 一発を受けるたびに魔法師の誰かは魔力切れで倒れ、運ばれていく。


 「そうですね。遠くない時間に限界は来るでしょう。覚悟を決める時でしょうか?」


 この『覚悟』とは、要塞兵全員が決死兵となって敵を減らす方針をとることだ。

 お姫様なのにこんな覚悟が出来るあたり、さすがだね。


 「覚悟はまだ早いです。策はあります。人をやって、避難部屋からある人物を呼んでください。その者こそが反撃の糸口となるはずです」


 「避難部屋? あそこに居るのは生活雑用を担う非戦闘員のみのはずですが。いったい誰をお呼びすればよろしいのでしょう?」


 「それは……」



 ◇ ◇ ◇


 「お久しぶりですセリア姫殿下。またの対面、じつに光栄です」


 「ええ。その顔、懐かしくありますね。あなたもこの要塞に来ていらしたのですね。……ですが、その衣装。もう少し何とかならないものですかしら?」


 引きつった笑顔のセリア王女様の前で拝謁する、煽情的な衣装の艶やかな女性。

 それはシャラーン。

 セリア王女様の目が険しいのは、因縁ある彼女にまた会ったせいか、こんな場所でこんなえっちな格好を見たせいか。


 「あら? 『できる限りに男性を喜ばせる恰好で来い』と、伝えの者からお聞きしましたが?」


 「ええ、そうでしたね。サクヤ様、この要望には意味があるのでしょうか?」


 「まぁ、男性が喜べば喜ぶほど効果は高いと思いましてね……これで良し」


 スマホを操作し準備を終えた。

 彼女の職業は言うまでもなく【踊り子】。

 そして彼女の【踊り】スキルを上げていくと、やはり出てきた。

 【活性のダンス】【復活のダンス】【回復のダンス】。

 これらをまとめてシャラーンに与えて準備完了だ。


 「よし、シャラーン。あそこで死にかけている魔法師のみなさんの前で踊ってきて! 君のダンスで元気にするんだ!」


 「ふふっ、面白いわね。戦場でダンスといきますか」


 シャラーンは意気揚々と行く。

 しかしセリア王女様は冷たい目。


 「サクヤ様、策というのはこれでしょうか? あの恰好の女性を踊らせて、殿方を元気にさせることが?」


 「い、いやそんな目で見ないで! 本当に効果あるんだって!!」


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 踊り子シャラーンのスキルとしては納得だけど……。 本当に効果あっても、冷たい目で見られる事確実な策ですね。 この戦いはまだ前哨戦に過ぎないでしょう。まだ先は長いかな。
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