91 作業部屋
「じゃあ開けるっすよ。 よいしょっと、あ、一応ドアは二重になってるっすよ。 まぁ、よくあるパターンのやつっすね」
普通のドアとは違い、頑丈そうなドアを開けるともう一度ドアが。
ちょっと期待したあとだったので、そうじゃなくても、何だか焦らされているように思える。
あと、私、別にそういう部屋とか詳しくないから、よくあるパターンとか知らないですが‥‥。
「でも、こういうドアとドアの間で殺菌したりする何かがあったりするわよね」
「まぁそれも一応しとくっすか」
あるのかよ!
それとそれするなら、やっぱりお風呂入る必要なかったんじゃ‥‥。
そして数分後、たぶん人生において一番と言っていいほど清潔になったであろう体で私達は作業部屋に足を踏み入れた。
「ふぅ、ようやくだね。 ここまで苦労したから何だか余計に期待しちゃうよ」
「まぁここまでしていただいてあれなんですが‥‥」
「ん?」
「特に面白いものなんてないっすよ?」
ないの!?
いや別にそんな面白いものとかじゃなくても蕾さんが作ったものを見てみたいだけだし構わないんだけどね。
◇◆◇◆◇◆
「ここに私以外が入るのは初めてっすよ。 聞きたいものとかがあったら言ってほしいっす」
聞きたいことかぁ。
じゃあお言葉に甘えて一つ‥‥。
「広すぎない!?」
いや、リビングより広いとはさすがに想定してなかったというかなんというか。
まさかあそこより大きな部屋があったとは。
「まぁ、こういうところが欲しかったから、独り暮らしを始めたっていうことも、一つの理由っすね。 特に音とかも気にしなくてよくなったっすから」
「へぇ」
音って‥‥そんな近所迷惑になるほど大きな音って女の子が生活して出るものなのか、いやたぶん蕾さんだけだね。
「色々、あるけど、どれも使い道がわからないものばかりね。 蕾さん、これ何?」
「あぁ、それはっすね───」
なんだかここまでくると、蕾さんが未来の何とかロボットみたいに見えてくるんだが。
「───って感じっすよ。 ん? 奈留ちゃんなんかあったっすか?」
いつの間にか凝視していたようだ。
「え、いやいや別に何でもないよ! それより、最近、蕾さんが作ったものってなんなの?」
「最近っすか? ついこの間は頼まれて、出来るだけバッテリーがもって、最小のカメラと盗聴機を作ってって言われて、一応出来るだけ頑張って作ったっすけど?」
それ大丈夫だよね!? 犯罪に加担してるとかじゃないよね!
「それ、大丈夫なの? その‥‥危険な感じとか‥‥」
「あぁ、それは大丈夫っすよ。 依頼してきたの母っすから」
え? お母さん?
「でもなんのために?」
「父の浮気を暴いてやるとか何とか‥‥まぁいつものことっすよ」
何それ怖い! ある意味犯罪より怖い!
蕾さんもそれでいいのか!?
「いやいや、バレちゃったら離婚とか‥‥」
「いえ、今回は父は潔白ですし、問題ないっす。 母もたぶん使わないと思うっすよ」
あ、そういうところは一応考えて渡してるんだね‥‥え? 何で潔白って知ってるの?
「でもそうやって話したりするってことは仲はいいのね」
「あはは、昔は悪かったっすけどね。 今は結構親バカっすよ」
何かきっかけでもあったのかな。
まぁ家族仲が良いっていうのはいいことだよね。




