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68 自分の力で

初めは磨北くん視点です。

 きさねぇに、無理矢理連れてこられ、夕闇ゆうやみさんの家に来たわけだが、先程から理解が追い付かないことが起こっている。

 きさねぇが、夕闇ゆうやみくんと仲が良いのは、まだ許容範囲内だったのだが、まさか、し‥下の名前で呼びあってるなんて!


 す、少し羨ましいなぁとは思わなくもないかな。

 前世でそう呼んでみたかったっていうのはあるし。


 それに声も同じだから、私を呼んでないのに動揺がすごい!

 きさねぇ少しは夕闇ゆうやみくんのこと話しておいてくれたらよかったのに。

 はぁ、もう帰らせてほしいなぁ。


 すると、横から夕闇ゆうやみさんが話しかけてきた。




 ◇◆◇◆◇◆




「兄さんと祈実きさねさんが、こんなに仲良いって知ってた?」


「ううん、僕も驚いてる」


 磨北まきたくんも知らなかったんだ。

 今世の祈実きさねさんはなんでも話してくれそうなイメージがあるけど。

 イメージで言えば、うちの兄さんは友達だと思ってなかったから話さなかったって言いそうなイメージ。

 うん、それだね。


「まぁ、祈実きさねさんって誰とでも仲良くなれそうだもんね」


「誰とでもって訳でもないと思うけどね。 そういうところはあったかもしれないね」


 やっぱりすごいなぁ。

 ていうか、兄さん達、全然リビング入ってこないな。


「廊下で何してるんだろう? ちょっと見てくるね」


「うん」


 廊下に出てみると、兄さん達が何やら言い争っていた。


奈留なるちゃんを私の妹にしたい!」


「ふざけるな、奈留なるは俺の妹だ!」


 なに言ってるんですか!

 あと話の流れでどうやって、そういう話になったんですか!


「くっ、奈留なるちゃんを妹にするまで、私は諦めない!」


 あれー祈実きさねさん? 今日は磨北まきたくんと仲良くなるため協力してくれるんじゃ‥‥。

 なんか私利私欲のために動いてらっしゃるんだけど!?


「‥‥ちょっと祈実きさねさん、なんでそんな話になってるんですか!」


 小声で祈実きさねさんに聞く。


「‥‥考えてみれば、奈留なるちゃんを妹にしちゃえば、結果(しん)くんとも兄弟となり、必然的に、しんくんと仲良くなるという算段だよ。 間違ってないよね?」


「いやそれ色々間違えてますから! かなり違う方向ですから!」


 それ無理ありすぎですからね。

 そりゃ兄さんも争っちゃいますよ。


「いいと思ったんだけどなぁ」


「そもそも祈実きさねさんがそこまでして協力してくれなくてもいいんですよ? ここまできたら私が自分自身でやるべきことですから。 一緒に来ていただいただけで私は十分感謝してますし」


 祈実きさねさんに頼りすぎても、申し訳ないですしね。


「そう言われちゃうとお姉さん何も言えないくなっちゃうよ~。 でもそうだよね。頑張ってね奈留なるちゃん!」


「ありがとうごさいます、祈実きさねさん」


 祈実きさねさんの好意を断ったんだもん。

 磨北まきたくんと絶対に友達になる。


「じゃありくくん。 私たちは邪魔だからちょっと二階に上がろうよ。 ちょっと探検もかねて見てみたいし!」


「いや、却下だ。 奈留なると離れるなんて俺にはできない!」


 いや、学校とかですごい離れてるでしょ。


「‥‥後で奈留なるちゃんに、何でも好きなことさせてくれるようにお願いしてみるから」


「よし、奈留なる。 俺は少し二階にいるから」


 心変わり早!?

 それ以前に祈実きさねさん、いくらなんでもそれは‥‥。

 でも折角チャンスをくれたんだもん頑張らないと。


 階段を上っていく直前に祈実きさねさんは私の方を見て、ウインクをした。

 頑張れってことでいいのかな。

 そして、私はリビングに戻る。


「ごめんね。 磨北まきたくん、祈実きさねさんが二階の部屋行くらしくて。 まぁ私たちの部屋があるだけで特に何もないんだけどね」


夕闇ゆうやみくんの部屋‥‥!?」


 あれ? すごい顔が赤くなった。

 それに磨北まきたくんって兄さんのこと、くんで呼んでたっけ?


「あれ、磨北まきたくんも行きたかった?」


「いや、大丈夫。 じゃあ少し待っていようか」


 う~ん、ここまでは大丈夫だと思うけど、ここからどうしようかな‥‥。

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