63 デートの結末
磨北くんと遊んだ後、私は気分よく家に帰ってきた。
電気もついていたので、もう兄さんも帰ってきているようだ。
扉の音で気づいたのか、兄さんが、リビングから玄関に出てきた。
「兄さん、ただいま」
「お帰り、奈留。 遅かったから心配したぞ」
そういう兄さんはもう少し遅くてもよかったと思うけど?
まぁここは謝っておこうかな。
「あはは、ごめんね」
靴を脱ぎ、リビングに入ると、本日二度目の広葉が。
「お帰り~奈留ちゃん」
はぁ、広葉、今日ぐらいは、いないんじゃないかと思ってたのに。
そもそも尾行諦めて帰ったんじゃなかったのか。
「森田さん‥‥今日はもういいですよ。 帰っていただいて」
「なにその、何にも出来ないバイトが邪魔だから早く帰らせよう、みたいな顔は!?」
すごい、大体合ってる!
あれ? 顔に出てたかな?
「まぁ、完全に邪魔物だからな」
「ひどくね、陸!?」
あれ? なんかいつもより兄さんが、広葉に対して刺々しいというかなんというか。
いや、ほぼ誤差なんだけど。
「兄さん何かあったの?」
まさか、私が尾行を諦めた後に小乃羽ちゃんと何かあったのだろうか?
それならとてもまずい! 今からでも私から小乃羽ちゃんに謝らないと!
「いやな、こいつ尾行してたんだけど」
うん、知ってる。
けどそれは私達もしてたわけだし。
「それで?」
「バレないならいいんだけど、福林さんにバレちゃってさ」
はい、アウトー!
何だろう、本当に間が悪いというか、空気が読めないというか。
「森田さん、なんてことしてくれたんですか!」
「いや~、一度見失ったんだけど、また見つけたのが嬉しくなっちゃって。 そもそもなんで声かけちゃいけないんだと言う気持ちになって」
「「デート中だからだよ!」」
何を意味がわからないことを言ってるんだこいつは。
「それぐらい動揺してたって言うか何というか‥‥。 だから、大声で名前呼んで、助けをもとめたんだよね♪」
チラッとバレるじゃなくて、ガッツリバレてるじゃないですか!
自分の存在を大々的にアピールしてるじゃないですか!
「映画行ってその直後だったから、そのあと福林さん気を使っちゃって、そのまま今日は終わっちゃったんだよ」
なん‥‥だと!?
じゃあ私達が見たところがほとんどデートの全貌と言うことですか!
帰った後のデート話楽しみにしてたのに~!
「もう、森田さん!」
もう、こんなことなら私も尾行続けておくべきだった。
「それぐらい動揺してたんだよ。 ていうか、奈留ちゃん隣にいた男誰さ!」
誰って結構話してると思うけど。
「え、クラスメイトですよ? 前に話したじゃないですか転校生の」
「いつの間にそんな関係になったの!」
いつの間にって、今の一定の関係は転校初日だよね?
「出会ったときから?」
「運命の出会、ブハァ!」
広葉がなんか急にぶっ倒れた!?
大丈夫か?
「広葉」
「陸‥‥」
広葉は倒れた状態で顔だけ兄さんの方に向けた。
「わかっている。 その件は俺も全力で阻止しようと思う」
その件ってなんだよ。
たまに二人の会話でよくわからないときがあるんだよねぇ。
「陸!」
広葉はさっきまでとは違い、満面の笑みを浮かべた。
「今はその事よりもお前の問題だ。 まぁなんだ‥‥今日のことの反省して存分に俺に殴られろ♪」
「陸────!?」
あ、やっぱり結末は、いつもと変わらないんですね。




