169 何で、そういうことになったの!?
クラスの必要事項の確認が済み、私は由南ちゃんに少し用事と言ってから、教室を出て、詩唖先生と誰もいないところで話をしていた。
「もう、本当に何であんないきなり、性格を戻そうとなんてしたの! 徐々にやっていくって言う話はどうなったの!」
「一気に変わった方が、そのまま押し通せるんじゃないかと」
そうね、そういう考えも出来るね。
だけどね‥‥広葉が思っている以上に、違和感が凄かったんだよね。
本当の詩唖先生を知っているはずの私ですら、違和感があった。
多分、演技ということも関係しているのかもしれないが。
「もう少し、暴力がなかったら、多分行けたと思うんだけどね」
「ちゃんと手加減も、してるんだがな」
いや、暴力が駄目だからね!
当たり前みたいに言ってるけども。
若干数名は殴られたいみたいだけど‥‥。
ま、まぁ、それは今は置いておこう。
「手加減とかの問題じゃないからね」
「まぁ、次から気を付けるよ。 徐々にな。 わかってる」
前もそんな感じで返事してたような気がする。
「もう、その言い方、絶対わかってないよ‥‥」
というか、もう何だろう、結局、広葉の演技にも限界があるし、いつかこうなるなら、もうもどってもらった方がいいような気がするのは私だけだろうか。
元々、他の先生との人間関係が、体を変わっている理由な訳だし。
いや、でも広葉が悪化させたものが大量にありすぎるよね‥‥。
本物の詩唖先生のためにもここはまだなにも言わないでおこう。
◇◆◇◆◇◆
「お帰り、奈留」
家に帰ると、兄さんがリビングでくつろぎながら、テレビを見ていた。
「ただいま~兄さん」
手洗いを済まし、私も兄さんの横に座り、テレビを見ると、丁度温泉宿のことをリポートしていた。
次の月の一日からオープンするらしい。
雰囲気もあるし、綺麗だし、私達もこんなところだったらいいのになぁ。
「いいな、ここの温泉」
「うん、ここだったらいいのにね」
まぁ、私達が行くのは今月だから、まだテレビでやっている温泉宿はオープンしてないけど。
でも、私達が行く宿って、まだ広葉、教えてくれないんだよなぁ。
「広葉が教えないってことは、多分ボロい宿だったんじゃね?」
あぁ、期待させてボロかったから言いづらいってこと?
「ま、まぁ今月中とはいえ、十人も泊まれて、部屋も最大で八部屋とれて、十人が全員、同日じゃなくてもいいっていうんだから、こんな綺麗なところに泊まれないのはわかってるけどさ」
そんな融通のきく、温泉宿が凄く良い温泉宿じゃないような気がする‥‥。
宿の人には失礼だけど‥‥。
「でも、同じチケットなのに、日にちをずらせるって、向こうの人にとっては面倒だろうけど、俺達にとったら嬉しいよな。 つまりは俺と奈留が二人で泊まって、そのあと八人が一日後から泊まれたりすることができるってことだもんな」
「まぁ、その例えは正しいんだけど‥‥‥‥」
例えだからいいんだけど、何で私達だけで一日早く行くっていう発想が出てきちゃうかな。
そしたら一日早く帰ることになるので、皆と一緒に帰れないじゃないか。
「うん、チケットの力を最大限活かすため、そういう宿泊日にするか」
「駄目だから! そもそも森田さんが当てたチケットだからね! それにきっと皆で行った方が楽しいよ♪」
あと何ですか、チケットの力って! 別に活かす必要はないですよ!
折角皆でワイワイできるんだから、ちゃんと皆で行きましょうよ。
「まぁ、俺は奈留がいれば何処でも楽しいがな」
「もぅ‥‥兄さんは。 う、嬉しいけど」
私達は、その後、宿の予想をしながら、リビングでゆっくりして過ごした。




