15 お昼ご飯
「じゃあ一回帰ろっか」
え? お昼食べるんじゃないの?
「ご飯は食べないの?」
「食べるよ。 家で」
は?
「いやいや、ここのフードコートで食べればいいじゃん!」
何故そんな、行って帰って、また行くということをしないといけないのか。
面倒すぎる!
「家に帰れば美味しいご飯が食べられるというのに何故こんなところで食べないといけないんだ!」
「ワガママか! ここの店にも失礼だし、買い物行こうって言ったの兄さんだよ!?」
「買い物に行こうとは言ったが、飯をここで食べるとは言ってない!」
‥‥何なんだこの兄。
ご飯を美味しいと言ってくれるとは嬉しい‥‥けど、フードコートのご飯も美味しいんだから、それでいいと思うのだが。
「そういう屁理屈は、いらないよ‥‥」
「ここで食べる理由がない」
いや時間短縮になるだろが!
逆に帰る理由がないよ。
「私が食べたいって理由じゃ‥‥ダメかな?」
「よし、なに食べる?」
変わり身早!?
何が兄の心を動かしたんだよ!
「最近食べてないものとかがいいよね」
「最近食べてないもの‥‥らっきょうかな?」
「いや他にも食べてないものあるから! 何でそこでらっきょう!? フードコートにないよ!」
そういえば、昔は食べてたけど今食べてないなぁ。
いやいや今はいいんだよ!
「じゃあまぁその辺のファーストフードでいいんじゃない?」
「何で急に投げやりになるのさ。 じゃあ行こっか」
こうして私達はフードコートに向かった。
◆◇◆◇◆◇
「いつも思うがファーストフードの店員は皆大変そうだな」
兄が店員の方を見ながら、私に言う。
「まぁそうだね。 短時間で料理を作るんだから」
バイトしたことは前世でもないが、話を聞いてると大変なんだろうなぁとは思う。
さばいても、さばいても客がくるんだから、そりゃ笑顔も出来ないよね。
そういえば前世で、広葉はバイトしてたのに、今世ではしてないな‥‥。
前世では、何か欲しいものがあったのかな?
「だから俺は一つでも作る料理を少なくするために、家で食べようと‥‥」
「まだ言ってたのそれ? 取って付けたような理由はいいから早く決めなよ」
「いや何にしようか、まだ決めかねてて」
「私先に、食べてるからね」
ちなみに私はすでに、ハンバーガーを注文していて、兄を待ってる状態だ。
「待って、すぐ決めるから!」
結局、迷った末に私と同じものにしたようだ。
◆◇◆◇◆◇
「よし、食べたことだし、ショッピングを再開しますか!」
食べてすぐだというのに、この兄はどれだけ服探しが好きなんだ。
はしゃぎ過ぎだろ。
この前の落ち着いた兄さんを返して欲しい所だ。
「兄さん、もう少し休憩してからにしようよ」
「う~ん。 まぁ奈留がそういうなら仕方がない」
「うん」
ふぅ。 服探しは嬉しいのだが、どうせこの後もぶっ通しで、服を見るだろうし、今のうちに落ち着いておきたい。
「奈留、ちょっとお手洗い行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
兄がトイレに行き、一人になった私は、残ったドリンクを飲みながら、兄を待っていた。
「あれ? 夕闇さん?」
あれ? 今、誰かに呼ばれたな‥‥。




