112 本を読んでいると
『ねぇ、夕闇くん。 今日も本の話をしましょうよ。 何がいいですか?』
あれ‥‥ここは‥‥高校の図書室?
机を挟んで椅子に座っているのは祈実さんと‥‥前世の私?
なんで、私が前世の私を隣で見ることができてるの‥‥。
あれ‥‥私、透けてる。
二人には私は見えてないみたいだし、何だか私、幽霊になったみたいに思えるな。
それで、今は何なんだろう。
昔のことが映像みたいに見えているってことなのかな?
『なんでもいいよ』
うわぁ、私まだこのとき、祈実さんのこと好きになってないのか‥‥。
祈実さんへの態度が雑だな。
『あはは‥‥なんでもいいが一番困るんですけどね。 じゃあ私が最近読んでみていいなぁと思った本のことにしましょうか』
こんな話してたっけ?
聞いているはずなのだが、たぶん頭に入っていない。
本当になんで真剣に聞かないんだって、この座ってる私に言いたいぐらいだ。
好きになった後はちゃんと聞いてたんだけどなぁ。
でも、その辺りになってくると、祈実さんが私が面白かった本を聞いてくるっていう方が多かったけど。
『うん』
『えっと、その本の題名はですね───』
◇◆◇◆◇◆
「死と夢の楽園‥‥」
ベッドから起き上がった私はそう呟いた。
‥‥夢か。
さっきのは夢だったけどあれは昔のこと‥‥だよね。
祈実さんから勧められたから知っていたのか。
じゃあこの違和感は一体‥‥。
あのあと祈実さんとどんな話をしたのかな‥‥。
‥‥思い出せない。
はぁ、私こういうところが駄目すぎるな。
「‥‥朝食作ろう」
私はベッドから立ち上がり、キッチンに向かった。
◇◆◇◆◇◆
朝のすることをほとんど終わらせた私は、昨日の途中から本を読む。
でも正直、祈実さんがこの本の内容が好きだなんて驚きだ。
祈実さんが好きな本の種類は明るい感じの読むと楽しくなるような本だと思っていたから。
実際、紹介されたほとんどはそんな話の本だったし。
まぁ今はいいか、読もう。
後半の話は夢の話が多くなっていっていた。
怪しげな人物と出会ったその夜、妹は初めて死後の世界にいくことが出来ていた。
だが、やはり一度目では兄を見つけることは出来なかった。
しかし、あの怪しげな人物の言っていたことが本当だと知った妹は、そのあと二回、三回と死後の世界に行くことになった。
対価を払って。
『普通ならあの世界を見ちゃったら、やめようと思うはずなんだけど、そんな世界に死ぬかもしれない対価を払うんだから。 あの子は凄いなぁ』
と、怪しい人物でさえ、ここまでだとは思っていなかったような物言いをしている。
本心はどうだかわからないが。
そして、その後、妹は死後の世界でようやく兄の手がかりを見つけた。
◇◆◇◆◇◆
「奈留~腹減った~」
ん? 兄さん、どうしたの‥‥ってもうお昼過ぎてる!?
昨日もだけど、時間忘れちゃうな、この本。
「ごめん、兄さん! 今からお昼作るよ!」
「おう、頼む~」
本を読むと、時間もだけど空腹も忘れちゃうよね。
今回は私のミスなので何も言いませんが、兄さん別にお腹すいているなら、自分で作ってくれていいんですよ?




