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11 誘拐犯

 夜の街に、冷たい風が吹いていた。

 昼間の祭りの賑わいはもう跡形もない。静かな通りに、ラグとリナ、それにノワールがいた。

 帰宅するつもりだったが結局、ラグたちもそのあたりを見回っていた。


「見つからなかったね」

 リナがぽつりと言った。


「警備団も動いているのにな」

 ラグは空を見上げた。街には人が多い。ラグの感覚を鈍らせるものが多いのだ。

 星がまたたいている。

 夜空の光は目立つが、闇の広さと比べればほんのわずかなものだ。


「師匠、どう思いますか」

 ラグが小声で問う。

 ノワールは、尻尾を揺らしながら前を歩いていたが、ふと振り返り、ラグの肩に乗った。


「なにか聞こえるかにゃ?」

 ラグは聴覚に集中した。

 日中は音が多い。だがいまなら。


 路地の奥、人が動いている。

 荷物を運んでいる。こんな時間に。

 荷物、いや荷台にいるのは人か。声を発している。


「誰かがなにかを運んでいる。それは人間かもしれない」

 リナが振り返った。


 ラグはさっさっ、と歩きだす。

 ラグの早足に、リナは必死で走ってついていった。


 足音の流れから歩いていく道順を推理する。

 警備団の詰め所に近い。

 ラグはますます速度を上げていく。リナは本気で走っていた。


 角を曲がると細い路地の先、荷車を引く影がいた。彼らは足を止める。

「ミソン君!」

 リナが叫んだ。

 荷車から、くぐもった声が上がった。


 ラグは止まらない。迷いなく、速歩きで接近していく。

 フードつきのローブは黒い。


「ラグ!」

「退け」

 低い声でフードのリーダー格が言った。

 ラグは止まらない。

 次の瞬間、その男たちはいっせいに手を動かした。


 銀色の光が握られる。


 ノワールがラグの肩から降りて、リナの足元に向かった。


 ローブ姿は四人。


 ただ単に近づいていったラグに、一人目が軽やかに接近して腹にナイフを突き出す。ぎりぎりまで軌道がわからないように溜めて、きらめきが曲がりながら接近してくる。

 ラグはかまわず腹で受けて掌底で男のあごを打った。

 意識を刈り取られた男が倒れる。


「ラグ!」

 リナの声。

 ナイフが落ちる。血はついていない。


 二人目。

 短剣を抜いた男が突っ込んでくる。

 ラグの直前で細かくステップして背後にまわろうとするが、ラグは通り過ぎようとする男の腹を殴り、そのままふっとばした。

 宙を舞った男が三人目に飛んでいく。


 三人目、飛んできた二人目と重なってラグの視界から消え、一瞬あと、ラグの背後に迫っていた。

 ラグは当然のように素早く振り返って三人目のあごも打って倒す。


 そのときラグの腕に太い針が刺さった。

 四人目のリーダー格が構えていたのは、吹き矢だ。

 ラグは堂々と歩み寄り、うろたえている四人目をつかんで地面に倒した。

「ふふ、血清がなければ、命はないぞ……」

 男は苦痛に顔をゆがめながらも、笑おうとする。


「慣れている」

 ラグの言葉に、男は困惑した。


 ラグは荷台にあったロープを取り、男たちをテキパキと縛り上げていく。


「ミソン君!」

 荷台の、大きな布にくるまれていたものをリナが開いた。さるぐつわをかまされ、恐怖に怯えた少年がリナを見た。


 リナはさっき落ちたナイフを拾った。先端がわずかに折れているだけだ。

 ロープを切り、少年を開放した。

「もう、だいじょうぶだよ!」

 少年はリナにしがみついた。振り落とされまいとするほどの力だった。リナが背中をさする。


 ラグは空いた荷車に、男たちを乱暴に乗せていった。


「ラグ! 刺されなかった!?」

 リナが言う。

「問題ない」

 腹筋を瞬間的に硬化し、刃は皮をやや切っただけだ。


「コツがある。今度教えようか?」

「え!? あ!? だいじょうぶ、そんなの必要ないから、あ、でも必要ある!?」

 リナはあたふたしながら言った。


「師匠」

 ラグがノワールを見る。

「首飾りをつけてるにゃ」

 ノワールが、目を細めた。

「首飾り?」

 近くの男の首に、銀色の細い鎖が見えた。

 引き出してみると首飾りがある。開いた手のひらの模様だろうか。


「……あの、これから、どうする?」

 リナが不安げに言う。


「まず警備団にこいつらを運び、事情を説明する。悪いが、家に帰るのはそれからでいいか?」

 ラグが言うと、少年は、口を結んでうなずいた。

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