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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

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殿下と僕とコルネ嬢

「殿下!」


 こんなふうに血の気が引く思いになるのは、もう何度目か。バクバクと大きく鼓動する心臓と共に、応接室を飛び出し、レグルス王太子殿下の元へと向かう。


 まさかの宮殿内での暗殺未遂事件。


 敵は警備兵を装った暗殺者組織(ギルド)のギヌウスだった。五年前から警備兵として潜入し、周囲の信頼を得ていた。そして今日、レグルス王太子殿下に(やいば)を向けたのだ。


 大勢の警備兵、護衛騎士の命が失われた。


 当然だ。ギヌウスは大陸で一番有名な暗殺組織であり、こういった話題とは無縁の貴族令嬢でさえ、その名を知っている。各国で暗躍し、ターゲットの致死率は九割と言われていた。


(ソードマスターの腕前を持つレグルス王太子殿下も、ギヌウスを一人で五人、相手するのは骨が折れたはず。怪我の度合いは……どれぐらいなんだ!?)


 レグルス王太子殿下は、一人でギヌウスを殲滅している。しかしその後、医務室へ自らが向かったわけではないという。現場に居合わせた侍女が助けを呼びに行き、今は現場で応急処置を受けているというが――。


「スコット筆頭補佐官!」


 伝令の兵士と廊下で遭遇。


「殿下は!?」

「現場で応急処置を受け、すぐに医務室へ運ばれました。現在、縫合が行われています」

「! 傷は、傷は深いのか!?」

「いえ、臓器に至るような刺し傷はなく、全て切り傷。腱にダメージを受けるような怪我もないそうです。ただ、複数箇所を切られたようで……」


(くそっ、ギヌウスめ!)


 ギヌウスは、ここという拠点を持たない。遊牧民みたいな組織なので、本拠地を攻め、叩き潰すこともできなかった。


「殿下は意識があるのだろうな?」

「はい。意識はハッキリしており、スコット筆頭補佐官への言付けも受けています」

「殿下は何と!?」

「あの場に居合わせた侍女を見つけ、自分の所へ連れてくるように、とのことです」

「何……?」


 伝令の言葉に、僕は驚くことになる。


 レグルス王太子殿下は度重なる暗殺の危機を乗り越えることで、そう簡単に人を信用しなくなった。初対面となる相手のことは徹底的に調べるように命じるし、相手の弱点をしっかり把握した上で対峙する。場合によっては殿下が直接会わず、間に僕をワンクッションで置くことも多い。僕自身がまず当人と会い、「問題なし」と判断し、ようやく殿下と対面となる……というケースが、実際とても多かった。


(それなのに「自分の所へ連れてくるように」だと?)


 現在、処置を受けているレグルス王太子殿下は、この後、自身の寝室へ移動することになる。つまり寝室へ、その侍女を連れて来いと言っているのだ。


(驚いた。レグルス王太子殿下の寝室に、本人在室中に入室できる者は限られている。特に女性は、清掃のため、殿下が不在時にメイドが入室するぐらいだ。王妃殿下や王女たちをのぞき、在室中に女性が殿下の寝室へ入るのは……その侍女が間違いなく初めてとなる)


 高貴な身分の者の寝室とは、それだけ特別なものだった。


(なぜ、レグルス王太子殿下はその侍女にそこまでの関心を……?)


 さすがに処置を受けているレグルス王太子殿下に、その理由を教えてもらうことはできない。そこで現場を見て、様々な人物に話を聞いた。そしてまず、その侍女の名前などを確認。次に彼女が殿下の暗殺未遂現場でどんな行動をしたのかを理解した。


(なるほど。第二王女付きの侍女で、名前はアンジェリカ・リリー・コルネ。コルネ侯爵家の三女なら身元はしっかりしている。ゆえにレグルス王太子殿下の寝室へ通したところで問題はない)


 それにしても、と思う。


 王女付きの侍女は高位な身分の者が多く、流血沙汰とは無縁のはず。


 暗殺未遂の現場は見に行った。大理石の床は清掃中だったが、まだ沢山の血が残されていた。普通ならあれを見て、腰を抜かして動けなくなると思う。


 手にしていた紙を降らせ、ギヌウスの目をレグルス王太子殿下から逸らさせる。この方法を思いついた機転に舌を巻く。侯爵令嬢でこんな発想ができるのは、只者ではない。


 しかもその場でパンプスを脱ぎ、警備兵を呼びに駆け出している。この咄嗟のパンプスを脱ぐ判断、そして実際に走り出すこと。この二つを出来ていることも奇跡に感じる。


 最終的にドレスで走り、また普段からそんな運動に慣れていないことで、ギヌウスの一人に追い詰められるのだが……。


(レグルス王太子殿下のそばから、ギヌウスを一人遠ざけた功績は大きい。……そうか。レグルス王太子殿下がコルネ嬢を呼んで来いと命じた理由、よく理解したぞ)


 そうなると僕は侍女長の所へ行き、コルネ嬢について直接聞こうとしたが、あいにくの不在。だが侍従長がいたので彼に頼み、コルネ嬢の身上書、給金管理帳などを手に、レグルス王太子殿下の寝室へ向かうことになった。


 そこで出会う。


 くりっとした琥珀色の瞳に、柔らかそうなキャラメルブロンド。健康的な肌色をしており、小柄であることから、なんだかリスのように見えるコルネ嬢に。


(レグルス王太子殿下は、僕が動物と触れ合う機会を沢山作ったので、実は無類の動物好きだ。その中でもリスが大好きだった。人にあまり慣れることがないと言われているリスなのに。宮殿の庭園の一画の森にいるリスは、そこで昼寝をするレグルス王太子殿下のそばをよくウロチョロしていた。彼の肩に乗ったり、頭に乗っかったり。それを殿下は喜び、リスを可愛がっていた……)


 実は見た目からしてレグルス王太子殿下の好みのど真ん中であったコルネ嬢。しかも彼女は驚くべき発明家だった。次々と殿下や僕の悩みを解消し、事務官を喜ばせるアイデアを出してくれるのだ。


 レグルス王太子殿下は、顔にこそ出さないが、嬉々として、彼女の提案を国王陛下に報告している。


(コルネ嬢とレグルス王太子殿下、まさに二人三脚でこの国をよくしてくれるのではないか!?)


 そうなると僕は願うようになる。


(コルネ嬢、殿下のことを頼みます……! レグルス王太子殿下がこれだけ強い興味を持ち、そばにいて欲しいと願う令嬢は、後にも先にもコルネ嬢、あなたお一人ですから……!)

お読みいただき、ありがとうございます~

殿下の子リス発言は実は愛がたっぷり込められていた♡

そしてここから「ああ、パスタですか」に

つながっていく流れでした!


次回は読者様からリクエストメッセージをいただいた人物の物語です☆彡

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