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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

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親切心?

「さあ、急いで。間もなく鐘が鳴るわ。マルグリット夫人が部屋に来てしまう」


 トランクをわたくしが持ち、モンクレルテ子爵令嬢が籠を持ち、屋根裏部屋へ戻った。扉を開け、中に入り、「何事!?」と思ってしまう。


 相部屋の屋根裏部屋。元々広くない部屋にベッドが三台、サイドテーブル付きで置かれている。そして共用利用の大きめのクローゼット。そうなるともう足の踏み場などほぼもないような状態なのだけど、その見える範囲に衣類や小物が散乱していたのだ。しかもそれは……わたくしの持ち物。


「テレンス嬢、ごめんなさい! あなたのトランク、床に置かれたままだった。ベッドに運んで差し上げようとしたの。でも躓いてしまって……そうしましたら、中身が散乱しちゃったの」


 ルベール嬢は口では「ごめんなさい」と言っているが、その表情はニヤニヤとして、わたくしの反応を楽しむ気満々と分かった。


(なるほど。ルベール侯爵令嬢はわたくしとはほぼ初対面にも等しい。ですがわたくしのことが嫌いなようね)


「親切心でこうなったのなら、仕方ありませんわ」


 そこで目に付いたアーモンドの花びらを思わせる淡いピンクのハンカチを拾おうと屈んだ瞬間。


「まあ、テレンス嬢は寛容ね!」


 こちらに歩み寄ったルベール侯爵令嬢がまさにわたくしが拾い上げようとしたハンカチを靴で踏みつけようとしたのだ。


「痛っ! テレンス嬢!」


 モンクレルテ子爵令嬢がなぜかわたくしの代わりで「痛い」と叫んでいる。

 ルベール侯爵令嬢に手を踏まれたのはわたくしなのに。


「あらあ、ごめんあそばせ! 下手くそな刺繍のハンカチですのに。まさかご自身の手で踏まれるのを庇うなんて!」

「おだまり。それ以上無駄口を叩くなら、針と糸で縫い付けますわよ!」


「あなたたち、扉も閉めずに大声で何の言い合いをされているのかしら!? 廊下を掃除しているメイドたちがビックリしていますよ」


 そこで九時を知らせる鐘がゴーン、ゴーンと鳴り始め、マルグリット夫人が顔を見せた。扉は最後に入ったモンクレルテ子爵令嬢が閉め忘れていたようで、どうやらわたくしとルベール嬢の会話を聞かれてしまったようだ。


「それにこの部屋はどうなっているのですか!? こんなふうに物を散乱させて! どなたの荷物なんですか?」

「わたくしの荷物です、マルグリット夫人」

「テレンス嬢……あなた」


 そこでマルグリット夫人は口ごもる。何を言いたかったのか、予想はつく。「元公爵令嬢なのに、こんな醜態。信じられませんわ」――このようなことを言いたかったのだと思う。


「申し訳ございません、マルグ」

「マルグリット夫人、テレンス嬢を叱らないでください!」


 わたくしの言葉に被せるようにして口を開くのはルベール侯爵令嬢だ。


「私が親切心で、彼女のトランクをベッドに運ぼうとしたら、躓いてしまって……。わざとではないんです。でもテレンス嬢が逆上されて……口を縫い付けるなんて恐ろしいことを言われ、怖かったのですが、もう大丈夫ですわ」

「なるほど。親切でやったのに失敗してしまった。それは仕方ないことです。テレンス嬢、許して差し上げなさい」


 ルベール侯爵令嬢は神妙な顔つきをしているが、口元には薄ら笑いを浮かべている。


(なるほど。オルリック嬢はストレートな嫌がらせでしたが、ルベール侯爵令嬢は頭を使うのね。……面倒ですわ。ますます相手にしないのが一番ですわね)


「マルグリット夫人、ルベール侯爵令嬢、行き違いがあったようで、申し訳ありません。わたくしは荷物が散乱している件、怒ってはいませんわ。むしろ鐘は間もなく鳴り終わります。コルネ伯爵のところへ向かった方がいいのではないでしょうか」


 ここは余計なことを言わず謝罪をしつつ、マルグリット夫人に本来のことへ意識を戻させる。するとマルグリット夫人はハッとして「片づけは後でするように。コルネ伯爵をお待たせするわけには行きません。行きますよ!」とすぐにくるりと背中をこちらへ向け、部屋を出る。


「チッ」と舌打ちするルベール侯爵令嬢に、貴族令嬢としての品格は感じられない。


「テレンス嬢、よかったらこちらを。その、手の甲に足跡がついています」


 並んで歩きながら、モンクレルテ子爵令嬢がごわごわとした木綿のハンカチを差し出してくれる。もしもシルクの上質なハンカチなら、受け取ることを躊躇う。でもこれなら「ありがとうございます」と受け取ることが出来た。


「さっきのハンカチ、ご自身の手で庇うなんて……。大切な方からのプレゼントだったのですね」

「いえ、別に何であろうと、踏まれそうになったら庇っていましたわ」

「あっ、そうなんですね」


 モンクレルテ子爵令嬢は肩透かしだったような表情をしている。


(どうってことのないハンカチよ。冷静に考えたら、そこまでする必要はなかったかもしれないわ)


 ルベール侯爵令嬢が踏み損ね、きちんと折りたたんでわたくしのドレスのポケットにしまわれたハンカチ。それはオルリック嬢が何度も指に針を刺しながらわたくしの名前を刺繍し、送別で贈ってくれたハンカチだった。

お読みいただき、ありがとうございます!

修道院に残ることになったオルリック嬢。

元気なのでしょうか……?

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