表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/194

目が離せない

「薬草リキュールは、薬用酒なんだろう! 完全に頭から仕事が抜けなくても、勉強の一環だと思えばいい。どうせ酔ったら頭から仕事のことは抜けるんだからさ」


 こんな感じで言葉を重ねると、ミハイルは「分かった」と遂に酒を飲むことに同意した。こうしてミハイルと共に部屋に戻り、早速薬草リキュールを飲むことになった。


「貴族のみんなはこれを食後酒として、ストレートで飲むんだろう? まずはその方法を試してみようじゃないか」


 小ぶりのリキュールグラスをテーブルに並べ、白衣を脱ぎ、グレーのスーツ姿になったミハイルと向き合う。私はガーネット色のチュニックにエプロンをつけていたが、それを外し、席に着く。


「まずはこっちのブラウンの瓶の方。甘口らしいよ」


 リキュールグラスに注ぐと、ミード(蜂蜜酒)のような色をしている。


「じゃあさ、乾杯」

「うん、乾杯」


 ミハイルは今日は飲むと決めたようで、グラスを手にして乾杯すると、迷うことなく口に運ぶ。私もグビリと一口飲んで……。


「……甘い!」

「そうだね。ダイアン、これさ、蜂蜜が入っている?」

「うん。この甘さは蜂蜜だ! 薬草の苦みなんてほとんど感じられない。甘くて、香りもなんというんだろうね、これは……」

「まろやかな感じだ」

「そう、そうだよ、ミハイル!」


 まるで蜂蜜飴を舐めているようだった。癖のないチーズと一緒に飲むと最高だ。こんなに甘いが、アルコール度数は高そうで、飲んだ量は少ないのに、体はぽかぽかしている。


「次はこっちか。ボトルもグリーンだし、これは薬草の風味が強そうだ」


 ミハイルがボトルを手に呟く。


「そうだね。飲んでみるかい?」

「そうだな……。ダイアン、氷、使う?」


 氷室の氷はとても貴重だけど、冬の間にストックを増やしていた。よってここは遠慮なくロックにして楽しむことにする。


「では乾杯だ、ミハイル」

「うん。乾杯」


 薬草の苦味を覚悟の上で口に含み、ミハイルと共に「「!」」と驚くことになる。


「薬草酒と分かるけど、これは何と言うか……」

「苦みは想像よりないじゃないか。あれだよ、あれ、清涼感があるよ、ミハイル」

「そうだね。そんな感じだ。爽快でいて、香りは少し甘い」

「なんだか不思議だねぇ。美味しいとぐびぐび飲むものではないけれど、こうちびちびいただく分には持って来いじゃないか」


 ローストしたナッツと共に飲むことになった。


「次はシャンパンに入れて飲むのか、ダイアン?」

「そう。それはさ、コルネ伯爵発案だよ。グラスはこれを使って、まずはブラウンの薬草リキュールをこれぐらい入れる」


 ワイングラスの底の方に、うっすらと蜂蜜色の薬草リキュールが溜まる。そこへシャンパンを加えると……。


「ミハイル、香りが一気に立つね!」

「うん、いい感じだ」

「じゃあ、もう一度乾杯!」

「ああ、乾杯!」


 先程までの濃厚な味わいから一転。薬草リキュールにシャンパンを加えると、軽やかな味わいとなり、甘さのバランスも完璧になる。


「鹿肉のテリーヌと合いそうだよ!」

「それは間違いないだろう。試そう」


 甘口の薬草リキュールにシャンパンを加えると、つまみが進む!


「ああ、これはお酒もつまみも最高に美味しいよ!」

「うん。こんなふうにお酒を飲むの、初めてだけど、感動している。すごくリラックスできているし、気持ちが楽になっているよ」

「ミハイルは子どもの頃から頑張り過ぎなんだよ! ボルチモアのおじさんを見て、同じように育つのかと思ったら、ミハイルはその真逆を行くんだもん。真面目過ぎ! もっと肩の力を抜けばいいのにさ」


 私の指摘にミハイルは酔いも回って来ていたのだろう。本音を打ち明ける。


「だって跡取りは僕しかいなんだ。絶対に宮廷医にならなきゃいけない。ここで宮廷医を拝命できなかったら……ご先祖様に怒られてしまう」

「それで頑張って、宮廷医になれたじゃない」

「確かになれた。宮廷医になったら、これで落ち着くかと思ったけれど……。陛下は強靭で大きな病気も怪我もない。王妃も王女も健康だ。でもレグルス王太子殿下は……親父の時に、何度も怪我をしているし、僕になってからも暗殺者に狙われて……」


 ミハイルの言わんとすることは分からなくない。殿下は頭脳明晰、容姿端麗、運動神経抜群で、剣術の腕はソードマスターと同等。ただいつもポーカーフェイスで正論理詰めだから政敵を作りやすい。不正や腹黒い人間を許せないから、逆恨みもされがち。そうなると暗殺者に狙われ、怪我だったしやすいのは事実だった。


「ミハイル。あんたの言わんとすることは分かるよ。レグルス王太子殿下に何かあったら……って」


 そこで私は、グリーンのボトルの薬草リキュールを空になったグラスに注ぎ、シャンパンを加える。


「病気だろうと怪我だろうと、もし何かあった時。その責任をミハイルが負う必要はないんだよ。ボルチモアのおじさんが昔言っていたじゃないか。『人の生き死にを決めるのはしゅなんだ。医者がその責任を負う必要はない。全力を尽くしてダメだったなら、それがその人の天命だったと思わんと、医者の心が壊れる。それは陛下も分かってくださっているのだから』って。陛下もそうだし、レグルス王太子殿下だって暴君じゃないから。何か起きた時、完璧な状態で駆けつけないといけないと、自分自身を追い詰める必要はないさ」

「それはそうだけど……」

「それにミハイル、いつまでもそんな完璧な宮廷医に固執していたら、もう一つの大切な役目を果たせなくなるよ」


 私の言葉にミハイルは酔いが吹き飛んだような真剣な表情になる。


「ダイアン、もう一つの大切な役目って!?」

「そりゃあ、あれだよ、あれ! ボルチモア家は代々宮廷医なんだろう? つまりミハイルも跡継ぎのこと、考えないと!」

「……! そうだった……!」


 ミハイルは頑張り屋で努力家だけど、こういうところは抜けているというか。


(幼なじみとして、何だかミハイルからは目が離せないったらありゃしないよ!)

お読みいただき、ありがとうございます。

テレンス公爵令嬢の物語、執筆していますのでお待ちくださいね☆彡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

●[四半期]推理(文芸)2位●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ