表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/194

新参者は

「あの人、公爵令嬢だったのよ」

「え、公爵令嬢!? 嘘でしょう? なんで公爵令嬢が修道院にいるの? 年齢だってまだ若いわよね? しかもすごい美人よ」

「理由は分からないわ。何せこの修道院は世俗から切り離されているでしょう? 流行り病や戦争が起きれば知らされるけど、それ以外は……。もしかするととんでもない悪女かもしれないわ。例えば自身の父親を毒殺しようとしたか」

「まあ、それは恐ろしいわ! でも昔いたのよね、父親を毒殺し、死刑になった令嬢が」


 修道院とはしゅに仕え、清貧で、心優しい人ばかりが集まっている。修道女は清廉な者が多いと勝手にイメージしていた。実態はこの通り。娯楽もないので新参者は根掘り葉掘り探られ、あることないことが噂となり、まことしやかに語られる。


 クーシュケット修道院でのわたくしのあだ名は「稀代の悪女」。何も知らずにつけられたこの呼び名に、反論する気持ちにはなれなかった。しかしわたくしが何も言わないので、尾びれ背びれがついた噂がさらに広まる。


「実の父親とまぐわった悪魔憑きらしいわ」

「王太子殿下を殺そうとしたらしいわよ、お茶会の席で」

「殿下の婚約者に嫉妬し、火あぶりにしようとしたとか」


 微妙に事実と嘘を織り交ぜ、皆、好き勝手にわたくしのことを噂する。


(この修道院に死ぬまでいなければならないのかしら)


 ため息が出そうになるが、こんな噂も長くは続かない。わたくしは何を言われても相手にしないし、いずれ新しい何かしでかした女性がやってくる。そうなれば関心はそちらへ移るだろう。しばらく我慢すれば……。


「まあ、ごめんあそばせ」

「あら、雑巾臭くなってしまったわね」

「それならそのまま洗濯をお願いできる? ほら!」


 外の世界では男爵令嬢だったオルリック嬢は、この修道院では三年目。侍女のように彼女に付き従う女も三人にいて、新人いびりがお楽しみのようだ。床掃除に使った汚れたバケツの水をいきなりわたくしに浴びせたのだけど――。


「ええ、喜んでお洗濯しますわ!」


 そう言ってオルリック嬢に抱きつくと「やめて! 臭い! やだ! 私も臭くなったわ!」とわたくしを突き飛ばす。そこで今度はわたくしがオルリック嬢の頬を平手打ちする。


「手伝いなさい。この量を一人でできるわけがないでしょう!」


 使用人を問答無用で従わせる、圧のこもった口調と声に、オルリック嬢は怯む。しかも平手打ちなんてされたことがないので呆然としていた。


「……わ、分かりました……」


 何が起きたか分からず、返事をしているオルリック嬢は……。この日以降、わたくしにつきまとう。まるで侍女のように勝手にわたくしへ仕えるようになった。


 ◇


 気づけば三か月近く経ち、新しい悪女も登場し、わたくしの噂もすっかり沈静化していた。


 その一方で春は近いがまだ寒さは厳しい。石造りの修道院はとにかく寒かった。


「ルイーザ様。父親を脅したら、羊毛の靴下を送ってくれました。どうぞお使いください」

「……オルリック嬢、脅すなんてしないで、普通に頼みなさいよ……。でも、プレゼントは有難く受け取る主義なの。ありがとう」


 オルリック嬢から受け取った羊毛の靴下を履くと、とても暖かい。だがデザイン性はなく、これを履くだけで野暮ったくなる。グレーの丈の長い修道服を着ているので、足元は目立たない。しかし裾をめくりあげ、この靴下が見えたら……。


(とても元公爵令嬢には見えないわね)


 手入れをしていない肌はガサガサだし、髪だってぼさぼさ。ドレスも着ないので、体全体が型崩れを起こし始めている気がする。


(どうせ結婚もしないのだから、見た目を気にしても仕方ないわ)


 そんなことを思っていたら、修道長から呼び出される。


「明日、来客があります。大変高貴な身分の方です。これから明日にかけ、身支度を整えてもらいます。髪と爪を切り、今晩は入浴を許可しますので、全身を清めなさい」


 こう言われたわたくしはビックリだった。


 この修道院は家族と親族との面会しか認めず、しかもそれは女性限定。テレンス公爵の名は地に堕ち、既に爵位もない。この修道院に入ってから、わたくしを訪ねて来た者はゼロだった。


(母親は祖父の領地に引きこもっているというし、一体誰が訪ねて来るというの……?)


 わたくしが公爵令嬢だった頃、オルリック嬢のように、わたくしに気に入られようとする令嬢は何人もいた。でもわたくしの父親が逮捕されると同時に、連絡は途絶えている。


(もしや元侍女やメイドかしら?)


 そんなことを考えながら、言われた通り、身支度を整える。三か月ぶりに入浴し、髪も洗い、翌日を迎えた。


 グレーの修道服に、足元にはあの羊毛の靴下を履きたかったが、修道長から「見苦しい。脱ぎなさい」と言われてしまう。石造りの建物特有の、足元からせりあがるような寒さに耐えながら、面会室へと向かうと――。


「テレンス嬢、お久しぶりです」


 そこには愛らしさが増した小動物がいた。

お読みいただき、ありがとうございます!


【併読されている読者様へ】

のんびり楽しむ週末ミステリー

『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

https://book1.adouzi.eu.org/n2796kp/

数話で完結する【事件簿】シリーズ「碧色は死を招く色(1)」が本日よりスタート!

土日に各1話ずつ、ゆったり更新していきます。

ページ下部のバナーからお楽しみくださいませ☆彡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

●[四半期]推理(文芸)2位●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ