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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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舞踏会へ

 普段は侍女をしている私がレグルス王太子殿下にエスコートされる。


「侍女のくせに殿下にエスコートされるとは!」

「立場を利用し、エスコートするよう要求したのでは!?」

「婚約者候補を差し置き、エスコートされるなんて!」


 そんな白い目で見られるかもしれない……そう思っていた。だが……。


「これはいい! 殿下とコルネ嬢、お似合いじゃ!」

「お揃いのフロックコートとドレスみたいで、とってもよいではないか!」

「美男美女だ。これはよい!」


 鍛冶工房の職人を始めとした顔見知りのみんなが、レグルス王太子殿下にエスコートされる私を見て、実に好意的な意見を声に出して言ってくれるのだ。しかもポートワイン効果で、みんな物怖じすることなく、ホールでも堂々している。


 そもそも地方領にいる貴族も多く、今日の舞踏会に顔を出している貴族の数は限られていた。重鎮たちは勢揃いしているが、彼らは粉薬、羽根ペン、算盤のことを既に知っている。ゆえに私を見る目も優しく感じられるのだ。


 しかも現状の婚約者候補の令嬢たち、惜しくも婚約者候補から落ちてしまった令嬢たち、その両方が「コルネ嬢、素敵です!」「とても素晴らしいお二人ですわ」「息が合っていますわよね」と、歓迎モードで迎えてくれる。


 それだけではない。先にホールに入場していた三人の王女たちも「お兄様とコルネ嬢、お似合いですわ」「コルネ嬢のドレス、とっても素敵!」「お兄様ったら珍しく鼻の下を伸ばしているわよ」と、冗談も交えて笑顔で声をかけてくれたのだ!


 私の両親もニコニコと笑顔で見守ってくれている。


 こうなると他の貴族たちも、私がレグルス王太子殿下にエスコートされている様子を見て、悪意あるささやきをすることもなかった。


(良かった。本当に良かったわ。ここで恨まれたら明日からの使用人生活、針の筵だったもの!)


 私が脳内で安堵していると、レグルス王太子殿下は……。


《どうやら子リスは緊張しているようだな。この舞踏会は子リスたちの功労を讃えるために開催されている。もし異を唱えるものがいたら、このわたしが許さない。完膚なきまでに叩き潰す。よって子リスは何も恐れる必要はないのに》


(無表情だけど、神々の彫像のような完璧な姿で、心の中では「完膚なきまでに叩き潰す」と思っているなんて……!)


 驚愕で思わずレグルス王太子殿下を見てしまった私だったが、彼からはこう見えていたようだ。


《そんなに瞳を震わせて……。本当に小動物みたいで可愛らしいな。そんなに怯えずとも、わたしが守るのに》


 その優しい気持ちは紺碧色の瞳から溢れ出ており、驚愕から一転、私は胸キュンしてしまう。


(変な勘違いをしてはいけないわ。レグルス王太子殿下は私を子リスだと思っている。か弱き小動物を守るという庇護欲をかき立てられただけで、それ以上でもそれ以下ではないのよ!)


 そう自分自身に言い聞かせていると、ファンファーレが聞こえ、国王陛下夫妻が入場する。


「His Majesty the King」


 ホールに設けられたひな壇の玉座の前に国王陛下が立つと、女性はカーテシー、男性は一礼を行う。それが終わると、国王陛下が挨拶を始める。


「秋の狩猟シーズンに、王家主催で舞踏会を行うのは極めて異例のこと。皆、どうしたかと思ったであろう。だがこの舞踏会を行うことになったのには、理由がある。まずはこれを見るといい」


 なんとひな壇には宰相が登場し、粉薬(間違いなく偽薬)を飲もうとして、むせてしまう。だがそこにゼリーが登場。ゼリーに粉薬をのせ、さらに粉薬をゼリーでカバーし、スプーンでゴクリとしたのだ。


「むせることなく飲めました!」と宰相が告げ、次にあの苦いことで有名な化膿止めの薬の袋を手に、宮廷医ボルチモアが登場。宰相に飲むように勧め「苦いから嫌です!」と答えると、ホールからは笑いが起きる。


「ではこちらをどうぞ。化膿止めをサンドをしたチョコレートです」

「おおお、チョコレート! それならばいただこう!」


 ご機嫌で宰相がチョコレートにサンドされた化膿止め(これも絶対に偽薬)を口に運び、ここでもホールは爆笑になる。


 続いてなんとスコット筆頭補佐官が羽根ペンを手に登場し「あ~、すぐにインクが切れて困る!」と叫ぶと、そこに鍛冶職人のダイアンがペン先に金属のついた羽根ペンとインクの瓶を持って現れた。


「こちらを使えば、通常の倍以上の文字が書けます!」

「本当ですか!?」


 そこでバトラーが素早くサイドテーブルを用意し、そこでスコット筆頭補佐官がダイアンが渡した羽根ペンで文字を書き始める。


「うううんっ! まだ書けるぞ!」

「ええ、ですから、この金属があることで、羽根ペンで保持できるインク量が増えたのです」

「なるほど、これは画期的だ!」


 スコット筆頭補佐官が一心不乱に羽根ペンを走らせ……。


「ここまで書けました!」


 紙を掴み、皆に向けると、一斉に拍手喝采が起きた。そこで横にいたレグルス王太子殿下がひな壇に上がり、「書類仕事の最中、計算をするのが煩わしい」とあの秀麗な顔で淡々と告げる。すると「殿下、これをご覧ください! この算盤を使えば、あっという間に計算が可能です!」とスコット筆頭補佐官が伝えた。


「本当か? どのように使う?」


 そこで巨大な算盤の模型が登場し、スコット筆頭補佐官が使い方を説明。その場でレグルス王太子殿下と共に、足し算、引き算、掛け算、割り算を実践してみせると……。


「これはすごい!」「我が家にも欲しい!」

「自分はあの羽根ペンを手に入れたいぞ」


 そんな感じで次々とホールにいる貴族から声が上がる。その声に応えるように、国王陛下が玉座から立ち上がった。

お読みいただき、ありがとうございます!

14時に公開するつもりがフライングしていました。

ごめんなさい。。。

次話は20時頃に公開予定。

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