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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
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オルリック嬢(後日談・前編)

「……次の休み、昼食を作りましょうか?」


 勢いでそう言ってしまったが。

 実は私……料理はそこまで得意ではない。


 修道院では自給自足が基本であるため、料理作りは日々行っていた。でもそれは義務的に作業をしているのであり、美味しさを追求しているわけではない。


 食べることができればいい。


 という前提で作る料理と「喜んで食べて欲しい」と思い作るのでは……その結果は雲泥の差があると思う。


 つまり修道院で日々食べていた料理、自炊していたようなものだが、美味しいかと問われると、即答できる。


「お腹を満たすものではある。でも美味しくない」


 販売用に作っていたお酒やお菓子は売れるぐらいだから美味しかったと思う。でも普段の食事は……お腹も空ているから食べられたレベル。


 要するにジークに安請け合いをしてしまったが、いつも様々な国の美食料理を食べさせてくれる彼を満足させるような手料理を用意する自信が私には……なかった。


 ◇


 いつになく真剣な表情で廊下を歩いている時のこと。


「オルリック嬢、どうしたのですか?」


 優しい声音にハッとして顔をあげると、そこにコルネ伯爵がいる! そばにはルイーザ様とララ嬢、クライン卿もいたが、コルネ伯爵は私の近くに来て「何か悩んでいるのなら、相談に乗りますよ」と言ってくれたのだ……!


 これまで数々の発明品と考案で革命を起こして来たコルネ伯爵なら私の悩みも解決できるかもしれない。


「はい。……実は少し悩み事が……」

「オルリック嬢。あなたの献身は常日頃よく感じています。……ティータイムを私と過ごしましょう」

「えっ、でも仕事が」

「私の相手をする、という仕事を与えます」


 そう言ってコルネ伯爵はニッコリ微笑むと、ルイーザ様を見る。ルイーザ様は心得ています、という表情になり、ララ嬢に指示を出す。


「メイド長に伝えてください。オルリック嬢はティータイム、コルネ伯爵のお相手を賜ったと。その時間、他の業務を彼女に与えないようにと伝えてください」

「かしこまりました!」


 ララ嬢が動き、コルネ伯爵から「ちゃんと悩みを聞きますし、解決策は一緒に考えます。ティータイムの時間まで、頑張れますか?」と問われた私の答えは「頑張ります!」の一言に尽きる。そして実際、ティータイムまで手料理の件を忘れ、しっかり働くことが出来た。


「オルリック嬢!」


 そろそろティータイムが近いと思いながら、宮殿の客間の掃除を終え、モップとバケツを手に廊下を歩いていると、メイド長が飛んできた。


「コルネ伯爵にティータイムに呼ばれているのだろう? 遅刻はできない。この新しいエプロンに付け替えて。モップとバケツは預かる。王宮の喫茶ルームでコルネ伯爵はお待ちになるそうだ。ほら、行って、行って!」


 コルネ伯爵とのティータイムを過ごす――それだけで一時、待遇がグッと変わる!


 新しいエプロンに付け替え、古いエプロンはメイド長が預かり、モップとバケツも手放した私は軽やかな足取りで王宮へ向かう。


「!」


 回廊の反対側にレグルス王太子殿下とスコット筆頭補佐官と一緒に歩くジークの姿が見えた。


 三人はまさにこの国の美男子であるが、レグルス王太子殿下の美貌は群を抜いている。


 アイスシルバーのサラサラの髪に紺碧色の瞳。ソードマスターと同格と言われる剣術使いだけあり、体幹が素晴らしく姿勢もよく、全身が見事なまでに引き締まっている。


 一方のスコット筆頭補佐官は文官らしく、その眼鏡と長髪で賢者のオーラが漂う。鍛えた体というわけではないが、長身であるため、スラリとして、存在感がある。レグルス王太子殿下と並んでも違和感もなく、美男子に見えた。


 この二人と並んで霞むことがないのは、ジークのあの赤銅色の瞳のせいだろう。目力がある! そして柔らかいバターブロンドは黄金のようで、目を引く。そしてレグルス王太子殿下と同等、いやそれ以上かもしれない、絞り込まれた筋肉。脚の長さといい、姿勢の良さといい、レグルス王太子殿下と並ぶことで、さらに映える。


 この三人の後ろに続く護衛騎士たちも精鋭であり、一人一人が立派であるのは事実。


 でもレグルス王太子殿下、スコット筆頭補佐官、ジークと一緒では、さしもの精鋭騎士達も霞んでしまう。


 それだけ三人に華があった。


(というか私がここ数日頭を悩ませているのは、澄まし顔で歩いているジークのせいなのに!)


 恨み節でジークを睨んだ瞬間。


 寒い冬の空に射し込んだ、一筋の明るい光のように、ジークがこちらを見て微笑む。その微笑みは、凍てつく大地に広がる万年雪さえ溶かすような、限りない温かさに満ちている。自然と、ささくれ立った気持ちが落ち着く。


「……っ……!」


 悔しいが、今の微笑みは完璧だった。

 私のイラッとしていた気持ちは瞬時に溶かされている。


(ずるいわ、ジーク! あんなふうに微笑むなんて!)


 脳の中では文句を言っているが、私の顔は……しばらくの間、表情が緩むのをどうすることもできなかった。

お読みいただき、ありがとうございます!

レグルス王太子殿下、スコット筆頭補佐官、ジーク。

読者様の推しは!?

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