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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

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オルリック嬢編(後編)

「それでジーク。何ですか? 使用人の休憩室に現れるなんて。余程のことがあったのですよね?」

「え?」

「え?ではなく、早く説明をしてください!」


 詰め寄ると、ジークはなぜかたじたじになっている。


「いや、え、えーと、僕はリエットが用事があるのではないかと思っただけだ。メイドの休憩時間は短い。だから……」

「はい?」

「え、えーと、リエットは僕に用があるだろう?」

「は?」


 片眉を私がクイッとあげると、ジークの両眉は下がり、うるうるの上目遣いで私に尋ねる。


「ほら、渡したいものとか、ある、だろう……?」

「何の話ですか?」

「え」


 そこで私はハッとして、エプロンに入れていた小瓶を取り出す。


「仕方ないですね。これ、騎士の皆さんが使う高級なオイルです。リンシードオイル。いくつかもらったので、ジークにもあげます」


(まったく。これに目をつけるなんて。目ざといというか、さすがね。通常の武具の手入れで使うオイルより高級品なのだから)


 小瓶を渡すと、ジークは「え、いや、えーと……。うん。……ありがとう、リエット……」と何だかあまり喜んでいない。


(え、もしや一本では足りない!?)


 高級品なのでそこは遠慮して欲しいと思うが、ジークにはお世話になっている。


(これまで沢山、ご馳走してもらっているし……)


「もう、出血大サービスです! 五本しかいただいていないんです。でもあと二本さしあげます」

「あ、ありがとう……じゃない! 別に武具を手入れするオイルなんて、どうでもいい!」

「!? 信じられないです! どうでもいい!? それが上官の言葉ですか!? 武具の手入れは重要ですよね!」


 くわっと噛みつく勢いでジークを睨むと「やっぱりリーヴィエル侍女長みたいだ!」と泣き言を言い出す。


「もう、いらないなら結構です!」

「いや、そうではなく」

「じゃあ、はい、どうぞ!」

「いや、そんな、リエットが大切にしているものを奪うようなことはしたくない」


 これには肩から力が抜け、尋ねることになる。


「では何なんですか……?」

「それは……」

「あ、ジーク副長官! 何やっているんですか! 長官との会議、忘れていませんか!?」


 おかんむりのロイドが現れ、ジークを引きずって行く。


「リエット……!」


 名を呼ばれても一介の諜報員に過ぎない私が長官相手に何かできることは……ない。


(まったく。今日のジーク、おかしいわ)


 その後もジークは神出鬼没で現れ、私を驚かせる。

 でも私に用事があるのか、ないのか、それは不明。

 まるで牛にまとわりつくハエみたいない状態だ。


 そんなこんなで時間は流れる。


 ゴーン、ゴーン……。


 鐘が鳴り、今日のメイドとしての業務は終了。

 でもこの後、ミラーの会議がある。


「……ということでジーク副長官、昨年末に捕らえたギヌウスの暗殺者ですが……ジーク副長官!?」

「あ」

「あ、ではなく、聞いています?」

「すまん。聞いていなかった」


 会議中のジークは心ここに在らず状態。

 あんなポンコツなジークは初めて見たと思う。


(今日のジークは何かおかしいわ)


 会議が終わり、皆が退出する中、ぼーっとした様子で椅子に座ったままのジークに私は駆け寄る。


「ジーク」

「……リエット……」


 魂が抜けたような表情で、ジークが私を見上げる。


「今日のジークは何だか変です」

「……」

「これ、予備で作ったものですが、甘い物を食べると元気がでると思うので、どうぞ」


 メイドがつけるエプロンのポケット。これは何気に巾着袋に代わりになる。左右二つついており、いろいろ入れることができて便利だった。そしてそこに私は……チョコレートのイベントで作った予備のチョコレートを入れていたのだ。


「リエット、本当に、これを僕にくれるのか!?」


 ジークの顔が一転、生気がみなぎり、赤銅色の瞳が燃えるように輝いている。


(何よ、ジーク、急に! ま、眩しい!)


 瞳を細めながら、私は「はい、そうです。小腹が空いたら自分で食べるつもりでしたが」と答えているが、ジークは聞いているのか、聞いていないのか。私からチョコレートの入った箱を受け取り、子どものようにはしゃいでいる。


「……そんなに嬉しいのですか?」


 半ば呆れて問うと、ジークは太陽のような笑顔で私を見る。


「嬉しいよ、リエット! だってこれはリエットの手作りだろう?」

「板状のチョコレートをとかして、成型しなおしただけですよ?」

「どんな過程であろうと、リエットが作ったことに変わりはない」

「作った……と胸を張って言うほどではないかと」

「いいんだ。細かいことは気にしない。……僕が嬉しくて幸せなんだから」


 ミラーの副長官なのに。侯爵家の令息なのに。ジークは……私の手作り!と言えるほど手作りではないチョコレートに、こんなにも喜ぶなんて。


「……仕方ないですね。次の休み、昼食を作りましょうか?」

「次の休みに昼食を奢って欲しい? お安い御用だ。このチョコレート……いや、待て。リエット、今、昼食を作る……と言ったか……?」

「別に外食でもいいですよ。そっちの方が絶対に美味しいですから。ジークが食べたいものをご馳走します」

「いやだ」

「はい!?」


 そこでジークが私の両手を自身の両手で握りしめる。


「絶対にリエットの手料理を食べたい!」


お読みいただき、ありがとうございます!

ジーク大喜び♪

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