表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

189/194

コルネ伯爵編

「こちらのマロングレーズもぜひ召し上がって見てください、コルネ伯爵」

「このプロシュートも味わっていただきたいですわ。アルセール国では豚に栗を与えていますの。そのおかげでお肉にほんのり甘みがあり、絶品なんですのよ」


 アルセール国王夫妻と向かったオペラ。

 ロイヤルボックス席は外交でも使われる。

 前世のように飲食禁止ではない。

 観劇前後はもちろん、観劇中の飲食も許されている。


(とはいえ、私はオペラが好きなので、観劇前後も、観劇中も、飲み物を口にするぐらいなのだけど)


 しかし今日はアルセール国王夫妻と一緒の観劇。

 外交も兼ねているので、飲み物に加え、軽食、スイーツが用意されている。

 しかもアルセール国王夫妻は自国の食文化の紹介になると思ったようだ。あのマロングレーズを用意してくれたのだ。


(マロングレーズ。懐かしいわ。レグルス王太子殿下がハーン帝国に行っている間に行われた王太子妃教育では、がっつりアルセール国について学んだ。そこでマロングレーズもいただき、栗を食べた豚肉も食べたいと思っていたのだけど、ここで実現するなんて!)


 本場のマロングレーズとプロシュートは絶品!


「マロンタルトもあるので、ぜひ召し上がってくださいませ」

「焼き栗もあるのでどうでしょうか」


 アルセール国王夫妻は勧め上手だったし、さすがの栗の産出国。様々な栗の食べ物を用意してくれていた。しかもどれも美味しいのでパクパクといただけてしまう。


 その状況の中で私は……。


(前世バレンタインを思い出し、チョコレートを女性から贈るイベントを立案した。それは上手く行ったと思う。チョコレートを作ったみんなは、それぞれ思う人にプレゼントしている。そこでいくつもの恋の花が咲いたはず。私もレグルス王太子殿下に渡すつもりだけど……)


 今朝、第二王女や王妃殿下も含め、国王陛下とレグルス王太子殿下に、小ぶりのハート型のチョコレートを配っている。朝食の席でパクッと食べる形で。でもそれとは別にレグルス王太子殿下用で大きなハートのチョコレートを用意していた。


(本当はお昼に渡す予定だったのだけど……)


 レグルス王太子殿下はお昼前から始めた会議が長引き、私は一人で昼食となった。


(ではティータイムと思っていたけれど……)


 倶楽部のティータイムに招待されていたレグルス王太子殿下は外出だった。


 かくしてチョコレートのイベントを主催しておきながら、肝心の私は本命たるレグルス王太子殿下にチョコレートを渡せていない状態だった。


(大量に作ったから、護衛騎士のクライン卿や男性の使用人、みんなにも配ったわ。スコット筆頭補佐官、ボルチモア医師、ホワイティア先生や鍛冶職人たちにも。でも……肝心のレグルス王太子殿下に渡せていないなんて!)


 一応、このオペラ観劇の場にも持参している。でもこれだけ栗の料理やスイーツを食べてしまうと……。


 チラリと見ると、ホワイトシルバーのテールコートを着たレグルス王太子殿下は、アルセール国王夫妻が勧める栗のスイーツや軽食をすべてちゃんと口にしている。


 かくいう私も同じで、既に満腹になりつつある。


(栗というのは意外とお腹に溜まる気がするわ!)


「お、そろそろ始まるかな」


 アルセール国王陛下の言う通りで、オーケストラの入場が始まっている。


「観劇中はこちらがおススメですわ」


 そこでアルセール国の王妃殿下が勧めてくれたのは……栗粉を使ったパン!

 見た目はパウンドケーキに似ており、その食べ応えは……。


(外側は少し固めだけど、中はもっちり、ずっしり。これは……腹持ちがよさそうね)


 レグルス王太子殿下にチョコレートを食べてもらう。それは……明日になりそうだわ、と思ったところで、オペラがスタートした。


 ◇


「いやあ、素晴らしいオペラでした」

「さすがアトリア王国ですわ。歌手の皆さまのレベルが高く、感激いたしました」


 アルセール国王夫妻は大満足で席から立つ。


 《アンジェリカ。夫妻を見送ったら、少しロビーで話をしませんか》


 レグルス王太子殿下が心の声で話し掛けてくれた。


 驚いて彼を見上げ、でもこくりと頷くと、秀麗な笑みを浮かべている。


(そういえば今日のオペラ、恋愛ものだったけど、レグルス王太子殿下はいつもより強く拍手をしていた気がする。もしかしたらとっても気に入ったから、感想を話したい……とか?)


 そんなことを思いながら、レグルス王太子殿下にエスコートされ、裏口へと向かう。表の混雑を避け、警備も万全に行き届いた状態で、アルセール国王夫妻が馬車に乗り込むのを見送ると、建物の中へ戻った。


「ロイヤルボックス席へ戻る。しばらくの間、アンジェリカと二人きりにして欲しい」


 レグルス王太子殿下の言葉に同行していたテレンス嬢たち侍女、護衛騎士のクライン卿らは廊下で待機となる。


「アンジェリカ」


 私を先に座らせ、その隣に腰を下ろしたレグルス王太子殿下が、アイスシルバーの髪をサラリと揺らし、美しい笑顔を浮かべる。


「三時間程のオペラを観劇したので、少しお腹が空いてしまいました」

「!」

「アンジェリカからは甘い香りがします。……アンジェリカを食べてしまいそうです」


 そう言うとレグルス王太子殿下が私に顔を近づけ、首筋にキスをするから、失神しそうになってしまう。


 意識を保つため「で、殿下! チョコレートが、チョコレートがございます!」と慌てて答えることになる。それを聞いたレグルス王太子殿下は口元にフッと甘い笑み。


「わたしはアンジェリカを食べたかったのですが……」

「そ、それはなりません。こちらを召し上がってくださいませ! 私の手作りですから!」


 巾着に入れていた箱を取り出し、レグルス王太子殿下に渡す。

 彼は「ありがとうございます」と受け取る。


「……チョコレートのイベントで作ったのですか?」


 シュルっとリボンをほどく手の動きが、何だか艶めいて見えてしまう。


「そ、そうです! 本当はお昼にお渡ししたかったのですが……」

「そうでしたか。それは申し訳ないことをしました」

「ですが今、小腹が空いているなら……」


 そこで私はハッとする。

 レグルス王太子殿下は、私から甘い香りがすると言っていた。


(つまりチョコレートを持っていることに気が付いていたのでは!?)


 紺碧色の瞳を見ると、レグルス王太子殿下はその整った顔に優しい笑みを浮かべる。


(そうなんだ。そうなんだわ。今朝、みんなに配っただけではない。彼のために作ったチョコレートがあると気づいてくれたのね。でも渡すことができず、私が沈んだ顔をしているのに気が付いて……)


 私の心の声など聞こえないのに。

 レグルス王太子殿下はいつも私に寄り添ってくれる……!


 胸がトクトクと高鳴ってしまう。


「これは……今朝のハートのチョコレートよりサイズが大きいですね」

「そうです……。殿下にたっぷり召し上がっていただきたくて」

「なるほど。ではいただいても」

「はい!」


 レグルス王太子殿下は「上手に作れています」と褒めながらチョコレートを食べてくれたのだ!


 その様子を見るだけで、私の心は満たされる。


「……! 美味しくてつい、全部食べてしまいました」

「食べていただいて問題ありません! 殿下のために用意したのですから」

「ですがアンジェリカ。あなたも味見をしたかったのでは?」

「え……」


 そこで顎をクイッと持ち上げられ――。


 レグルス王太子殿下のために作ったチョコレート。

 それは……とてもドキドキして、甘い甘い幸せな味だった。


お読みいただき、ありがとうございます!

チョコレートを食べた後のキスは甘々だったー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

●[四半期]推理(文芸)2位●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ