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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

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ダイアン編

 本当にコルネ伯爵には驚かされるよ。


 新年を迎え、鍛冶工房の忙しさはひと段落だった。


 年末にいろいろと新調する。その需要で十二月は異常な程の忙しさ。だが年が明けただけで、その多忙な事態が嘘のように解消される。


 むしろ暇……というわけではないけれど、余裕があったその時、コルネ伯爵から相談を受けた。


「チョコレートを流し込む、ハートやダイヤの型を作るのかい?」

「はい! 女性陣のみんなでチョコレートを作り、男性にプレゼントする。大好きですって気持ちや感謝の想いを贈るイベントにしたいのです。協力いただけますか?」


 王太子殿下の婚約者になっても、コルネ伯爵は侍女の時と同じように謙虚だった。そして「協力するように」ではなく「協力いただけますか?」なんて言われ「やだね!」の返事はない。


「ちょうど、腕がなまりそうだった。いいよ。作ろうじゃないか」


 こうして大量に作ったチョコレートの型を使い、二月十三日の夜にみんなで厨房に集合。手作りチョコレートを完成させた。


(そもそもチョコレートは高級だろう。それがコルネ伯爵の采配で無料で提供された。それで作ったチョコレート。お得だし、それにあたしの型は完璧だった。いい感じのハート型のチョコレートができたよ)


 二月の寒い夜、しっかり固まったチョコレートを型から抜き、ラッピングをするにあたり、考える。


(シンプルなハートでこれはこれでいいんだけどさ、鍛冶職人としては何か物足りない。しかもあたしは装飾品だって手掛けるから……)


 そこで思いついたあたしは、つるんと綺麗に仕上がったチョコレートの表面に針と彫金工具を使い、飾り文字でミハイルの名と雪の結晶を描く。


(わお! 美しいじゃないか。これは……ミハイル、喜んでくれるのでは?)


 既に宮殿では、コルネ伯爵が二月十四日にチョコレートを使ったイベントを実施すると噂になっている。きっとミハイルの耳にも入っているし、楽しみにしてるはずだった。


 ご機嫌でラッピングを始めるが……。


「ああああ! 道具を使って彫ったり、削ったりは得意だけどさ、ラッピングは紙だから難しいじゃないか!」


 紙は貴重。しかも柄がつき、色のついている紙は高価であることもわかっている。だが鍛冶作業と違い、ラッピングは丁寧に優しくしないといけないから……。


 悪戦苦闘することになる。


「何だかこのリボン、なんで斜めになるのかね。……リボンを綺麗に結ぶような服はさ、あたしの範疇じゃないから、難しいよ!」


 それでも何とかミハイルにプレゼントするためのチョコレートは完成した。


 ◇


「さあ、爺さま方、今日は特別。昼食だけど、デザートがあるよ! コルネ伯爵に感謝しないと」


 大皿に、スクエア、ラウンド、ハートと様々な形のチョコレートがのせられている。

 コルネ伯爵と私、そしてオルリック嬢が作ったチョコレートだ。

 甘い香りが漂い、それを見た爺さま方は……。


「おおお、これが噂のチョコレート!」

「コルネ伯爵発案のチョコレート祭り!」

「高級なチョコレートを食べられる!」


 爺さま方は大喜び。


 その様子を見てから、あたしは宮殿のミハイルの元へ向かう。

 ミハイルもこの時間は昼食で休憩中。


(チョコレートを渡そう!)


 紙袋の中には、下手くそなラッピングだが、味と見た目は完璧のチョコレート。これを手にミハイルに会いに行く。


「!」


 昼休憩。


 宮殿のあちこちで見慣れない光景が広がっている。


 警備兵にチョコレートを渡すメイド。

 バトラーにチョコレートを渡す侍女。


 裏庭で騎士にチョコレートを渡す貴族令嬢の姿も見てしまった。


(コルネ伯爵発案の二月十四日のチョコレートイベント、正解なんじゃないかい!)


 こうしてミハイルのいる宮殿の部屋に到着し、ノックをすると……。


「ダイアン! どうしたんだい!?」


 昼食を終え、カウチで昼寝でもしていたのか。

 飛び起きたミハイルは髪がはねている。


「ミハイル、髪が跳ねているじゃないか」


 そこで暖炉で温まっていたお湯を使い、タオルを濡らし、跳ねた髪を押さえさせながら、私は紙袋をミハイルへ渡す。


「コルネ伯爵のチョコレートイベント。……あたしもさ、ほら、チョコレートを流す型を作るので協力して。それで……作ってみたんだよ、チョコレートを」

「ありがとう、ダイアン! 実は……そのチョコレートイベントの噂を聞いて、もしかしてと期待していたんだ。でもダイアンはあまりスイーツ作りはしないから、貰えるかどうか、半信半疑だった。だから嬉しいよ」


 ミハイルは大喜びでチョコレートの入った紙袋を受け取り、「開けてもいい?」と尋ねる。


「ああ、いいよ。でも……リボンが下手くそで」

「リボン……ああ、これか。でもこれはダイアンらしい。ダイアンは昔から、リボン結びが下手だった」

「! ミハイル、あんた……そんなところまで見ていたのかい!?」

「そうだね。……今更だけど、自覚なしでダイアンのことが好きだったんだろうな。そんなところまでしっかり見て、覚えているなんて」

「な……ミハイル、何、恥ずかしいことを言っているんだい!」

「どうして? 今日はこのチョコレートを通じ、お互いの好きな気持ちを伝えあうのだろう?」

「いや、でも」

「ダイアン、照れないでいいんだよ」


 そう言って私の両頬を包み込み、顔を近づけるミハイルは……髪は一か所跳ねているが、限りなくチョコレートより甘かった……!


お読みいただき、ありがとうございます!

次は誰でしょう~!?

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