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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

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ルイーザ様!!

 一月が終わり、あっという間に二月が始まった。


 一月も厳しい寒さだったが、二月のこの日。


 冬の冷たさはあるものの、よく晴れ、沢山の陽射しが降り注いだ。こんな日は寒さを忘れ、私はご機嫌で鼻歌をハミングしながら、洗濯物を取り込んでいた。


「オルリック嬢」


 その声を聞いた瞬間、私の目は輝く。


「ルイーザ様!!」


 振り返るとそこにはサフラン色のドレスを実に上品に着こなしたルイーザ様がいらっしゃる!


(上級侍女に昇進されて以降、ルイーザ様はさらに洗練された気がするわ! サフラン色のドレスは王族や貴族でもかなり裕福ではないと手に入らない。スパイスのサフラン同様、高貴な色。それをこうやって着ることができているのだから……)


 元は公爵令嬢。しかし父親の悪事で平民にまで落ちた。修道院にいた時期もあるが、今は不死鳥のごとく蘇った。王太子の最側近であるスコット筆頭補佐官と婚約され、上級侍女にもなれたのだ。


(大好きなルイーザの栄光は、私の何よりの幸せ)


 ニコニコ笑顔でルイーザ様を見ると、こんな提案をしてくれる。


「オルリック嬢、一週間後の夜。時間を作ることはできるかしら?」

「! 作ります。何としてでも作ります! 絶対に作ります!」


 かなり前のめりで応えると、ルイーザ様はくすくすと笑う。


「ではその姿で厨房へ来てくださいね。時間は二十一時頃。夕食の片付けも終わり、メイドの皆さんもひと段落する時間でしょう?」

「そうですね。わかりました……このメイドの衣装のままでよいのですか?」

「ええ、それで大丈夫です」

「承知いたしました」

「ではまた一週間後にね」


 微笑みと共にくるりと背を向け歩き出すルイーザ様は、まるで女王様のよう! 堂々として、自信にあふれ、そこには背負うことになった過酷な運命の影はない。


(凛としたその生き様そのものの後ろ姿だわ)


 ルイーザ様の美しいお姿をぼーっと見送っていると。


「隙あり!」

「!」


 いつぞやかの日を思い出す。


 ジークがシーツごと私を背後から抱きしめていたのだ。


「ジーク! 何しているんですか!? ミラーの副長官は暇人なんですか!?」

「リエット、年明け早々、僕がどれだけ多忙にしていたか、忘れたのか!? 連日の舞踏会にガラディナー。各国のVIPも外交目的で参加している。その中に不審な輩が潜むことも多い。……まあ、リエットもメイドという立場で目を光らせていたと思うが、ミラーの連中は連日王都中を走り回っていた。それはリエットも知っているだろう!」


 そう言うとジークが腕に力を込める。


「それは知っていますけど……だからってなんで今、こんなことをしているんです!?」

「戦士の休息、というだろう?」

「戦士の休息……?」

「今、こうやって、最愛を抱きしめることで、英気を養っているんだ」

「何言っているんですかね!? 人間を抱きしめるより、睡眠をとり、栄養をとった方がいいと思うんですが」

「リエット。それはいい提案だ。最近、王都で伸びるアイスの店が出来た」

「伸びるアイス!?」

「そう。こんな感じでびよ~んと伸びる」


 シーツと共に開放されたと思ったら、びよ~んという言葉と共にジークに回転させられる。


「もうっ、ジーク! 私で遊ばないでください!」

「遊んでないさ。全力で愛しているんだ」


 今度は向き合った状態で抱きしめられ、ジークのつけるミントの香水に包まれている。


「伸びるアイスを食べ、リエットの膝枕で休む。……完璧な戦士の休息プランだ。よし。早速、今晩食べに行こう」


 爽やかな香りに包まれ、しかも優しく頭を撫でられ、未知の伸びるアイスなるものをちらつかされたら……「わかりました」と答えそうになるが、そこで意識を引き締める。


「伸びるアイスは……いいでしょう。食べたいと思います。でも膝枕は却下です」

「そんな……」

「アイスを食べたら部屋に戻り、寝る準備。ベッドでちゃんと横になり、睡眠をとった方が休息になります」

「でも」

「でも、は認めません。ボルチモア先生に確認しますか? 膝枕とベッドで横になるのでは、どちらが正しい休息になるかを」

「なっ……リエット、何だかリーヴィエル侍女長の相手をしているようだ……」

「それに私、今、メイドとして仕事中なんです」

「リエット~」


 ミラーの副長官とは思えない、何とも情けない声を出すジークから離れ、私は洗濯物に手を伸ばす。


「お。ちゃんとつけてくれているんだな」


 めげないジークは私の左手をとり、今度は甲にキスをする。

 これには心臓がドクンと大きく跳ね上がってしまう。


「リエットの細い指に映える指輪だ」

「……邪魔なんですけど」

「そう言うな。僕の愛が詰まっているのだから」

「さすがミラーの副長官。部下がピンチの時、これを売り払えばいいという配慮、本当に痛み入ります!」

「……いや、まあ……そうなんだが。……多分、リエットなら別の方法で資金調達できそうだが」

「いえ、いざとなったらありがたく、ジークの提案通りで質入れします」

「……え! いや……そう、だな」


 いつもは強気のジークがしょんぼり顔をすると、何だか「大丈夫ですよ」と頭を撫でてあげたくなる。


(頭を撫でる!? 何を考えているの、私は!)


「ジーク、伸びるアイスを食べに行くなら、私、ちゃんと仕事を終えないと!」

「そうだったな。じゃあ、また後で!」


 いつもの調子に戻ったジークは、完璧なウィンクをして宮殿へと戻って行った。


お読みいただき、ありがとうございます!

ちなみにボルチモア先生は真顔で「膝枕一択です」と答えると思いませんか!?

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