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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
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真冬に楽しみを

「テレンス嬢」

「どうしましたか、コルネ伯爵」


 ホリデーシーズンも落ち着いた頃、書斎にいるコルネ嬢が私に声をかけた。


 マルグリット夫人はホリデーシーズンの最中、休みなしでずっと出勤していた。でもホリデーシーズンも終わり、まとまった休みをとることになった。それに合わせ、実家のある地方領へ帰省している。


 夫人のご両親は高齢なので、一年に一度、マルグリット夫人はこの時期に実家へ帰るのがここ数年の恒例なのだという。


(2月に夫人が戻るまで、私がしっかりコルネ伯爵をサポートしないと)


 そう思っていた矢先、コルネ嬢に声をかけられたのだ。


(コルネ嬢の表情。これは……何か発明品を思いついたのではないかしら?)


 ラズベリー色のドレスを着た私は背筋を伸ばし、書斎机に座るクリーム色のドレス姿のコルネ嬢と向き合う。


「これから社交シーズンに入り、舞踏会に晩餐会、ガラディナーも増えるでしょう。でもそれはすべて言ってみれば公務に近い。私、もう少し個人的な楽しみがあったらと思っているのです」

「……個人的な楽しみ……と申しますと、誕生日のようなものですか?」

「そうね。それが一番近いかもしれないわ。あのね、テレンス嬢」


 そこでコルネ嬢が私に打ち明けた話は、真冬の寒さを和ませるようなとっても素敵なプランだった。


「それはとても面白いプランだと思います」


 率直に感じたことを口にすると、コルネ伯爵はこのプランの弱点をあげる。


「でも貴族がメインの楽しみになってしまうわ。本当は平民のみんなも楽しめるようなイベントにしたいのだけど……」

「ではこうしてはどうでしょうか。王都にある販売店にその二日間は割引販売を行うよう要請するのです。協力してくれたお店には、コルネ伯爵の名で感謝状を贈り、ある程度の協力金を渡せば……かなりのお店が協力してくれると思います」

「それは……名案に思えるけれど、私の感謝状……殿下の感謝状なら大喜びで協力してくれそうだわ。でも私では」

「コルネ伯爵」


 私が語気を強めると、コルネ嬢は背筋を伸ばし「何かしら?」と尋ねる。もうその立場はかつての公爵令嬢だった私より上になっているのに、今だコルネ嬢はここぞという場面で、私に尊敬のまなざしを向けてくれるのだ。


(これをされると、私は俄然やる気になってしまうわ)


 コルネ嬢に合わせ、私も表情を引き締めて伝える。


「コルネ伯爵はご自身の価値を正しく理解された方がいいです」

「え……」

「コルネ伯爵は、“伯爵”ではありますが、王太子殿下の婚約者なのです。未来の王妃。多くの者が、コルネ伯爵のことは、未来の王妃として見ています。さらにコルネ伯爵が考案した数々の品は、平民から貴族まで、みんな知っていますし、恩恵を受けている方が多いのです。コルネ伯爵の活躍を期待している人は大勢います。コルネ伯爵の感謝状は価値あるものになる――それは自覚なさった方がよろしいですわ!」


 私の言葉に「えええ、そうなのかしら」という表情をするので「コホン」と咳払いすると、コルネ嬢は「そ、そうですよね」と微笑む。


「ではテレンス嬢。王都にあるお店をピックアップして、リスト化してください。そして協力を要請する手紙を書いてくれるかしら? 協賛金は、いくつかの宝飾品の売却で、用立てることはできる?」

「もちろん可能です。今シーズンのドレスと宝飾品の用意は終わっていますから、昨シーズン以前のアメジスト、ガーネット、トパーズなどの半貴石、流行遅れとなった宝飾品を売却すれば、かなりのまとまったお金になります」

「よかったわ。ではそれで進めてくださる?」

「かしこまりました。……手作りに挑戦いただく女性たちにも声をかけておきます」

「そうしてもらえると助かるわ。貴族令嬢だけではなく、使用人のみんなにも声をかけてください。あ、あと材料の調達も」

「お任せください。元々この時期は舞踏会や晩餐会に備え、食材・スパイス・調味料の調達は倍以上行っているので、食糧庫は潤っています。そこにプラスする形で調達を行いますね」


 こうしてコルネ嬢の、みんなが冬を楽しむ新たなるプランが動き出す。


 私はその実現のため、各種手配をぬかりなく行う。


(マルグリット夫人の不在でもちゃんとこなしてみせますわ。せっかく上級侍女になったのですから。ここは頑張らないと!)


 でも私が頑張るまでもなかった。すでにコルネ伯爵の人気は高い。感謝状&協賛金が出るとわかると、材料の調達の算段が立つお店は喜んで協力を表明。庶民が購入しやすいよう、少量格安販売も約束してくれた。


 この結果をコルネ嬢に報告すると「よかったわ!」と大喜び。


(ひとまず前段階の準備はできたから、次のステップに進むわよ)


 次のステップは、手作りに挑戦してくれる女性たちを集めること。でもこれは問題なくクリアできるはず。それより厨房の利用について料理長に相談し、パティシエにも協力を仰がないと……。


 こうしてすべての手配が完了していく中、私は大切な親友に声をかけることを思いつく。


お読みいただき、ありがとうございます!

リエットとジークの物語を進めるため

ちょこちょこ更新を行おうと思います。

少しずつ二人の距離を縮めていくので

まったりお付き合いいただけると嬉しいです~

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