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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

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二人の姉

 一月三日。


 前世では、年始の三が日はまだお正月ムードが漂っていた。


 でもこの世界は元日こそニューイヤームードにあふれているが、二日からマーケットが開き、商業活動は活発に戻る。つまりお休みムードは元旦のみで、翌日から通常稼働。三日ともなると、街の往来は平時と変わらなくなる。


 その一方で、宮殿内ではまだ少しまったりムードが残っていた。


 王族の公務も手紙や書簡の確認、王都へ来ている地方領の有力貴族との昼食やティータイムをゆるっとこなす。そして私は今日ティータイムで、ロンド公爵の嫡男の婚約者、テッサリア辺境伯の嫡男の婚約者とティータイムを過ごすことになっていた。


 ロンド公爵の嫡男は、一年半に渡る遊学に婚約者を伴っていたが、ついに帰国。私が婚約者とティータイムをする間、レグルス王太子殿下とお茶をすることになっていた。


 テッサリア辺境伯は、北部の国境沿い一帯という広大な領地を持ち、北の要、北部防衛の拠点として最重視されている。何せ隣国は(いにしえ)の昔にはアトリア王国と熾烈な戦争を繰り広げていた国なのだ。テッサリア辺境伯が王都に姿を現すことは少ないが、五年に一度、年始に陛下に会いに来ていた。


 つまりテッサリア辺境伯の嫡男は、父親と共にこの時間、国王陛下と謁見。その婚約者は私とお茶をとなったわけですが!


 ロンド公爵の嫡男の婚約者ベラ・ジョセフィーヌ・コルネ。


 テッサリア辺境伯の嫡男の婚約者グロリア・ザラ・コルネ。


 絶世の美女と称される私の二人の姉である。


(私が宮殿勤めを始めた時、レグルス王太子殿下付きの侍女となった時、伯爵位を賜り、殿下と婚約した時。二人の姉は手紙を送ってくれていた。そして婚約式にも出席してくれたが、あまりにも来賓が多く、二人の姉とじっくり話す時間はなかった。ゆえにティータイムのような形で会うのは……何年ぶりかしら?)


 二人の姉は社交界デビューして早々に婚約が決まっている。ベラお姉様は公爵夫人とも仲が良く、公爵邸に顔を出すことが多かった。気付けば侯爵邸にいる時間が少なくなっていた。私も宮殿勤めを始め、めっきり顔を合わせる機会が減ったところで、婚約者と共に遊学へ出てしまったのだ。そしてグロリアお姉様は、婚約と同時に辺境伯領に向かったのは、辺境伯夫人が病弱だったから。看病と結婚式まで元気でいられるか――という特殊な事情により、結婚前だったがグロリアお姉様はテッサリア辺境伯の屋敷で既に暮し始めていたのだ。


(姉妹とはいえ、久しぶり会うとなると、緊張するわね……)


「コルネ伯爵、衣装はこちらのカナリア色のティーガウンでよろしいですか?」


 テレンス嬢に問われ、もうティータイムが近いことにさらにドキドキしてくる。


「そ、そうね。そうしてちょうだい。ベラお姉様はデルフィニウムのような美女と言われ、青や紫のドレスを好むの。グロリアお姉様は薔薇のような美女と称され、赤やピンクのドレスでしょう。二人と被らないとなると、私はいつも黄色なのよ」

「なるほど。姉妹で色分けされていたのですね」


 なんだか信号みたいなカラーリングと思うのは、前世記憶がある私だけで、テレンス嬢やルベール嬢はテキパキと衣装を整えてくれる。


「髪飾りはこのゴールドのラリエットにしましょう」とルベール嬢が言い、「殿下からのプレゼントのこちらのイヤリングが今日の衣装に会うと思いますわ」とテレンス嬢が言って宝石トレイに用意してくれたのは、レグルス王太子殿下が“青虫”なんて言っていたが、国宝級のエメラルドのイヤリングだ。


 準備を整え、王族が私的に利用する王宮にある喫茶室へ向かうと――。


「「アンジー!」」


 既に着席していた二人の姉が椅子から立ち上がる。

 私の予想通りで、ベラお姉様はデルフィニウムのような青のデイドレス、グロリアお姉様は薔薇のようなベルベッドのデイドレスを着ていた。


(まさに社交界を賑わせた美女二人! 華があるし、存在感が半端ないわ!)


 そんな二人は私の所へ駆け寄ると……。

 同時に私をハグするので、二人のつけている香水、そしてそのグラマラスな体にもみくちゃ状態になる。


「もうアンジーったらすっかり綺麗になっちゃって!」

「殿下の愛で本当に可愛くなったわ!」

「末っ子であんなに小さかったアンジーが婚約したなんて!」

「しかも相手が殿下だなんて!」

「「もう、本当にビックリだったわ!」」


 相変わらずのマシンガントークで、私は「あははは」状態。


「コルネ伯爵、紅茶の準備ができました」


 テレンス嬢の助け舟で、二人の姉のハグから逃れ、私はホストとしてティーカップに紅茶を注ぎ、用意したセイボリーやスイーツを姉に勧める。


「まあ、とっても美味しそうね!」

「宮殿のパティシエや料理人が作ったものだから、絶品よね」

「「いただきます!」」


 二人の姉はパクパクとセイボリーを口に運び、「美味しいわ」「味付けが繊細ね!」と喜んでくれる。その様子を見て、安堵していると……。


「でもアンジーは宮殿勤めをして正解だったわね」


 ベラお姉様がスコーンにクロテッドクリームを塗りながらそう言うと、グロリアお姉様も「それは完全に同意だわ」と頷く。


「もしかして宮殿勤めをしたから、殿下と知り合い、婚約できたから、ですか?」


 思わず私が尋ねると、二人の姉は「「違うわよ!」」と首を振る。


「アンジーは小動物みたいで可愛いわ」


 グロリアお姉様がそう言うと、ベラお姉様もこう応じる。


「そうよ。私たちとは違う意味で愛らしいの。でもアンジーは私たちと似ていない自分は浮いている、なんだか違うって……自己否定がひどすぎるわ。こんなに可愛いのに!」


 これには「!」と驚くことになる。


「王都の貴族もバカばっかりよ! アンジーの可愛さがわからないのだから」


 ベラお姉様が憤慨すると、グロリアお姉様も強い同意を示す。


「そうよ。アンジーと私たちを比べる必要なんてないのに!」


 そこでベラお姉様がしみじみと告げる。


「アンジーは自ら宮殿勤めを始めることで、自分の良さを最大限に発揮できたのよ。社交界なんて、見た目で判断されてしまう。でもアンジーはいろいろと考案し、殿下や陛下を喜ばせた。上面ではない、自分の本質で勝負して、今があるの。姉として本当に誇らしいと思うわ」

「ベラお姉様……!」

「だからね、ベラとも手紙でよく話していたの。アンジーは王都の貴族令嬢がたどる、社交界で婚約者探しをして、適当にどこかに収まるような人生を歩まないでよかったね、って。宮殿勤めを始めたのは大正解だったって。アンジーの良さが存分に発揮され、そんなアンジーだから殿下も好きになってくれたと思うの」

「グロリアお姉様……!」


 二人の姉からしたら、私は出来損ないの妹……そう思われていると、長年考えていた。


 でもこちらも両親と同じように、私の大いなる勘違いだった。二人の姉は私の良さにちゃんと気づいてくれていたのだ!


「以前のアンジーは、私たちがいくら褒めても、頑なに『そんなことないです!』って謙遜ばかりだったわ」

「グロリアの言う通りよ。本気でアンジーのことを褒めていたのに。悲しかったわ〜」

「それは……申し訳なかったです、お姉様……ごめんなさい!」

「謝る必要はないのよ、アンジー!」

「そうよ。わかってくれたなら、それで十分よ。ね、グロリア!」

「ええ、その通りだわ!」


 美女から「可愛い」と言われても「またまた、気を使わなくていいですよ」と思っていたわけだ、私は。


(どこかで自分と姉の器量を比べ、気後れしていたのは事実だわ)


「でも今は違うわよね。自分の価値が強く認められたのだもの。自信もついたはずよ。それに殿下の愛でアンジーも丸くなったのかもしれないわね!」

「ふふ。本当にアンジーは小動物みたいで可愛いわ。何より、素直なアンジーが一番よ!」


 絶世の美女姉妹と言われ、社交界でちやほやされていた二人の姉は、あまりにも眩しすぎて、姉妹なのに遠慮しまくっていた。でも二人の姉は……美女な上に性格も良かった!


(そのことに今更になって気づくなんて……)


 ちょっと遅かったかもしれない。でも新年早々に二人の姉の真意を知れたことは大きい。


「それで、殿下はどんな方なの?」とグロリアお姉様。


「恋の話はウェルカムよ! 氷の殿下が甘く蕩ける話を聞かせてちょうだい!」


「もう、ベラお姉様ったら……!」と私は赤くなる。


 一月三日のティータイムは、まるで女子会のようなノリで盛り上がる。


 そして最後まで笑顔の絶えないひと時になった。



お読みいただき、ありがとうございます〜

ずっと書きたいと思っていた二人の姉

美女な上に性格良しで最高\(^o^)/

そしてまさにティータイムでの更新でした♪

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