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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

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それぞれのホリデーシーズン⑫12/29

 十二月二十九日。


 今年もあと三日となり、鍛冶工房の忙しさはピークを迎えていた。いつもより早く起き、火入れをして、早朝から作業が始まる。そこに使いの者が来た時、てっきり何かの修理を依頼されるかと思ったら……。


「宮廷医のボルチモア先生からの手紙です」


 そう言われた時は思わず「へっ」と声が漏れてしまった。なんだろうと思い、手紙を見ると、今日の昼食を一緒にとりたいと書かれている。


(どうしたんだろう、ミハイル? 日中は職務に集中で、会いに来るなら夜なのに。そういえば昨晩、ミハイルが訪ねて来なかった。王宮の方で少し騒ぎがあったようだけど……。それと何か関係している?)


 考えてもわからない。それにあと数時間後に会えば、その謎も解けそうな気がする。


 手紙を届けてくれた使いの者に温かいミルクを出し、返事を届けてもらうことにした。


 ◇


 ミハイルがお昼に来るとわかったから、この日のランチは奮発だった。


 いつも細切れのベーコンはぶ厚くスライスして、ステーキ風に。厨房で白パンをもらい、昨晩の残りの根菜スープにはソーセージも投入。さらに厨房のパティシエに特別にチョコレートも貰った。


「ダイアン、今日は誰か誕生日じゃったか?」

「まるで聖なる夜の豪華なご馳走再びみたいじゃ!」

「早く食べよう、ダイアン!」


 鍛冶工房の爺さまたちは、もうこの料理に涎がだらだら。ミハイルの到着があと一分遅れていたら……食べ尽くされていただろう。


 だがそうなる前にミハイルがやって来て、みんなで「いただきます」となる。


「それでミハイル、どうしたのさ? 例年この時期のミハイルは、王族の健康状態を気にして、王宮にこもりきっきりだった。こんなふにわざわざランチで足を運ぶということは……」

「昨晩、暗殺者に襲われたんだよ、僕」

「なんだって!」

「僕は宮廷医で王族の健康状態を把握している。敵は、王族の既往歴や診療記録をまとめた診療簿を盗み出そうと考えたようだ。その情報があれば、病気を誘発するような食べ物を暗殺の道具として生み出すこともできるから」

「なんてずる賢い奴らなんだ!? ミハイルがここにいるということは! その悪党は捕らえたんだろう? だったらそいつらに、あたしがこの特大ハンマーで一発お見舞いしてやるよ! あたしの大切な人に、手を出すんじゃないって!」


 あたしは立ち上がり、手近にあったハンマーを握りしめる。


「おう、ダイアン、よく言った! 殴ってやれ!」

「殴るだけでは甘いぞ! 拷問器具を作ろう!」

「そうじゃ! とびっきりの拷問道具を作り、殿下へ届けよう!」


 爺さまたちは賛同どころかもっと恐ろしいことを言い出し、ミハイルが立ち上がり、両手でみんなを制す。


「皆さん、落ち着いてください! 敵は既に満身創痍で、すべて白状しました。マリーナ王国の騎士と侍女に変装していましたが、その正体はマリーナ王国とはまったく無関係、暗殺組織ギヌウスのメンバーだったのです。ただ、彼らは組織の指示に従ったというより、レグルス王太子殿下に復讐をしようとしていただけでした。昨年の秋、ギヌウスに殿下は襲われたでしょう? 我々は多くの護衛騎士と警備兵を失いましたが、コルネ伯爵の援護もあり、殿下はすべてを返り討ちにされた。その時、倒されたギヌウスのメンバーの弟と姉だったのですよ。武術では殿下に敵わないと思い、何らかの毒を使おうと考え、弱点を探るため、僕を襲ったわけです」


 これを聞いた爺さまは「あくどいのう」「こっちだって大勢被害者がいるが、復讐などしとらんのに」「復讐、復讐とやっていたら、きりがない。馬鹿な奴らじゃ」とそこは年長者らしい意見を述べる。


「犯人のスパイも逮捕されたのですが……僕は驚いたことがあるのです」

「なんじゃ」

「言うてみぃ、ミハイル?」

「聞いてやるぞ」

「襲われた僕を助けてくれたのは……オルリック嬢と……ミラーの副長官だったんです! 驚きましたよ!」


 これには「ああ、そうか」「そうじゃろう、あの二人は強い」「うん、うん。あの二人ならギヌウスの相手もできる」と応じる。


 爺さまたちはオルリック嬢とジークフリート卿の模擬戦を既に見ているから、その強さを知っていた。ゆえに薄い反応になってしまい、それを見たミハイルはあたしを見る。


「やっぱりあの武器、ダイアンや爺さまが?」

「ミハイルは何を見たんだい?」

「ナックルダスターと、伸縮自在の金属製の棒の武器だ。二つともオルリック嬢が使っていた」

「ああ、その二つはこの工房で作ったもんだよ。金属製の棒の武器は、警棒っていうんだよ。コルネ伯爵の考案品さ。来年から警棒は量産され、王都警備隊の装備品になるんだよ」


 あたしの話を聞いたミハイルは「そうなのか……」とただただ驚愕している。


「オルリック嬢が諜報部に所属していることは、(おおやけ)にされていない。彼女はさ、宮殿内でコルネ伯爵を守るのが任務なんだよ。でもあの子、変わった子なんだ。コルネ伯爵がみんなのことを大切にしている――それは周知の事実。オルリック嬢も理解している。だからコルネ伯爵以外にも危険が及ばないか。あの子は気にしてくれているんだよ。だからミハイルも助けられた。でもまあ、今回はジークフリート卿が一緒だったということは……。ギヌウスの潜入に気づき、警戒していたのかもしれないねぇ。あの二人が組んだら怖いものなしさ。ここだけの話、黒の処刑人と言われ、首斬りジャックと恐れられ、カタコンベの番人になったミノタウロスみたいな大男。こいつから武器を手放させ、膝をつかせたのは、あのオルリック嬢なんだから! あの子は強いよ!」


 これにはミハイルは「えええええ!」と、もう目が飛び出しそうなほど、驚いている。


「でも全部、秘密だからね。宮殿にいるガーディアン(守護天使)は正体不明。でもピンチの時には必ず助けてくれる。頼もしい存在さ」


 ミハイルにそう言いながら、今回、警棒の修理依頼が来ていないことに安堵する。


 黒の処刑人との戦闘で破損したと聞き、強度をあげ、耐久性が出るように改良していた。


(どうやら今回は壊れることもなかったんだね)


 武器が無事なのは持ち主が元気な証拠。


(オルリック嬢、引き続き頑張りなよ!)


 心の中でエールを送った。


お読みいただき、ありがとうございます!

オルリック嬢、ガンバレ〜

今年もいよいよ押し迫って来ました!

明日は昼と夜の2話更新でまいります~☆彡

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