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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
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それぞれのホリデーシーズン⑧12/26

「オルリック嬢」

「はい、何でしょうか、メイド長」


 十二月二十六日。


 いつも通りで早朝に目覚めると、私は乗馬の練習を行った。ジークは実家からの要請で狐狩大会に出席する必要があり、二十五日の午後から王都を離れていた。まさに今頃、狩猟をしていると思われる。つまりジークによる特訓はないので、自主練として乗馬をしたわけだ。


 それを終えるとメイド服に着替え、食堂で朝食。たっぷり腹ごしらえをして、メイドたちの待機部屋兼休憩室に向かうと……。


(今日は何だか人の数が少ないわね)


 自分でブラックティーを入れ、飲んでいると、メイド長がやって来た。そこで私を見て「おや?」という顔になる。


「今日はBoxing Dayだよ」

「!?」

「ほら、コルネ伯爵と陛下から、ギフトも届いているだろう」


 そう言うとメイド長は、部屋の角にある衝立の方へ向かい、四角い箱と丸いボックスを手に私のところへ戻って来る。


「こちらの四角い箱が陛下から。高級ウールの膝掛けと心づけ(現金)が入っていたと、他の者たちが言っていたよ。この丸いボックスはコルネ伯爵からで、大変香りの良い石鹸と香水、ふかふかのタオルが入っているらしい」

「!? そうなのですね。これは……臨時のボーナスですか!?」

「ああ、その通り。Boxing Dayは雇用主が使用人にボックスギフトを贈り、休暇を与える日。今日は多くのメイドが休みだ。ほら、あそこに掲示してあるシフト表にも、八割のメイドが休みだろう? オルリック嬢も休みになっているじゃないか。朝食やギフトを受け取るためにここへみんな来るけど、それが終わったら休暇を楽しむ」


 これには「そうだったのですね……!」となるのは仕方ない。私は新米メイドで前提知識が乏しかった。かつ諜報部との二足の草鞋で動いていると、休暇の概念に疎くなっている。


(先日、南の島への視察もあったから、もうそんなに休めないと思っていたら……。そうか。Boxing Day……)


「明日から一月二日までは休みはなしだからね。今のうちに休むといいよ。はい、お疲れ様!」


 メイド長はそう言って私に二つのギフトを渡すと、他のメイドに声をかけ、同じようにギフトを渡している。


 私は「休み――」と呟き、一旦部屋に戻ることにした。


 ◇


 部屋に戻った私はまず受け取ったギフトを開封し、大切にしまうことにした。ただコルネ伯爵がくれた香水は、本当にいい香りで早速つけたくなる。


(香水をつけるなら、メイド服から着替えないと)


 クリーム色のドレスに着替え、香水をつけて満足した私は「さて」と考えることになった。


 ルイーザ様たちコルネ伯爵付きの侍女たちは、今日も普通に仕事をしている。というのもコルネ伯爵と王女たちは、マリーナ王国の姫君たちの観光案内をすることになっており、今頃は朝食を終え、出発の準備を始めているはずだった。留守番となるレグルス王太子殿下は、マリーナ王国の大使と会談。本来、この時期は目立つ外交はお休みとなるが、七人も姫君が滞在していることで、王族は大忙しだった。


 そして確認したところ、Boxing Dayでギフトと休みをもらえるのは、使用人の中でも下級の者たちで、上位の立場の使用人の多くがギフトを受け取り、休みはなしで働くことが多いらしい。


(せっかくの休みなのにルイーザ様と過ごすことができないわ……)


 それでも着替えをして素敵な香水をつけたのだ。部屋にひきもっているのはもったいない気がする。


 ということでいつもの巾着袋を手に部屋を出た私は……。


「こんにちは、ダイアンさん」

「おや、オルリック嬢、今日は可愛らしいドレスを着ているじゃないか。もしかしてジークフリート卿とデートかい?」


 スモークブルーのチュニックに、鍛冶作業用のエプロンをつけ、ハンマーを手にしたダイアンがこちらを振り返る。手持ち無沙汰で鍛冶工房へやって来ていた。


「デート!? ジークは狐狩へ行っています!」

「ああ、そうか。今日はBoxing Dayだったね。毎年十二月二十六日は貴族たちは狐狩の日だ。ほとんどの貴族が王都郊外で狐狩をしているはずだよ」


 これには「なるほど」だった。我がオルリック男爵家は貴族としての歴史が浅い。よってBoxing Dayの存在も私はわかっていなかったし、我が家で行われていた記憶はなかった。それにこの時期に狐狩に父親や兄が行っていた記憶もない。


(きっと有力貴族たちがBoxing Dayで狩猟をしているのね)


 私が納得したところで、扉がノックされ、顔見知りの料理人が顔を覗かせた。彼は私を見ると「!」となり、ダイアンと同じような反応をする。


「おや、オルリック嬢、今日はおめかししてお出かけか?」

「! その、まあ……はい。一人で街を散策しようかと」

「そうなのか。だったらセントジョセフィンの三丁目のパン屋に行くといい。俺の実家で、ちょっとばかし高級だけど、美味しいパンを売っている。俺の名前を出せばパンの一つはサービスしてくれるはずだ」

「! 行ってみます! ありがとうございます!」

「おう、気をつけてな! あ、ダイアンさん、この鍋なんですけど、シェフが持ち手のところがはずれそうだから、修理してもらえないかって」

「ああ、そりゃ修理した方がいいね。そこの帳簿に名前とか記入しておいてくれ。今さ、立て込んでいるんだよ。いつもより時間がかかるかもだけど、いいかい?」

「忙しいところ、すまないな」

「おーい、ダイアン、この前頼んでいたやつ、できたかー?」


 次から次へと鍛冶工房には人が訪れる。


 料理人も忙しいだろうが、ダイアンも、鍛冶工房のお爺さんたちもとても忙しそうにしていた。あちこちで大掃除が行われ、家具の蝶番が壊れている、飾っていた剣が錆びていた……いろいろな物が鍛冶工房には持ち込まれているようだ。


(邪魔をするわけにいかないわね)


 私は鍛冶工房を後にした。


お読みいただき、ありがとうございます~

今日頑張れば明日から年末年始休み!!!!!

もう1話更新頑張ります♪

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