表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

159/194

大きなヤシの木の下で

「ジーク、もう無理」

「ああ、今日はこれで終了でいいだろう」


 そこでジークはヤシの葉で出来た木陰にストンと腰を下ろし、その長い脚を伸ばす。


 白シャツは腕まくりし、胸元は熱を逃すためか。

 ボタンは三つほど外されている。そこには普段見えない、彼の胸筋が見え隠れしていた。


 しかも今、私とのナックルダスターの訓練を終え、彼にしては珍しく、呼吸が乱れている。


 上下する胸筋を見ていると、なんだかソワソワとしてしまう。


 視線を逸らし、ジークのそばに腰を下ろす。


 日陰の砂浜は素肌に心地いい。見上げるとヤシの葉の隙間から、眩しい青空が見えている。


「今日のリエットも激しかったな。あんな動きをされたら、さしものジーク様もお手上げだ」


 ジークがふと口にした言葉。それが……なんだか大人の情事の話をしているようで、訓練後のバクバクしていた心臓が、別の意味で鼓動しそうになる。


「!」


 水袋を手に、ジークが喉を鳴らしている。

 喉仏が上下する様子が、とんでもなく艶めいて見えてしまう。


(もう、この南の島に来てから、私、何だか変だわ!)


「はーっ。生き返る! リエットも飲むだろう?」


 水袋は荷物になるから、大きものを一つ、ジークが持ち歩いてくれている。それを二人で順番に飲むのだけど……。


 ジークが飲んだ後の水袋。飲み口に直接口はつけていない。彼はいつも少し口から浮かせた状態で器用に水を飲むことが出来るのだ。


(ち、違う。だから間接キスなんかじゃない!)


「どうした、リエット?」

「何でもないです!」


 じっと水袋を眺めてしまったので、ジークが不思議そうにこちらを見ていた。


「仕方ないな。リエットはお姫様だからな」

「……はい?」

「僕が飲ませてあげよう」

「!?」

「口移しで」

「!」

「おい、こら! 水を粗末にするな! 冷たい!」


 ジークが「口移し」なんて言うから、それを想像した私は全身が燃えるように熱くなり、頭は沸騰しそうだった。そんな自分に驚き、水袋を振り回すと、中の水が盛大に飛び散り、ジークを濡らしていた。


「こらこら、リエット! これぐらい、いつも通りで受け流さないと」


 そう言いながら、ジークは濡れたバターブロンドの髪をかきあげる。


「……!」


 心臓が止まりそうだった。

 濡れた前髪を手で後ろに流すその仕草。

 水がかかり、白シャツの一部が肌にはりつき、健康的な肌が透けて見えている。その様子はとんでもなく男の色気を感じさせたのだ。


「あー、結構濡れたな」

「……ごめんなさい」

「!? どうした、リエット? らしくないぞ!」


 そこでジークがくしゃっと私の髪を撫でる。

 慣れたジークの行動なのに、胸がキュンキュンして死にそうになっていた。


(私、この南の島で奇病にかかったのかもしれない……!)


「濡れたついでだ。たまには泳ぐか」

「!」


 そこでジークはすくっと立ち上がり、着ていたシャツを脱いでしまう。


 脱ぎ捨てたシャツの下から現れたのは――。


(や、やっぱり! 想像通りだったわ! 美術館で見た、神話の神々の彫像そのまま! 鍛え上げられ、引き締まった見事な筋肉。すごい!)


 妖艶さから一転、ジークの健康美は拝みたくなるもの。


「あっ……」

「あ、ごめん」


 そこでジークが砂浜に置いたシャッを手で掴もうとするのを制してしまう。


「なんであやまるんですか、ジーク!」

「いや、その……ほら。火傷の痕とか、切り傷が塞がって肉が盛り上がり、ミミズ腫れみたいになっていて……見苦しいだろう?」


 そう言いながらジークが、私の手をシャツから外そうとする。


「そんなことないです」

「!」


 ジークの手の動きが止まる。


「これは全部、ジークがミラーの副長官になるまで重ねてきた、戦功の証ですよね。ジークだって最初から強かったわけではない。沢山の戦闘を経て、今のジークがあるんです。これは恥じるものではなく、誇るべきことかと。少なくとも私は、ジークの体を見て傷だらけとは思いません。沢山の勲章をまとっていると思うだけです」

「リエット……!」


 感極まったジークが、いきなり私に抱きついた。

 これには私は驚きでフリーズしてしまう。


(ジ、ジークのす、素肌が! 素肌が!)


 ジークの肌は、勲章がないところは滑らかで触れ心地がよく、そして完璧に引き締まっていた。その肌の先にある筋肉を思うと、もう心臓の高鳴りが止まらない!


「リエット、キスがしたい!」

「はいっ!?」

「責任はとる。一生リエット一人だけを愛すると誓う!」

「な、ジーク……!」


 気持ちが昂った時のジークは、猪突猛進。婚約も交際もすっ飛ばし、教会へ駆け込もうとする熱血漢。


「落ち着いて、ジーク!」

「無理だ。好きなんだ、リエット!」


 喘ぐような声のジークに、さらにぎゅっと抱きしめられてしまう。


 でも……嫌ではなかった。


 こんなふうに求められることに、喜びを感じている。


 腕から力が抜け、瞼がゆっくりと閉じていく。


「!」


 そこでいきなりジークの腕に力が入り、強引に抱き寄せられる。


(!? え、いきなりキス以上!?)


 焦った瞬間にゴンと物凄い音がする。


「えっ」


 頭の中で「敵襲!?」と思ったが――。


「南の島、らしいな。ヤシガニという強力なハサミを持つカニは、稀にヤシの実を切り落とすというが……このタイミングで……。だが大丈夫だ。常に周囲の警戒を怠らないジーク様により、危険は回避できた」


 ジークの言葉通りで、すぐそばに大きなヤシの実が落ちていたのだ……!


(これを回避できるって! ジークは何者なの!? しかも頭の中は、別のことでいっぱいだったのではないの!?)


 ミラーの副長官の底なしの強さには、畏怖の念さえわき上がるが――。


「もう大丈夫だ、リエット。続きを」

「何をのたまっているんですか! 海にでも飛び込んで、頭を冷やしてください!」

「えーっ!」


 常夏の島の太陽が、マリンブルーの海をキラキラと照らしていた。


お読みいただき、ありがとうございます!

書き始めると止まらない……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

●[四半期]推理(文芸)2位●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ