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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

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彼女の喜び

「アルラーク隊長……いや、ウォーデン男爵、でしたかな。こんな華やかな場では、気づまりではないかね」


 実に慇懃無礼な態度をとるのは、コランダ伯爵!


 アルラーク隊長を完全に見下すその態度に、私はイラッとしてしまう。


 彼は格下の貴族、特に今回のように爵位を授けられた新興貴族には、マウントをとりたがる。というのも自身の家門の歴史が長いからだ。


「ああ、でもお仲間と一緒でしたか。ルベール嬢、君は侯爵令嬢なのに伯爵の侍女をしているんだったね。もしや家計が相当苦しいのかな」


 コランダ伯爵からすれば、私は格上の令嬢のはずだが、こんな物言いになる理由は二つ。


 まず、王族の侍女を侯爵令嬢がするなら、それは名誉である。ところがコルネ伯爵は、王太子殿下の婚約者ではあるものの、現状その身分はあくまで伯爵。侯爵令嬢からすると、格下の伯爵の侍女をやっている……ということでバカにしたわけだ。


 次に、ルベール侯爵家の家門としての歴史は浅い。コランダ伯爵からすると、今回爵位を授けられたアルラーク隊長もルベール侯爵家も、貴族としては赤ん坊も同然。ルベール侯爵家を格上とは思っていないのだ。


 というわけで思いっきり嫌味を言われたが、ここで黙っていては女が廃る。


「コラ……」

「コランダ伯爵」


 それまでテーブルマナーを気にして、完全にこの会場の雰囲気に呑まれていたと思ったアルラーク隊長が、低温だが凄みのある声をあげた。


 これには私もビックリだが、コランダ伯爵も驚いている。


「伯爵の経営されているワイナリーの葡萄は、昨年から不作続き。それなのに羽振りがいいのはなぜなのでしょうか」

「! そ、それは……ワ、ワインというのはだな、ヴィンテージと言われるものがあり、当たり年のものは重宝される。そういったワインは市場で高く売れるのだよ。我が家は代々ワイナリーを経営をしており、ヴィンテージワインを沢山貯蔵しているんだ。たとえ不作が続こうと、それを売ればなんとかしのげる!」


 そうコランダ伯爵は唾を飛ばしながら、熱弁しているが……。


(どう見ても怪しいわ。とっても焦っている感じがするし)


 一方のアルラーク隊長は表情を変えず、そのアクアグリーンの瞳を細め、ゆったりとした口調で話し出す。


「なるほど。ヴィンテージワイン、ですか。それは確かに納得です。特にオールドヴィンテージともなると、百年近く前のワインもあり、その市場価格は相当なものですよね」


 アルラーク隊長の言葉に、コランダ伯爵が眉をしかめる。


(コランダ伯爵は完全にアルラーク隊長のことを見下しており、貴族の嗜好品でもあるヴィンテージワインのことなど、知らないと思ったのだろう。ところがアルラーク隊長はヴィンテージワインのことを知っていた。それどころかオールドヴィンテージワインのことまで知っていたのだ。これにはコランダ伯爵としては「何!?」だったのだわ!)


 狡猾なコランダ伯爵が苦々しい表情をしているのを見ると、「ざまぁみなさい!」と思ってしまう。何より、アルラーク隊長が貴族の嗜好品であるワインについても詳しそうであると分かり、尊敬の念が深まる。


(今回、爵位を授かるにあたり、ワインについて勉強したのか。それとも以前からワインについての造詣が深かったのか。いずれにせよ、アルラーク隊長、ナイスですわ!)


 心の中で拍手喝采していると、アルラーク隊長がなんと追い打ちをかけたのだ!


「自分は今回爵位を賜ったばかりのひょっこです。ゆえに歴史ある家門のコランダ伯爵が、ついからかいたくなる気持ちは分かります。ですがこちらにいるルベール嬢は侯爵令嬢です。貴族は序列を重要視されるのですよね? そこはきちんと彼女に敬意を払っていただきたいです」

「なっ……貴様、生意気な!」

「生意気。そうですね。まだひょっこの貴族が生意気を申し上げました。ですが自分は貴族である以前に、王都警備隊の中央部隊で隊長を務めさせていただいています。……最近はレグルス王太子殿下の指示で闇カジノの摘発に力をいれていることは……ご存知でしたか、コランダ伯爵?」


 アルラーク隊長が鋭い一瞥をコランダ伯爵に向けた瞬間。コランダ伯爵の頬が引きつった。


(……この反応は……もしかするとコランダ伯爵は闇カジノに関わっているのでは!?)


 無言になったコランダ伯爵にアルラーク隊長は優雅に微笑む。


「自分も人間ですから、大切に想う人の名誉が汚されたら、頭に来ます。もし捜査線上に侮辱した相手の名が浮上したら……徹底して尻尾を掴みたいと思ってしまうでしょうね。捜査には当然ですが、熱が入るでしょう」


 コランダ伯爵が顔面蒼白になったところで、チリン、チリンと鈴の音が聞こえる。侍従長が登場し、厳かに国王陛下夫妻、レグルス王太子殿下とコルネ伯爵、王女たちの入場を伝えた。


お読みいただき、ありがとうございます!

強盗の時といい、今回といい

いざとなるとキリッとするアルラーク隊長!

ぜひ隊長にナイス指マークでエールを☆彡

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