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令和2年12月12日(土)「お見合いパーティー(自称)」島田琥珀

『第1回親友作るぞお見合いパーティーを開催します!』


 イヤホンから流れてくる原田さんの声の大きさに音量を下げた方がいいかなと思いながらわたしはスマホの画面を見つめる。

 ビデオ会議システムを使った”お見合い”には原田さんと鳥居さんを除き6人の参加者がいた。

 よく集めたものだと感心する。

 わたしも友だちは多い方だが、こんなイベントに誘う勇気はない。


 原田さんの長口上の挨拶が終わると、まずは自己紹介をすることになった。

 トップバッターとして指名されたのはわたしだ。


『島田琥珀です。ダンス部で副部長をしています。友だちは多いんやけど、親友と呼べる人はいません。よい出逢いがあればいいなと思い参加しました。よろしくな』


 正直、これで親友が見つかるとは思っていない。

 だが、わたしのためにやってくれているのだ。

 土曜の夜の開催となったのもわたしの都合を聞いてくれたからだ。

 これで乗り気じゃない態度を取ったら原田さんたちに悪い。


 一通り自己紹介が終わると司会の原田さんが『最初のお題です』と声を張り上げた。

 どうやら今日のこのイベントは雑談メインではなく司会のお題に沿ったトークをしていくようだ。


『あなたにとって親友とは何でしょう?』


 いきなり難しいお題が出た。

 親友といって真っ先に頭に浮かぶのはあかりとほのかだが、最近は親友というよりも恋人同士といった印象が強い。


『わたしの場合はちーちゃんとは幼なじみだからあんまり意識はしないんだけど、そこにいて当然の存在っていうか……』と司会が自分語りを始めた。


 考える時間を与えてくれているのだろうと好意的に解釈し、自分にとっての親友のイメージを固めていく。

 片方がもう一方にべったり依存するような関係は見ていて気持ちの良いものじゃない。

 独占欲むき出しというのも嫌だ。

 小学生の頃はそういった親友関係を多く見た。

 だからあえて友だちとは近くなり過ぎないようにと考えたこともある。


『互いに高めあっていけるような関係が理想やね』という言葉はわたしの本音ではあったが、原田さんはお気に召さなかった。


『琥珀ちゃんってもの凄くハイスペックなのに、同等以上の相手とか言っていたら親友候補すらいないんじゃない?』


『でも、一方的に頼られるんは親友とは違うんやない?』


『人間誰しも欠点はあるんだし、補い合う部分もあるんじゃないかな』


 彼女の指摘にわたしは言葉に詰まった。

 進行役というポジションを思い出したのか原田さんは『ハイスペックを否定しなかった琥珀ちゃんに続いて、超絶美少女の藤花ちゃんはどう?』と次の人に話を振った。

 わたしはムッとした顔をしながら、思考の海に沈んだ。


 原田さんの言う通り、人間誰しも欠点はある。

 わたしだって様々な欠点があると自覚している。

 ただそうした欠点は自分の力で乗り越えるものだと思っていた。

 いまは無理で助けてもらうことになっても、いつかは克服する。

 それが当然だと考えていた。


『じゃあ次のお題行くね』


 画面の中で原田さんが颯爽とそう語った。

 わたしは考え事をしていたせいでほかの人の話を聞いていなかったようだ。

 これではダメだと思い、気を引き締める。


『究極の質問です。親友と恋人、どっちを取りますか』


 ジャジャン! と自分でBGMを口ずさみながら司会が新しいお題を告げた。

 今度は先ほどまでとは逆の順番で回答していく。

 みんなが迷わず恋人と答える中、わたしの前の黒松さんが『妹』と選択肢にない言葉を迷いなく告げた。


『写真で見ただけだけど希ちゃん可愛いもんねー。気持ち分かるよ』と原田さんがフォローして『次、琥珀ちゃん』とわたしの名を呼んだ。


『わたしも恋人やけど、原田さんはどうなん?』


『ちーちゃんは親友兼恋人って公式設定だからその選択肢は存在しないのだよ』と原田さんは胸を張って答えた。


 ツッコミどころ満載のような気がしたが、ツッコんだら負けと思いスルーする。

 原田さんはツッコまれた時の対応を用意していたのか、誰からも反応がないことにガッカリしていた。


『わたしひとりで喋りたい訳じゃないんだよ』


 フリートークに入ると原田さんの独演会めいてきた。

 わたしは相づち担当となっている。


『何も考えていないように見られるけど、いっぱい悩んでいっぱい失敗していまの自分があるんだ』


『そうやねん。簡単に友だちができているように思われるけど、メチャクチャ気ぃ使つこうてんねんで』


『アレだよ。コミュニケーションは経験を積んで少しずつ上達していくんだよ。最初からうまくいかない。それでもやり続けることで能力が上がっていくんだよ』


『ゲームの経験値みたいなもんやね』


『そう、ソレ。とにかくやってみなきゃ』


 わたし以外の参加者はどちらかと言えば友だちが少ないようだ。

 そこで、親友の話から友だちの作り方へと話題が移っていった。


『数が多けりゃいいって訳やないし、人間関係はほんま難しいわ』


『わたしも友だちに振り回されるのが苦手だからどうしてもそういう子は避けちゃうね』


『原田さんは振り回す方やしな』とわたしが笑うと『自覚はあるんだよ。でも、止まらないの』と彼女は白状した。


『うちも喋り過ぎたわ』とそろそろお開きの時間になって、わたしはみんなに謝った。


『最後に相手の指名とかするん?』と原田さんに尋ねると『そこは自力で!』と彼女は励ますように握り拳を胸元に掲げた。


『学校で会えるんだしさ。声を掛ける勇気を振り絞って欲しい。最初は挨拶だけでもいいからさ』


『指名があるんやったら原田さんを指名するところやったわ』と冗談めかすと『良い女でしょ』と彼女は自慢げに言ってから『でも、売約済み』と笑った。


『ええ女かどうかは知らんけど、こんな親友やったら欲しいってイメージができたわ。ありがとな』


 それまで会話にほとんど加わらなかった鳥居さんが『原田朱雀レベルは世界的に稀少』とポツリと言った。

 確かにそうかもしれない。

 わたしは『逃がさんようにしっかり首輪つけときや』と余計なお世話のひと言を口にする。

 ……羨ましかったんやね。


 それでも今日参加して良かったとわたしは思った。

 親友に出会えるかどうかは時の運かもしれないが、ただ口を開けて待っているだけではチャンスを掴むことは難しいだろう。

 原田さんのようにはできなくても、望むものは積極的に行動しないと得られない。

 そういう意味では親友も彼氏もいっしょかもしれない。

 他人任せにせず自分の手でつかみ取る。

 その方がわたしらしい。


 原田さんの熱気に当てられたせいか、いまのわたしは親友に巡り会えると信じて疑わなかった。

 なぜなら、まだ見ぬ親友を探す旅は始まったところだからだ。

 スマホの電源を切ると、その暗い画面にわたしの顔が映る。

 それに向かってわたしは「待っててな」と宣言した。




††††† 登場人物紹介 †††††


島田琥珀・・・中学2年生。ダンス部副部長。塾や習い事に多数通い多忙な生活を送っている。関東生まれだが両親が関西出身ということもありキャラ作りとして関西弁を話す。


原田朱雀・・・中学2年生。手芸部部長。琥珀からの相談に乗る形でこのイベントを企画した。思いつきで行動することが多い。


鳥居千種・・・中学2年生。朱雀の幼なじみで親友。仲間内以外ではめっきり口数が減る。


黒松藤花・・・中学2年生。朱雀のグループのメンバーで、彼女に頼まれて参加した。

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