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令和元年6月3日(月)「仮装ダンス」高木すみれ

「これが頼まれたブツです」


 あたしは日野さんに大きな紙袋を渡した。

 中には、あたしが子どもの頃に見ていた女児向きテレビアニメのコスプレ道具が入っている。


「それでですね、叔母から是非写真を撮ってくるように頼まれてしまったのですが……」


 あたしは手を合わせて頼み込む。

 あたしの叔母の黎さんは同人大手の主催であり、様々なオタクアイテムのコレクターだ。

 日曜の朝のアニメや特撮について語らせたら一晩中でも足りないくらいの思い入れがあるそうで、このグッズを借りる時もかなりの時間話に付き合わされた。

 あたしも思い出を語って盛り上がったのでそれはいいのだけど、貸す条件としてコスプレ写真を要求されたのだ。


「分かった。時間あるなら、今からうちに来る? 実際に着てみたいし」


「行きます!」とあたしは日野さんの提案に即答する。


 日々木さん、安藤さんとともに学校の正門前にある日野さんのマンションに向かう。


「衣装は手作りだからチープでごめんね」


 日々木さんは、もっと完成度の高いコスプレを見慣れている人に見せるのは恥ずかしいと謙遜した。

 でも、妖精と見まごう日々木さんのコスプレというだけで一見の価値がある。


 日野さんの家に着くと、「悪いけど、本番のテストを見てもらいたいから私の部屋で待っていてくれる?」とわたしだけ日野さんの部屋に連れて行かれる。

 温かい紅茶とお菓子をもらい、クッションに座ってキョロキョロと部屋を見回す。

 何と言っても、目に飛び込んでくるのは巨大で高そうなベッドだ。

 他はわりと質素な感じなのに、そのベッドだけは豪華で存在感が抜群だった。


 ベッドに見とれているうちに準備が整い、リビングに呼ばれた。

 3人が体操服姿で立っている。

 もちろん、真ん中に日々木さんが立つ。

 動画を撮っていいと言われ、スマホを構える。

 日野さんのノートパソコンから聞き覚えのある曲が流れると、日野さんは一枚の大きな布を広げた。

 バスタオル2枚分くらいの大きさの無地の布で、その表裏をあたしの方に見せた後、日々木さんの身体をすっぽりと隠した。

 にこやかな日々木さんの顔は見えている。

 なぜか安藤さんがその前を駆け抜けた。

 日野さんが布をサッと取り去ると、日々木さんはコスプレ衣装に着替えていた。


 あたしが驚いていると、日々木さんが踊り出す。

 日野さんと安藤さんが日々木さんの後ろに並び、頭からコスプレ衣装をかぶって着た。

 魔法少女の衣装を大柄な日野さんや安藤さんが着ているのは少しシュールに見える。

 しかし、このふたりのダンスは切れがあり、それだけで見入ってしまうほどだ。

 日々木さんのダンスは普通だけど、その可愛らしさはヤバいと口走ってしまうくらいで、コスプレイヤーになったら世界中で引っ張りだこになるんじゃないかと思う。


「凄かったです!」


 ダンスが終わるとあたしは叫んでしまった。

 スマホを持っていなかったら、手が痛くなるほど叩きまくっていただろう。


「日々木さんの変身はどうやったんですか?」と質問すると、「ひ・み・つ」と日野さんが笑って答える。


 3人はすぐにあたしが撮影した動画を確認する。

 日野さんは「変身シーンは男子を入れて寸劇をするんだけど、もう少し見せ方を工夫した方がいいかな」と冷静にチェックしている。

 日々木さんは「わたしのダンス、変じゃない?」と動画を見ながら気にしている。


「大丈夫です。すごく可愛かったです!」とあたしが褒めても、動画を見てため息をついたままだ。

 日野さんや安藤さんと比べちゃダメだよとあたしは思う。


 帰り際に日野さんに呼び止められた。


「高木さん、今日はありがとう。叔母さんにも感謝していると伝えてね」


「いえいえ、素敵なものを見せてもらって良かったです。叔母もこの動画を見たら飛び上がって喜ぶと思います」


「それで、これとは別にまたお願いがあるんだけど、いいかな?」


 あたしが日野さんのお願いを断れるはずがない。


「あたしにできることでしたら……」


「いつも頼んじゃってごめんね。そのスマホで……」


 日野さんから聞いたお願いにあたしは驚愕した。

 あたしの疑問を解くように日野さんはひとつひとつ説明してくれる。


「分かりました。やってみます」


 あたしは覚悟を決めて、返答した。

今日の2本目です。

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