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令和元年5月23日(木)「キャンプの班」須賀彩花

 晴れ渡る空とは裏腹に、わたしの心は沈んでいた。


 昨日の終わりのホームルームで、6月のキャンプの班決めをするように言われた。金曜日までに男女別に3人ずつの班を作り、男女の班を足して6人の班にするそうだ。このクラスは男女15人ずつの30人なので、きっちりと割り切れる。


 わたしは美咲、優奈、綾乃の3人といつも一緒にいる。4人のグループ。そこから3人の班を作るとすると、ひとり余る。あぶれるのは間違いなくわたしだろう。まだ他の3人からは何も言われていないけど、そうに決まっている。


 休み時間、男子も加わり他愛のない会話が繰り広げられる。TVのバラエティ番組、アイドル、ファッションといったものから、学校の愚痴、噂話、そして悪口。


「日野さんって最近調子に乗ってるよね」


 優奈が声を潜めてそう言った。最近しきりに日野さんのことを話す。美咲が止めないせいだろう。


「先生のお気に入りみたいだし」


 日野さんは1年の3学期に転校してきた。でも、同じクラスだったのにほとんど話す機会はなかった。彼女が休んでばかりだったからだ。2年生になって休むことが減ると存在感が増してきた。目立てば当然悪口も出て来る。


「キャンプの班割りも自分たちの都合の良いようにしたんじゃないの」


 日野さんの方を見ると、日々木さん、安藤さんと固まって座っている。あの3人がひとつの班を組むのは間違いないだろう。日野さんがキャンプの班割りを3人組にしたとは思わないけど、優奈の言葉を信じてしまいそうになる。


「だいたい日々木さんと釣り合ってないよね」


 優奈はこの言葉を美咲に向けて繰り返し言っている。ここ数日で何回聞いただろう。美咲は表情を変えず、無関心を装っている。この前、買い物中に日々木さんと出会い、美咲はもの凄くテンションが上がっていた。普段は大人っぽい態度なのに、あの時は子どものようだった。それほど美咲にとって日々木さんが特別なんだと初めて知った。


 その日々木さんは日野さんとの買い物を優先して美咲と別れた。その後の美咲はいつも通りに振る舞おうとしていたけど、落ち込んでいるのは一緒にいたメンバーには丸わかりだったと思う。それ以来、優奈は日野さんの悪口を言うようになり、美咲は少し塞ぎ込んでいる。


 移動教室に向かおうと廊下に出たところで日野さんに呼び止められた。優奈の言葉が蘇り、どぎまぎしてしまう。


「キャンプの班決めの件なんだけど」


 わたしは自分の表情が硬くなるのを感じた。無言で頷く。


「須賀さんにはとりあえず渡瀬さん、三島さんと組んでもらって、あとで松田さんたちと一緒に行動できるように調整しようと思ってるんだけど、それでいいかな?」


「あ…………うん」


「じゃあ、そうするね。安心して、キャンプ楽しんでね」


 日野さんは笑顔でそう言うと、わたしの背中を軽く押した。わたしが歩き出すと、もう日野さんは背中を向けてどこかへ急いでいた。


 わたしが美咲たちに追いつくと綾乃に話し掛けられた。


「彩花、何か良いことあった?」


「え?」


「明るくなった」


「あ、うん」


 わたしは美咲と優奈を窺う。歩きながら優奈が大きな声で美咲に話し掛け、美咲はそれを聞き流している。後ろを歩くわたしたちには関心がないようだった。


「日野さんが、わたしも美咲たちと同じ班になれるように調整してくれるって」


「そう。良かったね」


「うん」


 わたしは日野さんにお礼を言ってなかったことに気付いた。ちゃんと言っておいた方がいいよね。振り返ってみたけど、日野さんの姿は見えなかった。

今日は2本立てです。

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