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令和元年10月2日(水)「ヤバい」笠井優奈

 ヤバい。

 今回ばかりはマジでヤバい。


 明日から二学期の中間テストだ。

 これまでの定期テストは一夜漬けでなんとかしのいできた。

 しかし、今回はマジヤバい。


 二学期に入ってから、運動会の創作ダンスのことしか考えていなかった。

 クラスパートのリーダーを任され、最高のダンスを披露しようと頑張った。

 勉強をしないのは普段と変わらないけど、授業中もダンスのことを考えていてろくに先生の話を聞いていなかった。

 試験なんて直前に頑張ればなんとかなると甘く見ていた。

 それなのに、運動会が終わってもダンス部を作ることになり、なんだかんだとそちらに意識が行ってしまった。


 ダンス部が正式にできるのはテストが明けた来週からとなる。

 現在はメンバーが4人なので、本来なら人数が足りていない。

 ただ入部希望者がかなりいると考えられ、先に部を作った方が良いと日野が判断したことで学校や生徒会の許可が下りた。


 すでに学校中の噂になっている。

 面と向かって言ってくる1年生はいないものの、2年生の女子からは何人かに話を聞かれた。

 驚いたのは、他のクラブだとそろそろ引退する3年生からも入部したいと言われたことだ。

 先輩なんてできてもウザいだけだから丁重にお断りしたが、興味を持つ生徒は本当に多いようだ。


 日野からは「あまり私に頼らないように」と言われている。

 だが、副部長となる彩花は部活未経験なので、希望が殺到すれば混乱は必至だ。

 ここ数日はそんな話し合いを重ねていた。


 あと、ソフトテニス部を辞めることもすんなりとは認めてもらえなかった。

 顧問や先輩の何人かが教室まで押しかけてきて、考え直すように言われた。

 同じ2年からいろいろと言われていることも知っている。

 入部した時は楽しい部活動ができると期待していたのに、結局あまり良い思い出を作れずに辞めることになってしまった。

 美咲のような仲の良い友だちができれば、違ったんだろう。

 一緒にいる時は仲が良さげに話をしても、部活を離れてまで会おうと思う子はいなかった。


 ダンス部の顧問を引き受けてもらった岡部先生は教師になったばかりで頼りなさそうな感じだったが、ソフトテニス部の顧問に向かって生徒の意思を尊重してくださいとお願いしてくれたそうだ。

 ダンス部としてもう動き始めているし、しつこいようならなんとかすると日野が言っていたので、もう大丈夫だろう。

 ダンス部をソフトテニス部のようにはしたくないと思っている。

 真剣にやりたい子だけを集められたらいいのだけど、それは難しいだろうな。


 ……などと、油断するとすぐにダンス部のことを考えてしまい、勉強が手につかないのが最大の問題だ。


 アタシの成績はだいたいクラスの平均といったところだ。

 体育は得意だが、他の科目は特に得手不得手がなく、そこそこの状態を維持している。

 中2のいまの時期、アタシだって高校受験のことを意識している。

 この近辺だと、平均より少し上の偏差値の公立が人気で、近いし、割と評判も良くて、アタシも第一志望に挙げている。

 その下になると微妙なところが多く、服装なんかは自由だけど中退者が多かったり、荒れていたりと評判は良くない感じだ。

 ひかりは頑張ってもそういう高校に行っちゃいそうだよね……。


 これまで、中学の勉強なんて余裕だと軽く考えていた。

 本気を出せば成績はすぐに上がる。

 一夜漬けでどうにかなったんだから、少し勉強すれば志望校レベルの中の上なんてあっという間だと。

 それが浅はかな考えだったと思い知らされている感じだ。


 同じくらいの成績の彩花も、2学期はダンスの練習ばかりやっていた。

 彼女もピンチだと焦っている。

 でも、勉強会で見ていると、アタシよりもちゃんとできている。

 彩花はコツコツ勉強してきたから基礎ができていてピンチでも大丈夫なだけの実力があるのか。

 それとも、綾乃が必死に教えているのか。

 どちらにせよ、彩花よりアタシの方がヤバい状況なのは確実だ。


 このままだと成績がガタッと下がるのは目に見えている。

 仲の良い家族だけど、そうなるといろいろと言われちゃいそうだ。

 兄貴からはからかわれるか、バカにされるか……。

 それ以上に気がかりなのは、彼氏に心配をかけてしまうことだ。

 きっと勉強を教えてあげると言い出す。

 これまで余裕をぶっこいていただけに、こっ恥ずかしいことになってしまう。


 あと、日野。

 アイツからもねちねち言われるだろう。

 日野はノートこそ誰にも貸さなかったが、試験の重点ポイントを記したメモを配った。

 そのお蔭で赤点は回避できそうだが、クラス全員に配ったので、みんなが真面目に勉強すれば平均点が上がってしまう。


 LINEの通知に気付き、見るとひかりが「助けて! もうダメ」と書いていた。

 スマホをさわるヒマがあるなら勉強しろと書きかけて、そのままブーメランになって返ってくる言葉だと思いとどまる。

 勉強しなきゃいけないと分かっているのに、他のことに手を出したくなってしまう。

 部屋の片付けとか。

 スマホだとか。

 こんなことをしている場合じゃないのに!

 そんなことを考えていたら、彩花が「頑張ろう! ダンスや合唱ができなくなっちゃうよ!」と励ましていた。


 彩花、余裕あるじゃん、と思いつつも、彼女が強くなったと実感する。

 ぼんやりしていたら、彩花に置いて行かれてしまいそうだ。

 アタシはもうひと頑張りと気合いを入れ直す。

 このテストを乗り越えることができれば、彩花に感謝しないとな。

 やはり、持つべきものは良い友だ。




††††† 登場人物紹介 †††††


笠井優奈・・・2年1組。勉強中でもスマホは手放せないよね……。


須賀彩花・・・2年1組。勉強は大事だけど、グループ内の人間関係も大事だから……。


渡瀬ひかり・・・2年1組。勉強している時間よりスマホの画面を見ている時間の方が長い。


松田美咲・・・2年1組。テスト前は基本的にスマホを親に預けている。


田辺綾乃・・・2年1組。勉強しつつ、彩花の様子も気になる。ひかりが羨ましい。


日野可恋・・・2年1組。スマホでやり取りしている間の時間にテスト勉強。


岡部イ沙美・・・1年女子を教える体育教師。新卒1年目。イ沙美は誤植ではない。

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