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令和元年9月12日(木)「みんなマジメすぎ」三島泊里

 マジで無理! って思っていたダンスが、結構踊れるようになった。

 ダンスなんてやりたい奴が勝手にやってればいいのよと思っていたのに、それっぽく踊れるようになって、周りから褒められると、ちょっと気分が良い。

 ひかりの気持ちも少しは分かるような気がする。


 踊れると言っても、ひかりとは比べものにならない。

 Aチームの連中はなんであんなに身体が動くの? って思う。

 あたしとそんなに体育の成績が変わらない明日香や須賀さんでさえ、かなり上手に踊っている。

 あたしはようやく春菜のレベルに追いついた程度で、踊るたびにどこかしらミスが出ている。


「さすがね。泊里はリズム感はバッチリだね」


 あたしが得意なのはそこだけなんだけど。

 それでも春菜におだてられて悪い気はしない。


「春菜は……もう少し楽しそうに踊ったら?」


 春菜のダンスは目立った欠点はないのだが、すべてが60点という感じで物足りない。

 本人も自覚しているのか、どこを直せばいいのかと悩んでる。

 あたしじゃ技術的な指摘はできないので、雰囲気を変えてみることを提案した。


「楽しそうか……松田さんを見習わないとね」


 Aチーム以外でダンスの練習に取り組んでいるのは4人だ。

 あたしと春菜、松田さんと高木さん。

 松田さんは楽しそうだし、身体は動けている。

 問題はリズム感が悪く、音楽に合わせて踊ることができていないことだ。

 正確にカウントを刻むことが大事だからと、今はメトロノームに合わせて数字を声に出す練習に取り組んでいる。


「リズム感があればAチーム確実なのにCチームってことは、間に合わないって思われたのね」


 あたしは松田さんには聞こえないように、春菜に囁いた。

 選考したのは笠井さんと日野さんだと聞いている。

 ふたりが匙を投げたのだから、すぐに直ることはないんだろうな。


「ダンスですから、身体を動かしながらカウントを取るのはどうでしょう?」


 高木さんが自信なさそうに提案した。

 放課後、Aチームは練習のために運動場へ行った。

 教室に残っているのはBチームとCチームだ。

 練習メニューについては日野さんが相談に乗ってくれるが、今はいない。


「合唱じゃないんだし、その方がいいかもね」とあたしが言うと、春菜が腕を組み考え込んだ。


 春菜が松田さんのところへ話をしに行き、あとにあたしと高木さんが残される。

 彼女も最初はまともに踊れていなかったのに、日野さんから教わってからかなりマシなダンスになった。

 まだあたしの方がうまいかなと思うが、今日はやけに真剣に練習している。


「何かあった?」と聞いてしまう。


 これまで彼女と口をきいたことなんてなかった。

 最近一緒に練習することが増え、たまに話すようになった。

 雑談ばっかりだったから、こういう踏み込んだ質問は初めてだ。

 他人のことなんて興味がないあたしだけど、なんとなく聞いてみたくなった。


「あー、少し……というか、けっこうあった感じですかね」


 高木さんはそう言って曖昧な笑みを浮かべる。


「このクラスって真面目な子ばっかしだよね」


 あたしはつい愚痴を零す。

 高木さんは元々真面目な方だけど、更に真面目になろうとしている感じがした。

 明日香もダンスでは凄く真剣だし、置いて行かれたような気持ちになってくる。

 ひかりも遠くに行っちゃったしなあ……。


「多分ですが……、日野さんがそういうのを引き出すのが上手いんだと思うんです」


 高木さんがそう言って、説明を続ける。


「本当に真面目な生徒の数は他のクラスと比べてそう変わらないと思うんですが、やる気の引き出し方が巧みで、乗せられちゃう子が多いんじゃないですかね」


 あたしのやる気を引き出したご褒美デートを提案したのは日々木さんだが、最近は日野さんとセット扱いされている。

 あのふたりがこのクラスを仕切っているのは間違いない。


「あたしはご褒美デートが終わったら、だらける。頑張らない。文化祭も勉強もサボりまくる!」


 この空気に飲み込まれてなるもんかと大声で宣言した。

 それが聞こえたらしく、春菜があたしを睨みつけてくる。


「文化祭サボると日野さんが怖いですよ」と高木さんが忠告する。


「じゃあ、サボるのは勉強だけで」と言うと、高木さんは苦笑した。


 文化祭は有志の合唱があるので、あたしにとってはそっちがメインだ。

 ひかりも一緒だしね。


「私が怒るのは怖くないのね」といつの間にか背後に来ていた春菜が、ゴゴゴゴゴッーと効果音を背負ったような憤怒の表情であたしに言った。


 春菜はあたしに勉強させようといつも世話を焼いてくる。

 頼んだ訳でもないのにと思うが、春菜がいないとぼっち確定なので適当にあしらってやり過ごしてきた。


「あはは……、そのうち頑張るから」と笑って誤魔化すが、「運動会のあとは中間テストだし、そこで成績が悪い人はご褒美デートを無しにしてもらうように日野さんに頼むわ」と春菜は不敵な笑みを浮かべた。


「やめてー!」とあたしの絶叫が教室に響き渡った。


 お腹を抱えて笑う高木さんに「そこ、笑いすぎ」と怒鳴り、春菜には「悪かったから」と謝る。

 なんでこんな目にあたしが遭うのか。

 助けてよ、ひかり!




††††† 登場人物紹介 †††††


三島泊里・・・2年1組。Bチーム。元合唱部で体力とリズム感はある。意識しているところはできても、他が疎かに。


渡瀬ひかり・・・2年1組。Aチーム。元合唱部で運動神経もあり、創作ダンスではエース級。アイドル並の容姿と明るさも武器。


千草春菜・・・2年1組。Bチーム。勉強はトップクラス。運動も平均点は取れるが、そこから先は苦労している。


塚本明日香・・・2年1組。Aチーム。普段は彼氏最優先だが、創作ダンスは気合いを入れて取り組んでいる。


松田美咲・・・2年1組。Cチーム。自分のダンスの何が悪いかがよく分かっていない。


笠井優奈・・・2年1組。Aチーム。創作ダンスのクラスパートのリーダー。


須賀彩花・・・2年1組。Aチーム。日野さんから「あれだけ筋トレを頑張ったのだからできる」と励まされている。


高木すみれ・・・2年1組。Bチーム。思うところがあり、とりあえず目の前のひとつひとつを頑張ろうと決めた。


日野可恋・・・2年1組。Aチーム。抱えている案件が多く、手が回らない状況。


日々木陽稲・・・2年1組。Cチーム。忙しそうな可恋に内緒で、合宿に向けてあれこれ画策中。

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