表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/745

令和元年8月19日(月)「友だち」日々木華菜

 やはり持つべきものは友だちだ。

 今日は暑い中、朝からゆえが来てくれた。

 災厄レベルの英語の宿題は、残りわずかとなった夏休み中に終わるかどうか微妙な状況だ。

 そんなわたしのピンチに颯爽とゆえが駆けつけた。


「クラスメイトの大半は今頃になって滅茶苦茶焦ってるよ。わたしのところにも宿題を写させてって悲鳴がたくさん来てるし」とゆえが苦笑する。


 わたしはゆえ、アケミ、ハツミの4人でこの夏休み何回か勉強会を開いた。

 英語の宿題は和訳英訳長文読解がほとんどで、難易度が高く、鬼のように量が多い。

 わたしを除く3人は英語が得意で、終わる目処が立ったそうだ。

 わたしもなんとかこなして来たが、予定外の北海道行きなどもあって、かなりギリギリの状態になっている。


「正直いまから慌てても無理だよね。分担するにしても写す時間だけで時間切れになりそうだし、丸写しだとバレルだろうしね。ネットに答えが転がってる訳でもないし、翻訳サイトは先生もチェックしてそうだし……」


 きっとクラスメイトの多くは青い顔をしていることだろう。


「提出できなかったら補習確定?」


「夏休み終わってすぐの実力テストで満点を取ったら免除って噂だけど、そっちの方が難易度高いよね」


 英語が得意なゆえが満点は無理だと言うのだ。

 わたしにできるとはとても思えない。


「1年の夏に大量の英語の宿題を出すのはこの学校の恒例行事だから、そういう情報を仕入れていた子の多いクラスだと、クラス全体で勉強会開いたりして計画的にやってるそうよ。うちのクラスはそういうリーダーシップを取る子がいないから無理だったけど」


 うちの高校は偏差値的に、そこそこ勉強ができて、そこそこ真面目な子が集まっている感じだ。

 わたしたちのクラスも雰囲気は悪くないが、リーダー的存在はいない。


「ゆえはリーダーシップを取ろうと思わなかったの?」


 わたしはゆえをじっと見て尋ねた。

 彼女なら能力的にそれが可能だったはずだ。


「えー、面倒じゃん。わたしはあちこち首を突っ込むのは好きだけど、自分でみんなをまとめていくタイプじゃないから。わたしよりカナの方が向いてるんじゃない?」


 突然そう言われて、「無理だよ」と首を振る。

 中学時代も普通を絵に描いたような生徒だった。

 長と付くような役職になったことはない。


「可恋ちゃん見てると、リーダーってああいう子がなるんだって思うもん」


 わたしだったら、まず周りに「えー、どうしよー」って相談すると思うことを、彼女はひとりで瞬時に判断し決断する。

 全部自分で決めて責任も自分で取りますって感じのあの格好良さは、歳下だけどちょっと憧れてしまうほどだ。

 彼女ほどでなくても、人をまとめて何かをやり遂げる子は凄いと思うし、自分には無理だと自覚している。


「あの子は生まれた時からリーダーの器って感じだもんね」とゆえも同意した。


 それでも、「カナだってお姉ちゃん気質って言うか、面倒見が良いし、段取りを考えるのも得意だし、結構向いてると思うけどね」とわたしを高く評価してくれる。


 買いかぶり過ぎだと思うものの、悪い気はしない。

 わたしは感謝の言葉を述べてから、英語の課題に取り組んだ。




 しはらくして、ヒナがお茶とお菓子を持って来てくれた。

 それを機に少し休憩を取る。


「ヒナは勉強終わったの?」


「今日の分はね」


 ヒナは夏休み前にかなり緻密な計画を立て、それをキチンと実行している。

 ここ数年は計画通りに最後までやり遂げている。

 彼女はわたし以上に根が真面目だ。


「ヒナちゃん、英語上達した?」とゆえが聞いた。


「簡単な英会話なら問題ありませんが、文法はさっぱりです。中2の英語はスラスラ解けますけど、お姉ちゃんのを見せてもらったらちんぷんかんぷんでした」とヒナが微笑んだ。


「英会話だけでも凄いよ」とゆえが褒める。


「でも、可恋からはよくダメ出しされちゃいます。キャシーの英語は子どもっぽいものなので、それを真似すると話し方や言葉遣いが子どものそれになるって。可恋から教わった動画を見てコツコツ勉強はしているんですが、わたしの場合実際に話しながらじゃないと身に付かない感じなので……」


「その意識からして凄いよ。わたしも中学の頃から英語が好きだったけど、洋楽聴いて覚えるくらいしかしてなかったもの」とゆえが感心してみせた。


 わたしはこの難易度の高い高校の宿題をスラスラ解いていた可恋ちゃんの姿を思い返し、「可恋ちゃんは別格だからね……」と呟く。


「英語はわたしの方が上達するって可恋が言ってくれたの。いまはまだ可恋の方ができるけど、必ず追いついてみせるから」とヒナはわたしを見て決意を表明した。


 可恋ちゃん相手でもそう言い切れるヒナの向上心の高さを眩しいと感じる。

 いままでのわたしなら、そんな妹に比べてわたしは……と卑下していた。

 しかし、最近は料理や栄養学など自分なりに頑張っているし、それを周りの人たちが認めてくれていると知っている。

 だから、ヒナのこの向上心の高さをわたしも見習わないとと素直に思うことができた。

 そして、そんな風に思えるようになったのは、ゆえを始めとする周囲の人たちのお蔭だ。


 やはり持つべきものは友だちだ、と思いながらゆえに目を向ける。

 その人懐っこい笑顔を見て、感謝の気持ちと共に、彼女が助けを求める時には助けられるような人間になりたいと思った。

 とりあえず、いまは彼女の助けをちゃんと結果に繋げることが最優先だけど。




††††† 登場人物紹介 †††††


日々木華菜・・・高校1年生。なり振り構わず宿題を終わらせるために、ゆえが来れない日は可恋ちゃんに来てもらう予定。補習回避ラインを既に越えていることを彼女は知らない。


野上月・・・高校1年生。友だちには小出しに答えを見せて恩を売っている。


日々木陽稲・・・中学2年生。勉強と称して、可恋とふたりだけの時も英語で会話をすることがある。だって、英語の方が可恋は本心を口にするから。


日野可恋・・・中学2年生。羽田に迎えに来てくれた師範代の車でキャシーの新しい家に行き、そこでキャシーの家族の歓迎を受ける。師範代とキャシーの家族との話が盛り上がり過ぎて、今日中に帰宅できるか不安に感じている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ