―38― 銀河連合日本章 終
201云年 某月某日。
最近の異常な気候。長い長い残暑が終わり、やっと秋らしい季節になり、世は運動会シーズン。
そんな季節になるはずであったが……
中国、張徳懐の放った一手、日本とティエルクマスカの関係を利用した、中国国内に暗躍するガーグ勢力を一掃する作戦。
そしてその次に来た、日本とティエルクマスカの真の関係を世に引きずり出す策……
米国はヤルバーンと日本の関係を支持し、世界のパワーバランスを維持する方針をとった。
しかし中国はそれでは困る。
従って、暗躍する世界主権とでもいうべき国内のガーグ勢力を排除し、それを利用して更にヤルバーンを地球社会の主権紛争へ引きずり込んだ。
張は先の主権会議にて、日本とヤルバーンの関係が想像以上に親密であり、また、それが日本でなければならない絶対的な何かがあると予想した。
そしてガーグを扇動し、日本にとっては何があっても譲歩できない尖閣諸島に対して揺さぶりをかけることで両者の出方を見た。
結果、張の推測は的中し、日本とヤルバーンは安全保障も含めた極めて親密な体制であることを暴き出した張は、アジアと、彼らの歪んだ『地球世界の国際秩序』の崩壊を懸念する。
そして次に放ったのが、ヤルバーンの『内政不干渉主義』日本の『平和外交主義』の詐称という名目の糾弾、そして……ヤルバーンとティエルクマスカの影響を地球から排除しようという方策だった。
そして出してきた一手。
中国が国連に提起した議題……
【国連安全保障理事会でのヤルバーン地球退去命令】
普通、何らかの空想物語的に考えれば、こんな話、銀河をまたにかける星間連合国家に何を寝言言っているんだ? という話である。
彼らからみれば、科学技術が遅れた銀河辺境にあるハナクソみたいな一地域国家が「誰に物言ってるの?」という感じで、中国に攻め込んで中国を消滅させたりと、そんな話も頭に浮かぶ。
しかし現実はそう簡単な話ではない。
ティエルクマスカ連合の国是は、基本、外交による決着が是なのだ。
以前、連合防衛総省のヘストル将軍が言ったように、彼らにとって軍事力の行使とは、ガーグ・デーラのような理不尽な敵対組織や、自国への侵略行為、そして自衛という形で徹底している。
なぜなら、彼らの連合自体が、種族を超えた相互理解の結晶であり、これは逆に言えば彼らは安易に力で物事を解決することを好まないメンタリティを持っているためでもある。
これはそういうメンタリティとイデオロギーでなければ、彼ら自身がその連合を崩壊させてしまう危険性がある。
今でこそ完璧な安定を誇っている彼ら連合であるが、彼らにもその「最初」というものはあった。
そしてその「最初」は当然何事もうまくいったわけではない。争いもあったし、その影響で死者も出ただろう。
しかしトーラル文明の遺産を共有し、お互いに無いものを補完し合うという理念のもと、彼らは極力「外交」という手法で物事を進め、今の連合を創り上げた。
そのイデオロギーは、やはり徹底されなければならない……「例外」というものは極力認めてはいけないものなのだ。
余程のやむを得ない理由がない限り「例外」を認めてしまうと、そこから必ず綻びが生じる。
彼らはそれを熟知していた。
張自身は、さすがにそこまでの考えはないものの、おそらくヤルバーンやティ連がそう言ったものだろうと理解したのだろう。
こういうものは、かつて地球にいた『アドルフ・ヒトラー』然り『ヨセフ・スターリン』然り『毛沢東』然り『フランクリン・ルーズベルト』然り『ホー・チ・ミン』然り『金正日』然り『江沢民』然り……
この手の指導者がなぜに世の中がもめているときに頭角をあらわすかというと、共通して言えるのは、
『相手の譲れない弱みを見抜く事』
に長けているからである。
相手にジョーカーを切らせない術に長けていることである。
201云年の現在、この術に長けた政治家は少ない。特に民主主義国家には少ない。
それは世界が、世界的な国家的危急事態というものに、戦後70年陥ったことがないからである。
そんな世の中では、いわゆる道理を無視した存在が世に幅を利かせる。
ティエルクマスカという巨大で高度に進んだ文明の弱点は、そこにある。
秩序や倫理観が進みすぎているだけに、小石一つ、その精密なシステムに噛んでしまえば動けなくなってしまう。
張は一党独裁制国家の長として、秩序ある存在の彼らに、ある種直感的にそこが弱点だと見たのだろう。
実際、現在のティエルクマスカの外交方針では、こういった近隣文明が彼らに反感を抱いたと想定した場合……やはり一時的に撤退を考慮する可能性は大いにあるのだ。これは以前、柏木はヘストル将軍からもそう聞いた。
彼らは相互理解を成しえた文明であるが故に、相容れないモノとは距離を置くという選択肢を取る可能性は充分にあるのである。
しかし、今回ばかりはティエルクマスカ的にも特別な国家的プロジェクトでもある。普通の外交交渉ではない。彼らも相当な外交努力は行うだろう。
そういった意味もあっての、日本への一極集中外交方針でもあるのだ。
……しかし、かような……今回のような尖閣事件に類した、相手の柔らかい所を突くような妨害工作が彼らの間に入った場合、これを、既存の政治家や、ヤルバーンスタッフだけでこういった策謀に対処しようとしたならどうなっただろうか?
はてさて、張、そして一党独裁という陰湿な謀略で日々成り立っているような国家の策謀に打ち勝てたかどうか?
それは、柏木やフェルが『かの世界』で既に体験した……即ちアレである……
方や世界にティエルクマスカ技術が流出し、その科学と軍事が結びついて世界が混乱した世界。
片やヤルバーンが存在せず、日本は災害からの復旧が道半ばで、大国が国際的な悪を放置してしまったがために、微妙に国際パワーバランスが悪しき方向へ崩れかけてきている世界。
幸か不幸か、柏木達のいる世界は、その丁度中間のような世界だ。
……しかし、張が見誤ったのは、日本には銀河レベルのアサルトバカがいるということ。
偏った知識で、偏った解決法で答えを導き出し、どこかの狂戦士な漫画ではないが……
『それはアイディアと言うには、あまりに誇大妄想、偏り、斜め上で、寝た方が良く、そして大規模すぎた……』
という言葉が似合う知識を剣にして5千万光年彼方で暴れまわった……ウチュウ人を嫁にした……政治家を相手にしてしまったことだ。
そんな奴がキレた時、ぶん回した夫婦剣。
米国で、対中強硬派の事をドラゴンスレイヤーと呼んだが、さしずめドラゴンキラーとでもいったところか?
それが…………
………………………………
……尖閣諸島への中国ガーグ派閥侵攻事件。所謂『魚釣島事件』の後日。
この事件は、『紛争』という言葉が使われなかった。なぜなら、各国偵察衛星での資料では、確かに戦闘の様子が記録されたものの、実際には戦闘した形跡が何一つ残されていなかったためだ。
戦闘後の衛星写真を調べ、戦闘中の写真と比較してみても、車両や建築物、戦闘跡などが何一つ見つからなかった。
仮にそれらを撤去したとしても、予想できる作業日数的に合わない。
撤去するにしても、撤去の容姿が確認できるはずである…しかしそれが見当たらない。
世界の軍関係者は相当に頭を捻った。
しかし中国は、フリゲート艦の死体映像や、カグヤの戦闘映像にヤル研の超兵器群の存在を連日世界に発信し続けており、尖閣での証拠隠滅は日本とヤルバーンが結託したものだと糾弾していた。
まぁ実際その通りで、魚釣島にあった99式戦車等の放置車両や武器は、転送で陸自が持ち帰り研究用に。そしてバラックや臨時埠頭のような施設はディスラプター砲で分子にしてしまった。
着弾跡などは、カグヤのハイクァーンでキレイサッパリ元通りにした。
日本政府は、中国の非難に対し、浜官房長官が会見で対応。
普通ならそこまで証拠がない状況なら「そんなの知らないよ。中国が寝ぼけているんじゃないですか?」と言えばいいのだが、そこはあえて……
「我が国は、わが国の領土である尖閣諸島、魚釣島を占拠した中国人民解放軍に対し、自衛隊法第81条に基づき、沖縄県知事の要請により自衛隊に対し、治安出動を命じました。これは本来、魚釣島に漂着した漁民を保護するために出動した海上保安庁船舶に対し、中国海警が妨害行為を行ったためのやむを得ない出動でありましたが、その後の中国人民解放軍南海艦隊の、我が国領土に対し、不当な侵略行為を行ったため、やむを得ず当該領土の防衛のため、治安維持活動の状態のまま、自衛行動、および、魚釣島の治安維持活動の続行を指示したものであります。その際、ヤルバーン自治体から中国の行動が彼らの調査活動に多大な悪影響を及ぼすという話がございまして、ヤルバーン、メルヴェン隊も我が国自衛隊に協力したいという要請があり、先の国会で決議しました『日ヤ災害安全保障協定・第5条』にあります『ヤルバーン自治体に対するテロ行為における治安維持に関する協定』を適用し、共同で事態の収拾に当たりました」
と、あえて堂々と中国の事実公開を肯定した。
記者からは「米軍は対応しなかったのか?」「陸上自衛隊が出動したという記録はないが」「あの異様な日本国章をつけた自衛隊兵器のようなものは何だ」という質問が矢継ぎ早に飛んだが、浜は冷静に……
「米国に関しては、今回の事態は日本のみで収拾できるので、出動要請はしていない」
「今回対応したのは、こういった特殊な事態に対応するための特殊部隊で、詳細は差し控えたい」
「兵器に関しては、ヤルバーン側が我が国の兵器を調査研究した際に製造した試作の研究物で、それを実験的に使用したと聞いている」
と言う具合にとりあえず発表した。
まぁ米国の件と、特殊部隊の話は事実その通りだ。
しかし最後の兵器の件は、もちろんブラフである。まぁこんな理由で納得はしないだろうが、今はとりあえずこの程度でいい。
あまりに普通に日本とヤルバーンの共同作戦を政府が認めたので、記者達はむしろ拍子抜けである。
そして、記者達の予想と違って、浜がごく普通に対応したため、逆に記者達も冷静に考えると、本来日本領土に侵攻してきたのは中国であって、日本やヤルバーンが主権と思っている事に対応するのは、よくよく考えれば普通の事ではないか……ということに気付く……ってか早くそこに気付けと。
ただ、中国が発表した、そのあまりに凄まじい死傷者に関してはどう説明するのか? という質問に、浜は……
「事実無根で、中国側の捏造としか申し上げられない。あまりに滑稽でコメントするにあたらない」
とズバっと述べた。
そして、これが事実無根である「証拠」もあると。
日本は無実の証明……すなわち「悪魔の証明」が完璧にできるという。それは後日、正式な資料が整えば、正式に国際社会へ発表すると話した……
………………………………
……駐日米国大使ジェニファー・ドノバンは、尖閣事件のあと、至急で二藤部との会談を申し入れた。
無論、これはハリソン大統領からの要請である。
ハリソンも二藤部と電話会談をしたかったそうなのだが、中国やロシア、EUの対応に追われ、今はハリソンの意思を一番よく理解しているドノバンにその役を任せた。
そして、ドノバンは『対策会議』改め『交流促進会議』のオブザーバーでもある。彼女ならハリソンよりもむしろ突っ込んだ話ができると米国は期待したところもあった。
「ニトベ総理、先日のハマセンセイの会見ですが、あの発表……日本政府の『意思』とみてよろしいのですね?」
「と、仰いますと?」
そういう二藤部にドノバンは「フゥ」と下を向いて……
「あの発表内容、確かに日本の議会決議に基づく正当な物であることはマニュアル的に見ればその通りでしょうけど……失礼を承知で申し上げますが、あまりに日本らしくないというか、あからさまというか……そうですね……中国の非難に対して「その通りですよ、それがどうした?」と言っているようにしか聞こえませんでした……一体どうなさったのですか?」
二藤部はドノバンの言葉に俯いて、フフと笑ったあと、顔を上げて、彼女の質問には直接答えず……
「……一年前のあの日ですが、私が国連でギガヘキサの対応に四苦八苦していた時……あの天戸作戦をやるという至急電が入り、それで難をしのぎました……」
コクリと頷くドノバン。
「ドノバン大使……この国は、昔からそうですが……外界から強い衝撃が加わると、必ずその衝撃をなんとかしようとする、突出した人物がひょっこりと出てくる国なんです」
「と、いいますと?」
「例えば……聖徳太子に始まり、元寇では北条時宗、ヨーロッパとの接触で織田信長、そして時代はずっと進んで幕末、貴国との接触で坂本龍馬に始まる維新の志士。明治に入り、世界のパワーゲームに打ち勝った東郷平八郎……負けたながらも……はは……結果的に貴国へ機動部隊構想をお教えした山本五十六。そして敗戦後は、日本の国体維持に奔走した吉田茂に白洲次郎……その後の日本を経済大国へ押し上げた現在の企業創始者のみなさん……」
「……」
「そして日本は国としても安定し、その後はそんなに特異で突出した人材と言うものは、出てきませんでした……そして……ヤルバーンが来た……これも日本にとって、第二の黒船でした。そこ出てきたのが……」
そう二藤部が言うと、ドノバンはククククと口に手を当てて笑い
「ミスター、ファーストコンタクターですか?」
「ええ、その通りです……そしてもう一人います」
「え?」
「わかりませんか?」
「いえ……」
二藤部はニコリとして……
「フェルフェリアさんですよ……」
ドノバンはそれをきいて、ハァハァと頷く。
「ええ、確かにそうですわね……」
二藤部は話す。
柏木と言う男、もし、ヤルバーン事件がなければ、なんてことのないただの自営業者だったのだろうと。しかし、何の因果かフェルと出会ったことで、彼の特殊な性格と才覚が、彼女と化学反応を起こして、あれよあれよとこんなところまで来てしまったのだろうと。
「……先ほど話した坂本龍馬にしてもそうですが、彼でも元々は『郷士』という武士の身分で最も低い階級の武士でした。恐らくもう何年か、ペリー提督の来航がずれていれば、彼が歴史に姿を現すことなんてなかったのかもしれません。結局、彼のおかげで、頭の固かった幕府に薩摩長州も動かされた……それと同じ感覚を、今、私達政府閣僚や、官僚は味わっています」
「……」
「どうにもですね、大使……私達は、彼の思考にどうしても追いつけないのですよ、ですから彼の持ってくる企画やアイディアは、本当に私達のような今までの日本基準や地球基準の思考では、どうしても彼の考えることに追いつくことができない……おそらくそれは、ティエルクマスカの政治家たちも同じなのでしょうね……」
頷き、二藤部の話を黙して聞くドノバン。饒舌に話す彼の言葉は、何かが吹っ切れた者の言葉だと彼女は感じた……それは今までの日本の政治家にはないものだ。
「そして今回、地球社会で、そんな硬直した地球的思考の権化のような、中国と、ガーグがああいうことをやらかしてくれました……で、いいように利用されたと思った柏木先生……キレたんですよ、はは」
「えっ!? カシワギサンが……キレた?」
「ええ、まぁ暴れたりとかではないんですがね。で、彼のその姿を見て、私達も、もうここまできたら小手先の策はヤメにして、現実を素直に受け止めようという事になったわけです。もう遠慮なくにですね」
ドノバンは、その悟ったような二藤部の口調に訝しがる。
もしかしたら、とんでもない時に自分は二藤部に会いに来たのではないかと……
「そ、総理……一体何をお考えなので?」
「大使、貴女にはお話しておきましょう。貴女には色々と尽力していただいた御恩もあります。そして、なんだかんだ言いましても、率直に言えばこの地球における自由主義社会の盟主は貴国で、わが国の重要な同盟国でもあります」
「はい……」
「で、今から申し上げる事、ハリソン大統領にお話しするしないは、あなたのご判断に委ねます。そして、もしお話しするのであれば、貴国に利益になる案件もご用意しております」
「それは……例の中国が発議した、『ヤルバーン地球外退去命令』の件でしょうか?」
コクリと二藤部は頷きながら……
「今回、私に面会を求めていらっしゃったのも、その件も含んでのことでしょう? 大使」
「ええ、確かに……その判断材料を取集するためにというのも正直あります。総理がそこまで仰るのであれば、私も率直に申し上げておきましょう」
「はい」
「で、そのお話いただける事とは?……」
二藤部は傍らに用意しておいた書類を取り、ドノバンの前に差し出す。
「それは……これをお読みください……」
………………………………
……201云年、尖閣事件から一週間が過ぎたある日。
政府は、もう日本の名物ともなった総理記者発表を行う。
しかし今回は今までとはちと趣向が違った。
なんと、ヤルバーン自治区首長兼大使のヴェルデオとの共同記者会見である。
ヤルバーン、いや、ティエルクマスカのマスコミ禁止法への配慮もあってか、日本のマスコミは今まで直に……玲奈という例外を除いて……彼らへの直接的な取材は公安の目もあって避けてきたのであるが、ヴェルデオというヤルバーンの親分直々にマスコミの前へ姿を晒すと聞けば、今日のマスコミのみなさん。各局最高の人員で臨んだ……しかも総理との共同記者会見だ。これは只事ではないと誰もが察する。
NHKアナウンサーが話す。
「首相官邸から中継です……先の、中国による我が国の領土、尖閣諸島を、中国がいう所謂『反動勢力』が、侵害した事件について、中国政府の対応に対し、本日、この件についての二藤部内閣総理大臣と、ヴェルデオ・バウルーサ・ヴェマ ティエルクマスカ自治区長兼連合大使の共同記者会見が行われる予定です。現在、会見予告時間を10分過ぎておりますが…………え? 出てきた? はい……え、今、二藤部内閣総理大臣と、ヴェルデオ大使が官邸記者会見場に到着した模様ですので、現場と中継いたします」
テレビには、いつものように大きく
【総理大臣・ティ連大使共同記者会見】
と、デカデカと映し出される。
……二藤部とヴェルデオは二人揃って会見開始予告時間を10分遅れて姿を現した。
二藤部が先に出るが、ヴェルデオを平手で誘い、先に壇上へ上がるように、にこやかに促す。
ヴェルデオも会釈し、壇上に上がると、演壇の手前で国旗の方を向いて、ティエルクマスカ敬礼。演壇へ。
これがティ連式の国旗敬礼だ。
VMCモニターを造成させて二藤部を待つ。
二藤部はいつもの通りの敬礼で演壇へ。そして、お互いにこやかに握手。身振り手振り交えて笑いながら話している。
しかしその様子を見れば、二人の親密ぶりが見た目にわかる。なんせドノバン相手にスパイごっこをした仲である。
それを捉えるカメラマン達。フラッシュがパシバシと炊かれる。
そして進行係が会見の開始を告げる。
「えー、それではただ今から二藤部内閣総理大臣、及び、駐日ティエルクマスカ―イゼイラ大使であるヴェルデオ・バウルーサ・ヴェマ閣下との共同記者会見を行います。本日は、事前にマスコミ各社に告知致しました通り、政府からの重要な発表がございます。従いまして今日の会見は特に終了予定時間を設けておりません。その点、よろしくお願い申し上げます……では、冒頭、総理から発言がございます。そしてその次にヴェルデオ閣下より発言がございます。今回はいくつかの案件にわけて、総理、及びヴェルデオ閣下よりお話がございます。マスコミ各社はその点ご留意下さい。質疑応答はお二人のお話が全て終わったあとになりますので、よろしくお願い致します……では総理、お願いいたします」
二藤部は頷くと、懐から原稿を取り出して演壇に据える。
「本日、今お話にもありましたとおり、いくつかの重要な案件に関して、国民の皆様、そしてこれをメディアを通してご覧になっている世界各国国民の皆様にお伝え致します……先般、我が国の領土であります尖閣諸島に、中華人民共和国の、所謂中国政府の主張する『反動主義者』が起こした軍事侵攻について、中国が我が国に対して身に覚えのない非難を世界に向けて発信しているようですが、その不当な非難に関する証拠の提示を行います。これが第一点……そして第二に……今回の尖閣諸島事件で世界各国から現在我が国に説明を求められております、ヤルバーン自治体、及び、ティエルクマスカ銀河連合、及びイゼイラ共和国と我が国の関係に関するこれまで非公開としてきた情報の全開示を行います。第三に……今後のティエルクマスカ銀河連合及びイゼイラ共和国と、我が国に関する重要な事案をご報告させていただきたく思っております」
テレビでは、二藤部の言葉に合わせて、テロップがタイミング良く画面に表示される。
その内容を表示させるために、テロップの文字は小さめで表示されている。
【1.尖閣諸島の中国による不当な非難に関する反論】
【2.ヤルバーン、ティ連・イゼイラに関する特定機密情報開示】
【3.日本とティ連の今後についての重要な発表】
こんな感じである。
記者たちは少しざわつく。
というのも、今や異星人情報に関しては、さほどサプライズになるよう重要なものがあまり出てこない。
しかし事前告知されてきた情報が、あまりに今までの日本とは違うため、記者達もかなり緊張していた。
「……さて、まずはわが国の領土である尖閣諸島、魚釣島における、中国の不当な侵攻、占拠についてであります……中国はわが国に対して、10000人もの解放軍兵士を虐殺されたとわが国を非難いたしておりますが、これはまったくの事実無根であります。ただ今からその証拠である映像を提示いたしますのでご覧下さい」
二藤部がヴェルデオに顔を向け、頷くとヴェルデオも頷き返し、PVMCGを操作する。
すると、大きな60インチぐらいはあろうVMCモニターを二藤部の横に造成する。
その様子に、会場は「おおお~」とどよめきが走る。まさか総理記者会見で、こんな技を二藤部が使うとは思ってもいなかったためだ。
二藤部は「まずこの映像をご覧下さい」というと、かの戦闘で件の『14式トンビ君』が捕らえた見事な映像を流す。
そこに映るは例のフリゲートに詰まれた死体の山。
「えー、一見すると、この映像は吐き気を催す死体の山の映像です。これが中国の主張する証拠映像とされているものと同種の映像です……もうしばしご覧頂くとご理解できると思いますが……」
その言葉のしばし後、死臭漂いそうな死体の映像から、死体の血糊や体の傷などが霧散し、普通の、単に気絶したような状態の人の群れになり、中にはむっくりと起き上がり、周りをキョロキョロしている兵士が映し出された。
この映像に、記者達は立ち上がり「えええええ~」と、まるで壮大なマジックでも見ているような状態になる……実際そうなのだが……
「中国側は、ネットやマスコミで、モザイク等をかけ、先の死体の映像のみを公開しているようでございますが、あの映像には続きがありまして、実際はこのような映像なのであります。その詳細は、ヴェルデオ大使閣下にご説明いただきたく思います。大使、お願いできますか?」
二藤部は、この映像の種明かしをする。その種明かしは、ヴェルデオへバトンタッチ。
『ハハ、はい畏まりましたファーダ……エ~、まず、この映像、チキュウ、そしてニホンの皆様は、まるで何かのトリック映像のように思っていらっしゃる方もあろうかと思いまスが、まぁ、種明かしをすると、実際の所その通りなのでありまス。そして、そのトリックはこの映像ではなく、かのジエイタイが行った作戦に協力をさせていただいた我々ティエルクマスカが持つ技術をフル活用しタ、とある技術によるものであります……』
ヴェルデオは、彼らの持つゼル造成シミュレータシステムについて解説した。
その説明中、係員がコピーの資料を記者達に配っている。
ゼル造成シミュレータ技術。それはもう日本では見慣れつつあるヤルバーン乗組員が使うVMC技術と、生物の脳へ擬似感覚を誘発する何らかの技術の波動を送信する……元々は医療技術である『感覚エミュレーションシステム』そして、地球でも現在研究中の単純ホログラフ技術などの数々の高度なティエルクマスカが保有するVRシステムを使用した……超絶リアルな『フィクション』であると説明した……
『……コノ、今、ここにありまスモニター等にも使われている技術ですネ、これらを複合的に使用したものでス。そして、これら技術は、私達の国では、普通に娯楽施設などでも使用している技術デありまして、特に特別なものではございませン……今回、この作戦を立案しました、ニホン国のティエルクマスカ担当大臣、ファーダ・カシワギ・マサトから依頼を受けまして、『ニホンのジエイタイという、法的に制限がある武装組織が効果的に、テロ組織等々に“警告”をできる方法がないか?』 というご相談に対し、我々がこの方法をご提案させていただいた次第でありまス』
ここは少しヴェルデオはブラフを入れた。
この作戦をイチから考えたのは、キレた柏木大臣様であるが、自分達が考えたという事にしておけば、後々彼に波風は立たないだろうと、咄嗟に気を利かせてそういうことにした。
そして、ヴェルデオは二藤部へバトンタッチ。
二藤部はヴェルデオに微笑を浮かべながら握手をする。
「えー、これでお分かりのように、我々は現行の国内法に則り、可能な限り死傷者を出さずに人道的な方法でかような『治安出動』に基づく不法入国、占拠者の『国外退去処分』を行いました。この作戦に参加したのは、自衛隊から選抜された最精鋭の人員で構成された部隊でありまして、これの詳細に関しては、現在、明言を差し控えさせていたきますが……本処置において強制的に『国外退去処分』といたしました中国軍兵士に関しましては、これもヤルバーン自治体が保有する『バイタル登録システム』という技術で、一人一人その『生体データ?』を取得し、今現在どこにいるか、詳細な所在地を一人残らず我々政府は把握しております。コレに関しては、先ほど係のものがお渡ししました資料の巻末に、一部ではありますが添付させて頂いておりますのでご参考下さい……」
二藤部は言いなれない専門用語をかみながら話したり。
「……以上の様に、今回の、所謂『魚釣島事件』に対するわが国の事件処理に関する詳細の開示とさせていただいます。従いまして、繰り返しになりますが、この度の中国政府の我が国に対する非難は、まったくの荒唐無稽な発言であり、かような我が国に対する非難に対し、厳重な抗議を、さきほど駐日中国大使にいたしましたことを付け加えさせていただきます。更なる詳細資料は、映像等々、後日、防衛省と、ヤルバーン自治区のホームページで公開いたしますのでそちらをご覧頂くようお願い申し上げます……では、これで先の魚釣島事件の詳細の説明は終了いたします」
……会場の記者達は、唖然呆然という言葉すら当てはまらないぐらいに、何か狐につままれたような顔をして石化していた……
そして、それにも増して、日本政府がこんな物凄い超絶な技術を、さも当たり前の物の如く、サラっと提示、開示してきたことに恐ろしさすら感じていた……
それも当然である。
彼らとてプロの記者だ。薄々こういった技術の情報を日本政府は隠し持っているということを予想はしていたが、あまりに当たり前に、まるで普段使うホワイトボードか液晶モニターのごとく晒してきたのだ。
一体どうしたんだと、ソッチのほうに驚く記者も少なからずいた……無論、夢魔作戦の真相も含めての話だ……
………………………………
北京では、この放送を観る張徳懐国家主席が、大笑いをしつつ見ていた。
「はっはっはっは! そうか、こういうトリックだったのか……フフフ、二藤部もよくやる……いや、違うな、柏木先生か……フフフフ、なるほど、我々の真意を見事に読みおったか……」
その言葉に側近が……
「如何致しますか? 同志主席」
「もちろん国内のメディアはすべてこの情報をシャットアウトだ。それにここまでの壮大で荒唐無稽な日本の作戦、そら簡単に世界も納得して信じはすまい。まぁ確かに外星人技術という裏付けが出来てしまった以上、対日向けにあの報道はもう使えんが、国内向けには充分使える。まだまだ活用法はあるよ」
「では報道官には?」
「『噓も言い続ければ真実になる』という……あの外星人の技術、たしかにスゴイが、今の地球で一体何処の誰があの技術を検証できる? まぁ、そういう感じにしておきたまえ」
……中国の常套手段である。
例えば、南京大虐殺30万人がいい例だ。この馬鹿丸出しの理屈を、今持って信じている『日本人』もたくさんいる。
よくよく冷静に……ならなくてもわかることだ。
30万人だ……『さんじゅうまんにん』である。
甲子園球場で、虎縞球団をメガホン叩いて応援しているあのものすごい人数のファン。あれでもせいぜい5万人である。
つまり30万人とは、あの球場6杯分の数である。
そんな人間が死んで、どこかに処分するなら、その死体の山で登山ができるだろう。
しかし、南京では、そんな死体の山どころか、入れ歯一個出てきてはいない。
そして、原子爆弾が広島に落ちた時、あの原爆でさえ28万人殺すのがやっとだった。
では、当時の南京駐留の日本軍は、原爆並みの戦力を持っていたのかと。
柏木はもしそうなら『俺は南京の日本軍を尊敬する』とさえ、皮肉交じりに言っていた事がある。
それでアメリカに負けてたのでは世話がないと。
30万発以上の弾薬、30万人以上斬ることができる恐るべき材質で出来た軍刀、そりゃ確かにティエルクマスカは、日本の技術を欲しがるわと。
結局、常識のある人に、理性で自分の主張を訴えるには、常識の範疇で話をしないと、それが被害者でも詐話師になり、逆に犯罪者になるいい例である。
すなわち、現代社会では『倍返しだ!』は、法と常識の世界では通用しないという事なのだ。
だから、あの『倍返し銀行マン』も結局は左遷された……
……それはさておき……
ところ変わって米国ホワイトハウスでは、件の中国が発議した【ヤルバーン地球退去令】に関する事もあって、ハリソンとリズリー、それに統合参謀本部議長やらと、お歴々が日本からの中継に見入っていた……
「オー・マイ・ガッ! ニトベ……それが日本の回答か……」
ハリソンは渋い顔だ。
以前、彼は二藤部に『ティエルクマスカとの交流が、福音か災厄か、よく考えてほしい』と訴えていた……彼はこの『共同』での記者会見が、その回答だと悟った。
「大統領、今回のウオツリ事件で、日本が在日米軍の出動を制したのはこういうことだったのですね……」
「ああ、議長……あんな技術でやられたら……イゼイランのトランスポート技術やメック兵器でやられるより効果がある……確かにこれ以上ない『警告』だよ……」
するとリズリーが……
「しかし大統領、もしそうでも、チャイナの使う兵器はホンモノでしょう。それでニホン側に死傷者が一人もいないという情報がどうしても解せませんが……」
その問いに参謀議長は
「おそらくイゼイランお得意のシールド技術か何かを使っているのでしょうな……あのエアソフトフィールド内では、どんな武器を使おうが、イゼイランとニホンが設定した……いうなればゲームマスターの世界で戦うわけです。どうあがいても勝てるようなものではないでしょう」
しかし実際はそこまで都合は良くない。
事実、艦砲や戦車砲などの高威力火器には警戒していたのであるからして。
ハリソンは、これでロシアや中国、EUの一部から日本との同盟関係をどうするのだと、やいのやいのとややこしい事が発生するぞと胃が痛くなってきた。
しかしリズリーは、そんなのお構いなしにこれからの懸念をハリソンに話す。
「大統領……国連安保理の採決、我が国は棄権したほうがいいのでは……」
当然だ。ここで反対などしようものなら、中国と完全に敵対する可能性がある。今の米国は、中国経済、そして中国マネーはもう止めることが出来ない状況なのだ。正直、こと経済に限って言えば、日本より上の優先度であるのは事実である。
かといって、先の『日本要塞』を堅持して、国内立て直しを図りたいというのもある。
もちろん賛成という選択肢は米国にはない。そんなことをすれば、日本とは確実に切れる。そして今の日本。米国と切れたところで……何ほどのことはあるまいと直感していた。その理由は、今更言うまでもなかろう。
となれば……「棄権」しかないのだが……
……すると補佐官の一人が大慌てて会議室に飛び込んでくる。
「ハァハァ……だ、大統領閣下、ド、ドノバン大使から、し、至急電です……ハァ……」
「ん? ドノバン大使から?」
補佐官は、息切らせながらプリントアウトされた書類を渡す。
ハリソン以下お歴々は、訝しがる表情で、そのかなり長めの文章を読んだ……
そして……
「………………なに?………そんな……そんなことが……こ、これは!……」とハリソン。
「えっ!……まさか……日本は本気で……いや、今の日本なら……」とリズリー
「いや待て待て待て……この提案だ……これは……もし本当なら捨て置けんぞ……」とハリソン。
「もしそうなら……大チャンスですぞ大統領。仮にブラフでもアジアのややこしい連中には効果抜群です」と参謀議長。
「ああ、これが本当なら、棄権なんてする奴はバカだ……」とリズリー。
「では、反対に?」と補佐官A
「反対か……今、賛成国はどのぐらいなんだ?」と大統領。
「50:50ですね……中国の息のかかったアフリカ諸国が痛いですな」とリズリー
チっと舌打ちし、コクコクと頷くハリソン。
ドノバンの報告で、もう記者会見などどうでも良くなった。
すぐにドノバンの報告に関する会議に内容を変え、関係者を集めた……
………………………………
記者会見は続く……
しかし、記者達はこの最初の一発目で度肝を抜かれてしまい、「なんでこのタイミングで質問させてくれないんだよ馬鹿野郎!」と思っていた。
しかし物事には順序がある……
まだまだ彼らの記事のネタになる話は事欠かないのが今日の会見だ。
ネットの反応も見たいところだが……残念ながらあの死体映像のマジックが公開された時点で、サーバーがパンクした……
人大杉という奴である……
「さて、次ですが……今回、中国の取った行動によって、我が国は、やむをえぬこととはいえ、法に則り、ヤルバーン自治体との協定、即ち、国際協定に則り、かような行動を行ったわけでありますが、これによって我が国は、ヤルバーン……いえ、イゼイラ―ティエルクマスカとの政府レベルでの交流が如何様なものか、世界のみなさまに再度、発信するに至ることとなりました……従いまして、今回、ヴェルデオ駐日大使と協議した結果、我が国とティエルクマスカ、特にイゼイラ共和国と親密な交流を持つに至った経緯である、件の所謂『竹取物語案件』の進捗も含めて、現在判明していること諸々、諸情報を可能な限り全面的に公開する事を決定いたしました……」
二藤部は、以前、柏木がイゼイラから帰国する前に行った、概要程度の公開ではなく、現状判明している可能な限りの交流・国交に関する情報を公開すると話した。
先のVRマジックだけでも新聞の全ページを埋めれそうな内容なのに、まだそんな情報を出すとは、今日の二藤部はどうしたんだと、記者の方が心配してしまう感じである。
しかし、彼らも仕事である。その話を聞き漏らす訳にはいかない。
「……さて、この件に関しましては、私の口からよりも、当事者であらせられます、ヴェルデオ大使閣下からご説明いただけるという事ですので、お話を譲りたいと想います……では、ヴェルデオ閣下、よろしくお願い申し上げます」
『かしこまりましたファーダ・ニトベ……ではまず……』
そうヴェルデオがいうと、PVMCGを操作し、先ほどの大きなVMCモニターの画面に【English(英語)】【Français(仏語)】【Español(スペイン語)】【Deutsch(独語)】【Русский(露語)】【한국어(韓国語)】【中文】といった各国語の文字タイトルを出し、この下に自分の言葉が同時翻訳されて流れるので、日本語以外のネイティブな意味を理解したい場合は、こちらを参照してくれと話す。
これだけでもすごい技術である。
そしてさっそく、今話している言葉もツラツラとその言葉で流れていた。
記者達もありがたい話である。
なぜなら、ビデオカメラか何かでこの翻訳文字を撮影しておけば、後で音声を原稿に書きだす必要がないからだ。
『サテ、このたび、私は我が国の法で禁止されている営利企業報道組織の前で初めてお話しする事ニなりますが、今回は本国より許可をもらっていますので、記者のみなさまにおかれましてはその点、予めお断り申し上げておきます。どうぞ今回は質問の際でも、お気軽にご質問下さイ……では……」
そういうとヴェルデオは話す順序を少しVMCモニターで整理し……
『……マズ、先のカシワギ・ダイジンが、我が母国イゼイラから帰還した折に、ファーダ・ニトベがお話ししました事実に関しましてですが、その情報はあまりに沢山の事案を抱えておりますので、今回、先のファーダ・ニトベが公開した情報を補足させた確定事項を中心にお話しさせていただきたいと思いまス。そして、それが今回公開するにあたって最も重要な部分であると認識しての事とお考え下さイ……』
ますヴェルデオは、地球でカグヤヒメに相当する人物が、なぜに地球へやってきたかを話す。
『今を去ること、地球時間で約1000ネンほど話はさかのぼりまスが、我が国のある人物が、ワープ中の宇宙船事故により、その宇宙船から脱出いたしました。その人物はある不治の病にかかっておりまして、その治療法を求めて親近者が連合内の他国へ移動している途上の出来事であったわけですガ……その事故自体もかなり絶望的な状況で、その人物も意識不明の状態で、医療ポッドごと、何の付添人もなく、たった一人の状態で脱出ポッドに押し込まれ、緊急で打ちだされたのであります……』
ヴェルデオは宇宙船の事故の経緯や詳細など、詳しいことを話してもあまり意味が無いと考え、とにかく状況をわかりやすく理解できるように話す。
記者達はコクコクと頷きながら、タブレット・ノートパソコン・メモで速記と腕を動かす。
テレビ画面では、二藤部の姿をアウトさせて、各社ヴェルデオへ集中的にカメラを向けていた。
ヴェルデオは、その人物が、ワープ空間で生じる特殊な時空間現象で、信じがたい距離を飛ばされて、この地球圏に達したと話した。
『……ソシテ、その人物の乗ったポッドはこのチキュウに不時着致しましタ……我々が調査した研究の結果判明したことではありますガ、このニホン国のカンサイ地区のどこかに不時着したと考えられておりまス。この件についてはまだ調査中でありますが、いかんせん資料が少なく、この不時着地点は今後の調査待ちというところにナリマスな……で、その人物は、我が国の記録では現地民、つまり当時のニホン国一般市民に保護され、後に、当時のニホン国皇帝の庇護下にあったと聞き及んでおります』
ただ、それが日本の歴史上の人物で、誰かまでは特定できていないと話す。
そして……ヴェルデオは、記者がこの件で一番聞きたい事を皆に話す……
『サテ、はは……記者のみなさンが、この件で一番お知りになりたい当該人物でございますガ、あまりマタせても申し訳ないので、その人物がどういう人物か公表いたしたいと思いまス……』
記者席はざわつく。
この発表で、日本の国体がかわってしまうやもしれない……そんな情報である。
これで『実は食堂のコックでした』とかだったら暴れるぞと……
『ソノ人物の名は……『ナヨクァラグヤ・ヘイル・サーミッサ』と申します。そしてその人物の身分ですが……ミナサマはもうヤルバーンのほーむぺーじで、我が国の沿革をご覧いただき、ご存知かとは思いまスが、我が国は、はるか昔、現在の共和体制になる以前は帝政国家でございましタ。その帝政国家時代における我が国の……最後の『女帝』が、この件の人物であります……』
その言葉に……議場は唖然とする……
まずその名前だ……ナヨクァラグヤ……ナヨカグヤ……なよ竹の迦具夜……バンザーイ……
しかも……女帝……
但し、ヴェルデオは、女帝は後の話で、当時は『皇女』であったことも付け加える……それがどーしたと記者達はざわめく。
更にヴェルデオはトドメの一撃。
『デ、このナヨクァラグヤ帝、その肖像シャシンも残っておりますので、どうぞ記者のミナサマ。記録装置にお収め下さい』
ヴェルデオは、PVMCGを操作し、かの絶世の美女、白い肌に綺羅びやかな羽髪頭髪のナヨ帝肖像データを、中空にどでかくポっと表示した。
その瞬間、カメラのフラッシュが炊きまくられ、「おおおぁぁ~」という声が会場にこれまでにないほどの大きさで響く。
この瞬間、会見放送の瞬間視聴率が、日本最高を記録した。
渋谷、新宿、大阪梅田などのランドマークモニター。
家電量販店、ワンセグ、茶の間のテレビ。
そして、世界中のテレビ映像。但し一部国を除く。
みんな手を止め、足を止めて、その肖像映像に釘付けになる。
「うわ~きれ~……」と言うは、渋谷の彼待ちをしていた女子大生
「なんじゃこりゃ……本当に姫さんかよ!」と言うは、新宿のホスト。
「こらごっつい別嬪さんやなぁ……」と言うは、大阪梅田、喫茶店のマスター。
しかし、勘のいい人や記者は、その写真を見て気づく……
その中の一人……東京某所銀行で休憩中の山咲恵美さん……
「でも……これって誰かに似ているような……う~ん……あ……ああ!……あああああ!??……」
無論、官邸の記者も気づく……
大きな声で隣の記者と……
「なぁなぁ、あの帝さん……面立ちがフェルさんに似てないか??」
「確かに……言われてみれば……アゴのラインの細さとか……目元とか……」
ヴェルデオはその記者達の話を聞き、クククと笑う。
そして……某人物に予め許可をもらっておいたので、その事を公表することにした。
某人物は、最初「エェエェェエエエエ……」といったとか言わないとか。
しかし、ここまで来ては、生き証人のアナタが一番の証拠だと、みんなで合掌してお願いした……これはヴェルデオもサイヴァルもマリヘイルも……
で、愛する突撃バカの「☆お願いだよ……俺がちゃんと守ってやるからさ……☆」という柄にもなさすぎる乙女ゲーのような甘い一声で一瞬にして許可を出したというその人物の名……
……ちなみにその突撃バカは、やむを得ずとはいえ、そんな甘い一声を出した自分に、官邸トイレに篭ってしばし嫌悪感に苛まれていたという……
『え~……お気づきの記者サマもいらっしゃるみたいデすが……このナヨクアラグヤ帝の子孫こそが……ミナサマも既にご存知の、フェルフェリア・ヤーマ・ナァカァラ議員、兼、調査局局長でございまス……フェルフェリア局長の本名は、『フェルフェリア・ヤーマ・ナヨクァラグヤ』と申しまして、もし我が国がまだ帝政国家であれば、帝位継承権を持つ人物でもアリマス……』
この瞬間、世の中はドッカーンである。
もう何処の掲示板もサーバーがパンクした。
わくわく動画ライブもメンテナンス中になった。
フェルさん=ナヨ帝の子孫=かぐや姫の子孫=水爆。
バカでもわかるこの構図。
記者席はもう怒涛のクラブへダッシュである。
号外の原稿を入れないとと、記者会見の体をなさなくなってしまった……
二藤部はヴェルデオの方を向き、両手を横に上げる。
ヴェルデオも二藤部の方を見て……同じ仕草。
彼らはもう知っているからどうということはないが、あの、初めて聞かされた時の病院送りが出た衝撃が……日本、いや、世界規模で走った……
………………………………
「はぁ~……まず、ツカミはOKという奴ですね……」
官邸の会議室で記者会見を観る銀河バカ。
『モー……マサトサン……私恥ずかしいデスよぉ……せっかくイキガミサマから解放されたと思ったのにィ~……』
プーーとするフェルさん。
「いや、フェル……いつかはわかってしまう事なんだしさ、一般のイゼイラ人さんが地球にやってきたら、結局一緒だろう。なら、今のうちにカミングアウトした方が絶対いいって。最初に話して、市民権得た方がね……あとでバレた方が、絶対に、もっとややこしくなるよ」
『確かニソレはそうですけド……』
「まぁ、そんなに心配するなよ、流石に日本人や世界の人は『イキガミサマ』なんて思わないって」
そういうと同席する白木も……
「日本じゃ、法律漫談やってる保守な陛下の家系な玄孫さんや、昔の有名武将の子孫で、おもしろスケーターなんかもいますから、大丈夫ですって」
「いやいや白木……例えが……本人に失礼だろそれは……」
「いや、それぐらい寛容だってことだよ」
「ま、まぁなぁ……」
三島も白木の言葉に同意して……
「俺だってこんなんだけどよ、ご先祖はみんな教科書に乗るような連中ばっかだぜ。でもそんな風に思ってもらった事なんざ一度もねーけどな、ガハハ、それどころか眉毛の濃いスナイパー扱いだぜ」
「三島先生、それはそれでなんか違うような……あの写真私も見ましたけど……」
そんな話を聞いてフェルも、微笑して「まぁいいか」と思う。
確かにカグヤヒメさんは、なんだかんだ言ってお伽話だし、生き神様まではいかないかな? と。
有名なのは今までも有名だったし……と……
で、この話が出た後、タイミングを見計らったように三島と白木、そして新見は柏木にある話を持ちかける。
「でよ、先生。おたくら二人……まだ、籍いれてねーんだろ?」
「ええ、まぁ……法整備もありあすしね、多分選挙後なのかなとか、そんなところで……」
すると、三人はお互い顔を見合わせて、ニィ~と笑うと
「新見君、アレ、いけるな」
「ええ三島先生……白木君……」
「了解であります統括官」
そういうと白木はゴゾゴソと鞄から何か書類を取り出す。
すると、白木がスっと取り出した書類……それは……
『婚姻届』だった……
「は? なんっすかそれ」
柏木先生、何のつもりだと訝しがる。
『マサトサン、これは何の書類ですカ?』
「え? あ、いや、日本の婚姻届」
『ほェ? で、でも、日本の法律で、前例がないからまだ難しいとか言っていませんでしたカ?』
すると三島が……
「先生、これ渡しとくからさ、近々に、役所へ提出しといてくれよ」
「は……はぁ?……い、いや、ま、まぁいいですけど……大丈夫なんですか?」
「ああ、そこんところは新見君がチョコチョコっと手を回しとくからさ。な、頼むよぉ……」
白木も……
「これに判つけば、お二人は晴れてご夫婦だ。あ、フェルフェリアさん、ハンコ、作っときましたので、コレ使ってください」
ハンコを渡そうとする白木の手を柏木は制し
「お、おいおいおいおい、ちょっとまてちょとまて…………三島先生ぇ……今度は何の悪巧みですかぁ?」
「あ、バレたか……」
三島は素直に肯定。この連中が自分の事思ってこんなお節介するわきゃないと。
「やっぱり……」
チッという顔を笑いながらする三島。
しかしフェルサン。婚姻届を見て、手がプルプル震えている。
無意識に判を取って、フラ~~っと押しそうな感じ。
「あ、フェル! 待った待った!……って、みなさん、なんなんですかこれは!」
すると白木が……
「え? 意趣返し」
「はぁ!?」
「だってよ、ここんところおめーの爆弾でこっちゃやられっぱなしなんだぜ。たまにゃコッチもやることやらねーと立場ないだろ……協力しろ」
「いやいや、それとこれと何の関係があんだよっ」
すると三島がちょっとマジな顔で……テレビ画面をクイと顎で指し
「先生、これは総理の今の会談にも関係する事なんだよ」
「え? で、私とフェルの入籍とどういう……」
三人は、眉をあげて「話すか……」という感じで、頷きあう。
三島は指をクイクイと曲げて「耳を貸せ」と言う。
「?」な表情でフェルと柏木は顔を突き出す。
「(いや、実は総理な………モニョモニョ………………)」
・
・
・
・
・
・
「えっ! ええええええええええええ!!!!!」
『ほぇ? エエエエエエエエエエエエ!!!!!』
のけぞってぶったまげるフェルと柏木。
今日の会見場にいる記者並である……いや、二人は今までで一番ぶっ飛んだ。
ま・さ・か……総理がそんな手を使ってくるとはぁぁっ! と……
「で、フェルフェリアさん、その話、総理とサイヴァル議長、マリヘイル議長ともホットラインで話つけてるんですわ。どうですか? 考えてもらえませんか?」
『…………ハ、ハァ……そういわえれまひてモ……』
ろれつが回っていないフェルさん。
サイヴァル、マリヘイルと相談しないと……と言うが、よくよく考えたらもう話はついているとかなんとか……
「いや、ちょっと、待ってください三島先生! 総理も総理ですよ……こんなの……実現できるわけないじゃないですか!」
「それができるんだなぁ~……別に法的には一切問題ないぜ」
「え? あ、あああ、ま、まぁそうなんでしょうが……フェルの仕事や立場の事も考えないと!……白木! オマエも何か言えよっ!」
「え? 俺、首謀者A」
「は、はぁ?……あ、そうか……チッ、もう……フェル、断るならきちんと断って……」
ちょっと顔を紅潮させて反論する柏木大臣。
『……』
瞑目して腕組んで考え込んでるフェルさん。
『…………』
フェルさん、傍でフォローしているつもりのマサトサンをよそに、腕組んで瞑想するかのごとく考え込む……
……そして……
『マサトサン……』
「あ、ああ……断るなら早い方が……」
『イエ……そのお話、お受けするデすよ……』
一瞬石化する柏木大臣、「あ?」という顔で静止する……
「……お、おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいフェル! 冗談じゃないんだぞ、本気か!」
『ハイです。マサトサン。これは……よくよく考えてみれば、日本国民のミナサマにご恩を返す最高の機会です……それと、ニホン国とティエルクマスカやイゼイラの事を考えれば、最高のチャンスでもありまス……マサトサン、籍を入れましょう』
「え? でも……」
『ウフフフ、マサトサン。心配要らないですよ。これでマサトサンとも一緒にずーっといられるのデス。私はとても嬉しいデス……ファーダ・ミシマ……ファーダ・ニトベへ、素晴らしいご提案に敬意を表しますとお伝え下さイ』
「はい、わかりましたフェルフェリアさん」
柏木はまだ何か言いたそうだったが……フェルはこれでも芯が強い。
ハァ……と吐息をつく柏木。
フェルはそんな旦那様の顔をみて、ニッコリ笑う。
「フッ……フフフ……意趣返しか……確かにね……ま、こんな意趣返しなら、い、い、か……」
柏木もあきらめた。
「但しお三方、くれぐれも……よろしくお願いしますよ……世論とか、護衛とか……」
任せろという陰謀三人組。
フェルは柏木の納得を確認すると……白木からもらったハンコで、ポンと婚姻届に判を押した……
判にはちっちゃなうねるような文字で「フェルフェリア・ヤーマ・ナァカァラ」と書かれてあった……
………………………………
官邸での記者会見は続く。
記者達は、所謂日本の有名な『竹取物語・かぐや姫』のモデルが過去のイゼイラの女帝であった事。そしてその子孫がフェルさんであった事を知ってしまった。
これには大きな意味がある。単純にそんなすごい人物が日本に昔来た。というだけの話ではない。
所謂宇宙を股にかけた国家元首であり、君主を、時の日本人はその身分を保証して、救助・保護していたのだ。
そして、その子孫がまた日本にやってきた。
これは誰がどう考えても……その目的が日本でなければならない理由であるとすぐに理解できる。
つまり、外国などハナからお呼びでない。関係性が皆無なのだ。
更にヴェルデオは、話を続けた。
それは、かの『精死病』の件である。
ナヨクァラグヤ帝は、ティエルクマスカ世界で何万年もの間、不治の病であったティエルクマスカ規模での連合的問題なこの病気の詳細を話した。
そして、現在までの歴史上、唯一の生還者がこのナヨ帝であったという事実も話した。
日本へイゼイラから救援隊を派遣し、保護した際には、完治していたという事実も話す。
『……この情報も今回が初公開になりますが……この精死病という病。実は、ある人物のご尽力で、既に我がティエルクマスカ連合では、原因をほぼ特定し、発症、発見から数万ネンの時を経て、やっと治療研究の見通しが立った病なのでありマス……そして、この治療法研究のアイディアを出してくださった方こそが、ミナサマもご存知の、ニホン国ティエルクマスカ担当大臣であらせられます、ファーダ・カシワギ・マサトでありまス』
記者の間からは「あいつか!……」という声が漏れる。
さもありなんという顔だ。アイツなら納得もすると。別に驚きもしないと……という驚き。
『ニホン国のミナサマ……わがティエルクマスカ連合、そして、イゼイラ共和国は、過去、そして現在と、かような、大きな大きな御恩が、ニホン国のミナサマにあるのでス……ワガイゼイラでは、そういう経緯もあって、実はニホン国に対する固有名詞がイゼイラ語で存在いたしまス。その言葉は『ヤルマルティア』という言葉です。語源はナヨクァラグヤ帝が、ニホンへ帰還する事を望んだ際に、頻繁に口にしたと言われている『ヤマトノクニの云々』というニホン語が、イゼイラ語風に訛ったものだと言われております。そして、イゼイラへ生還したナヨクァラグヤ帝は、この病の原因解明を国民規模で行おうという理想の元、後に皇帝へ即位して間を置かずに、帝、自ら帝政を廃し、共和制に移行させましタ。従いまして、イゼイラでは大変に尊崇の念を持たれている人物でもあるのです』
ヴェルデオは、そういう経緯もあり、この不治の病の更なる研究のため、そして、ナヨクァラグヤ帝を大変大事に扱っていただき、保護をしていただいた日本という伝説上の国の探索と、もし発見できれば、その恩を返すためにこの日本へ、遥か5千万光年彼方から国命を受け、やってきたと……その情報をほぼ全面開示した……
更に、精死病の原因解明に尽力してくれた柏木真人の知恵と行動力が、国命を受けた自分達の意思をさらに確固たるものにした……と……
実のところこの説明では、本来不十分であり、8割がたの開示にしかなっていない。
本当ならこれに、彼らが超文明の遺産の力を使ったことにより、タイムリミットがある歪な歴史を持つ文明であること。
そしてその終末を回避するために『発達過程文明』の探索も目的にあったこと。
このあたりもあるが、これは今回の会見の目的である、『ティ連がなぜに日本なのか?』という説明とは、あまり関係がない……はっきり言えば彼らの都合だ。なかったところでどうというわけでもない。この理由のみでいえば、交流する国は、別にアメリカでもロシアでもEUでも構わないからだ。
これらの説明は、また今後、イゼイラの歴史を日本が研究する上で、歴史学的においおい知ることになるだろうということで、今会見では省かれた。
しかし、こと日本とティエルクマスカ―イゼイラの関係という点だけで言えば、この説明で充分である。
そして、ヴェルデオは、かの日本の政教分離理念に則って『聖地』という言葉を最後まで使用しなかった……
今、日本の記者達の頭によぎる、ある言葉……
『情けは人のためならず』
『因果応報』
遠い過去の日本人が、異形の姿をした美しき天からの使者……天女を助け、短くない時間を共に平和に暮らし、また天に帰っていった……
その因果が、結果、彼ら『救世の地』である日本と、そこに住む人々の恩に報いようとやってきたのが彼らイゼイラ人であり、ティエルクマスカ連合人達だった……
確かに、彼らの国家的利益のためという側面はもちろんある。彼らの文明存亡を考えればそれは間違いない。しかしその理念は、かようなものだ……これもまた間違いのないことなのだ……
このヴェルデオの話を聞いた記者達は、もう驚かなかった。
それよりも、優しい口調で淡々と話すその物語に聞き入るしかなかった。
そして記者達は真剣に悩む……この事実を、国民にどう伝えようかと……
今日、各局が官邸に送り込んだ記者達は、ベテラン中のベテランばかり。各局のエース級記者達ばかりなのだ。
そして、そのベテラン記者達は、質問せずとも理解できた重要な点の理由も、容易に推測できた。
何故にナヨクァラグヤの子孫であるフェルが、ヤルバーンに乗ってきたのかを。
それは、彼らの主張に対する証人であり、証拠であり、そして……彼女自身が、その目で日本という国を見るために、自らの意志でヤルバーンに乗ってきたのだろうと……
日本各地の情報媒体でこのヴェルデオの会見を観る国民達……
いろんな場所で、その1000年前から、今現在まで続く悠久の物語に感動し、涙するものもいた……
京都、山代アニメの畠中も、当然この会見を見ていた……作業する日本人スタッフや、イゼさん達も手を止めて……
そして畠中は、ある事を決意する……
「なぁタっちゃん……次の作品、コレ行こうよ……次も継続で契約お願いするわ」
「そうですね社長、ノクタルもヒットしましたし……」
「そんなんじゃないよタっちゃん……コレ、やっぱ日本人としては、やんなきゃダメでしょ」
「ええ、わかってますよ……な、みんな……」
タっちゃん監督。イゼさん達の方を見る。するとみんな頷く……これで彼らの歴史も語られる事になり、日本中……いや、世界中がそれを知る事になるだろう……これがメディアの義務だと、畠中は思った……
そして、八王子市の柏木家。
「母さん……まさか、フェルさんが“かぐや姫”の子孫だったなんて……」
「父さん、かぐや姫じゃなくて、そのモデルになった方の子孫でしょ?」
「いや、それでも……真人の奴、とんでもない方を嫁にもらいおってからに……」
「ふふ、いいじゃないですか、自慢の娘になりますよ。我が家の」
「ははは、そうだな。そりゃそうだ……真人の奴、離婚なんざしおったら、許さんぞ……」
「今から何言ってるんですか……って、早く籍だけでもいれさせないとね」
……その点は心配無用である。
柏木家の実家の方々……もう、驚き慣れた……
………………………
そして、官邸では最後の案件に話が移る。
記者達は……『こんだけの話した後で、まだ何かあるのかよ……』と……
正直、精神が保たない……彼らは明日の紙面や、ニュースのテロップを考えてみる……
【かぐや姫の母国はイゼイラ共和国】
【フェルフェリア議員は、かぐや姫の子孫】
【1000年女帝の恩返し】
……関東スポーツかと……
どうすりゃいいいんだと悩む記者達。しかも、もう生中継で流れているライブニュースでは、デスクは相当な混乱なんだろうと……
ネット掲示板も未だに人大杉。避難所も避難できない状態。なぜならみんなそこに避難してしまうからである。
わくわく動画の佐古田も来ていたが、相当に焦っている。なぜならシステムが未だ復旧しないからだ。
「……さて、最後にこれからお話することは、先にお話しました二点の情報公開に関係する、我が国と友好国ヤルバーン自治体、つまりイゼイラ―ティエルクマスカ連合を取り巻く状況が、重大な局面に差し掛かってきているからであります……現在、我が国とティエルクマスカ連合、及びイゼイラ共和国とは友好条約を締結している関係にあり、きわめて良好な両国関係にありますが、こと、現在のヤルバーン自治体に関してのみで言えば、先にお話した、かような経緯により、我が国のみの外交関係が現在ある状況で、孤立しているのが現状であるのも否めない事実であります。しかし、彼らヤルバーン、つまりティエルクマスカ連合という主観で見ると、かような経緯もあり、我が国のみが彼らの外交対象であって、それを目的に彼らは5千万光年もの彼方からやってきたわけでありますから、彼らのその外交方針を否定する権利は、我々にはありません……」
二藤部は、ヴェルデオから発言をバトンタッチし、先のチャイナガーグの行動や、ヤルバーンの飛来目的、そういった事由を総合的に勘案した現在の日本の状況を丁寧に説明する。
ヤルバーンは、そういった所謂『伝説』を求めて日本にやってきたのであって、単純に大宇宙の国際関係を彼らの主観で見た、銀河レベルの政治パワーゲームか何かでやって来たわけではないのだ、ということをカメラの前で話した。
「……しかし……これはヴェルデオ大使。そして、ヤルバーン側が構築してくれましたホットラインを通じてサイヴァル・イゼイラ共和国議長、及び、マリヘイル・ティエルクマスカ連合議長ともお話をさせていただいたことではありますが……この地球世界においては、やはりヤルバーンの存在は極めて突出したもので、特異な存在であります。従って、その存在自体の地球世界に与える影響は計り知れず、何らかの形で地球世界の……所謂彼らの言葉で言う『地域国家』との接点は持ったほうが良いのではないか? ということをお話しさせていただきました……」
つまり、これは先の中国の行動が、今後かような状況を放置すれば中国だけでは収まらない……という意味である。
二藤部はそれを放置した結果、結局その混乱が地球全土へ緩やかに波及し、地球圏の文明に何らかの悪影響を世界レベルで引き起こすだろう……ということを両議長に説明した……と話した。
これは実際にそのとおりである。
今会談の前に、二藤部はホットライン量子通信を通じて、その事を二人に話した。
しかし、この話の内容……確かにそういった懸念もあるといったのではあるが……所謂……後付の理由である……
彼らティ連やイゼイラの渇望する状況を、世界へ効果的に訴えるための、現実的な理由……設定なのだ。
二藤部は、浜や春日、そして柏木や白木、新見達と協議して、かような理屈付けをした。
この理由付けは、二藤部の案がベースだった。
そして、これを日本が懸念していた『聖地』という宗教的概念を、取り払う理由付けとしたのである。
それら安保委員会メンバーが納得した理由付け……その結果の内容が……
来るべくして来た、日本国民全員の『覚悟』がいる内容であった……
「かような現在の状況を鑑み、我々日本政府は先般、ティエルクマスカ連合議長のマリヘイル閣下より、ある要請を提示されました……その提案は、今後の我が国において、おそらく後の歴史に残るであろう、重大な提案であると我々政府関係者は認識しました……その内容は、日本の歴史における国体そのものにも大変革をおこすものであり、我が国、国民全員で考えなければならないものであります……そして、その内容を公表させていただきます……」
この言葉にただならぬ雰囲気を感じる記者達。
脂汗をかき、固唾をのむ……みんなダッシュで記者クラブへ走っていける準備だ。
ランドマークや、お茶の間、家電量販店の展示テレビ……
みんな固唾を呑んでその発表を待つ……
「その内容は……『ティエルクマスカ銀河共和連合』への、日本国加盟要請です……我々政府は、この要請を受諾する方向で検討に入りました……」
記者席、一瞬の沈黙……
テレビテロップも、しばしの間をおき、以下の文字を大きく映す。
【ティ連は、日本へ銀河連合加盟を要請】
民法も、そのテレビ画面の上部に、テロリン……という音とともに、かような内容を表記する。
「おい……マジかよ……」
「……」
「何してんだ輪転止めろ! これを一面だ!」
「え!? そうだ、号外だ! もう一発行け!」
しばしの沈黙の後、記者達は騒然という言葉を通り越して、慌ただしく動く。
新宿のランドマークで、その発表を観る人々からは、お互い見知らぬ者同士で話を初め、拍手が巻き起こったり……
この発表の瞬間、日本株銘柄は大きく買われ……それにどういう憶測かはわからないが、台湾やヨーロッパ、ニューヨーク市場でも株価は大きく上がった。
この発表を観る、ホワイトハウスのハリソン大統領以下、スタッフ諸氏は、なぜか
「YES!YES!」
とガッツポーズをして拍手をしていた……
この日本の大きな動きに、なぜ米国が歓喜するのだろうか?……
そして、中国の張は……持った葉巻を箱に収め……瞑目し、大きくため息をつく……それは、自分の行った策が、かような結果を招いたからだとでも思ったのだろうか……
二藤部とヴェルデオは互いの顔を見て、頬を少し上げて微笑し、頷き合う。
『マサトサン……やりましたね!……』
「ああフェル、言っちゃいましたな、はははは!」
フェルと柏木は、三島や白木、新見のいる前で、抱き合い、オデコにチューをする。
その様子を観る三人も、満面の笑顔。
囲むテーブルの上には、柏木とフェルの判を押した『婚姻届』……その書類を新見が取り、懐へ収めた……新見が処理してくれるのだろう……
柏木家の実家では、近所の人が家にきて大騒動だ。
もうこの話題で宴会ができそうな感じであった……
ネットは……相も変わらず未だサーバーパンク中。
システムが復旧したわくわく動画では……
【二藤部さん……復旧した途端にこれですか……】
【地球連邦すっ飛ばして銀河連合かよ……】
赤文字で大きく
【日本は人類を裏切った!!!!!】
【赤文字チ○ンNG推奨】
【 ま た 柏 木 か 】
【かぐや姫に銀河連合、おまけにVR作戦】
【なんなんだよこの国……】
しかし、二藤部や柏木達安保委員会の攻撃はまだ終わらない。
必殺のトドメを用意していた……
進行係が「まだ重要な発表は残っている。着席を」と場を制し、記者達を落ち着かせると……
「……さて、今回、かような要請を受け、我々政府は受諾する方向で検討に入ったわけであります。そして、この要請内容は、野党各党にも既に打診しており、幸い各党も概ね賛成の方向で承諾を得ております……但し、一部安全保障のあり方や、地球世界での外交方針など、諸々の懸案事項もあり、我が国は今後、国家として、極めて一本化された強固な政策方針を求められるでしょう……それ以上に、かような国体の大きな変革を伴う判断でもあります。従って政府は、この国の主権者である国民の皆様に、この『ティエルクマスカ銀河連合加盟』への賛否を問いたいと考えました……従いまして、この度、本日をもちまして……」
二藤部は、この言葉の後に、しばし間を置いて
「衆議院を解散致します」
と、確実に国民へ伝わるように、しっかりとした口調で言った。
そして、国民に訴えるように……
「……そして選挙をもって、国民皆様お一人お一人が、各党が掲げる政策、主張をよく判断し、その一票を持って、今後の我が国のあり方を決定していただきたいと思います……」
そして、二藤部とヴェルデオは記者会見を終える……
記者達は、もう憔悴しきっていた。
記者会見は、開始から三時間が経過していた。
彼らはまるで、何か絶叫アトラクションを三時間ぶっ通しで乗らされていたような感じである。
そして、記者の質問へ移るが……一体何を質問したらいいやら……ってな感じであった。
それだけ今回の記者会見は、前例がないものだったのだ……
しかし、彼らはまがりなりにもプロである。無論総挙手状態で手が上がる……
産業新聞からは……
「中国の尖閣諸島侵攻の件だが、この行為が、連合の日本加盟要請の決断に影響を与えたのか?」
という、なかなかに核心を付いた質問をしてきた。
コレに対し、二藤部はもうはっきりと「そうだ」と回答した……当たり前の話だ。もうあそこまでティ連が日本との関係を深いものであると公言してしまった以上、さすがにもう『違う』と言っても誰が信用するかといった話である。
そして、朝晴新聞は……
「連合加盟に際して、日本の憲法9条との関連はどう調整するのか?」
という問いには、ヴェルデオが回答。
連合は、各加盟国の主権独立は完全かつ明確に保証しており、その国家独自の法は最優先で尊重されるが、連合全体の安全保障に関する『連合憲章』に定める規定は、連合の主権として加盟各国は守る義務がある。従って、今後イゼイラの政体、法等々を提示し、選挙後の政権と、日本の法に則した内容の法改正諸々の調整をお手伝いし、その点は今後イゼイラが最大限協力するので心配いらない……と回答した。
米国ユナイテッドニュースは……
「日本が連合へ加盟した場合の日米安保条約の扱いはどうなるのか?」とかなり深刻な顔で質問してきたが、その点も二藤部は……
特に変更はない、先の通り、基本は日本国の主権は変わらず維持されるので、日米安保条約も、日本という主権と米国との条約であって、連合はそれに何ら関与することはないので心配は無用。と回答した。
更には、米国へも通達してはいるが、ティエルクマスカ連合は、米国の日本に関する対応に関して、大変評価していると聞き及んでいる。従って、米国との同盟は、今後日本が連合へ加盟する際には、日本国を通しての、ティエルクマスカ連合主権との同盟であると考えてもらって差し支えない……と聞き及んでいると回答すると、その記者はかなり喜んでいるようであった。
実は、このユナイテッドニュースの記者が質問した事、これが世界の最も重要視する関心事であった。
つまり、日本がティ連へ加盟し、日本がティ連の主権体に参加すると言うことはつまり、現在日本と同盟関係にある国は、ティ連と同盟関係にあるということもできる。
これに喜んだのは日本と友好的な関係にある国、もしくは事実上の友好関係にある国である。
トルコ・インド・ベトナム・台湾・カナダ・南米諸国ほか諸々……
しかし、ここでヴェルデオはやんわりと釘を差した。
「日本と主権問題を抱える国は、たとえ日本と友好的な同盟関係を結んでいたとしても、連合側が同じくそう判断するとは限らない。基本、連合全体の総意と、各主権国家個別の政策は別のものである」
と……
これで一度はウキウキだった韓国は……竹島問題がある時点でアウトである。
韓国記者は、質問するために上げた手を降ろしてしまった……
やはり自覚はあるらしい……
台湾は、今後もしかすると、日本がその主権を認める方向へ動くかもしれない。
ロシアも、恐らく北方領土関係で動くだろう。ただ、中国との関係をどうするのか? という疑問も残る。
そしてその中国だが……
中国中華時報の記者は……今回、質問を一切してこなかった。
なぜなら、かの『魚釣島事件』で、情報がブラックアウトされているような状況である。わざわざ真実を暴くような真似はしないだろう。
そして、今回記者会見場にはもちろんいないが、一番恐怖しているのは北朝鮮である。
あの絶賛両足骨折中の若き指導者の主観で思うことは……自国の隣に、最悪最強の超絶軍事大国が、ポっと出来てしまうだろうという事。
今後、この国も何らかの動きを見せるのは必至だろう……
最後に……今や首相官邸記者会見名物、一服の清涼剤……
「総理、ヴェルデオ大使閣下、わくわく動画の佐古田です。よろしくお願い致します」
「はい、今日は柏木大臣は来ていませんが、私で良ければ……いつものですね?」
会場、疲れきった状態、この一言でみんな爆笑する。
今のこの状況、こんな一言でもありがたいと記者は思っていた。
『ヨロシクお願いいたします、ケラー・サコタ。貴局のドウガサイトは、我がイゼイラでも人気がありますヨ』
とヴェルデオ。「おお~」と会場から声が上がる。
イゼイラ人も、あの妙な「やってみた」やら「作ってみた」を見てるのかと。
「ありがとうござます。えっと……今、一番多い視聴者の質問は……3つあるみたいなのですが……」
「はいどうぞ」
「2つは大使宛の質問なのですが……『ナヨクァラグヤ帝の全身写真はありますか?』っと、まぁこんな質問なのですが……」
『ハハハ、はいございますよ。では、そうですね……こうしましょう。ヤルバーンのほーむぺーじに、ナヨクァラグヤ帝の特設コーナーを設けましょう。色々と記録写真や記録映像もございますので、そちらでご確認頂ければよろしいかと』
コメントは歓喜の嵐。
【大使ありがとーーー!】
とこんな感じの弾幕。
コスプレのネタにでもするんかいなと。
しかし、こういった視聴者は、やはり見るところはちゃんと見ているようで、次の質問では、結構ツボを付いた事も聞いてくる。
「あと、二つ目ですが……これは総理宛ですね……『ナヨクァラグヤ帝が、かぐや姫のモデルになったという決定的な証拠は何ですか?』という感じの質問が多いですね」
これに関しては二藤部が大きく頷き、顔を引き締めて回答する。
「はい、なるほど、とても良い質問ですね……まず、この件で、そのご質問が決定的になったのは、実を申しますと、件の柏木大臣がイゼイラへ訪問した際に、大臣……当時は大使でしたが、彼に託した、天皇陛下のイゼイラ議長宛贈答物が決定的な証拠となりました……その贈答物は、陛下ご自身が、天皇家に伝わっていた出所不明のものであったそうで……」
二藤部は、今上天皇が件の経緯で疑問を持った物品をイゼイラへ贈り、その分析が決定的な証拠となったと話した。
その二藤部の言葉に、動画コメントは……
【陛下最強!】
の文字で埋め尽くされる。
この質問は、さすがに他の記者達も「やられた!!」という感じで、悔しそうな顔をしていた。
【ね、ね、一般紙の記者は何やってんの?ね、ね】
【こんなの普通に疑問持てよ!】
【なんでこんなとこで俺たちが質問してんだよ!】
【しっかりしろボケ!】
厳しいお言葉が動画を埋め尽くす。
「あと最後ですが……ヴェルデオ大使宛ですけど」
『ハイ』
「えっと……『やっぱりカグヤは宇宙空母ですよね?』と……」
大笑いな会見場。
ヴェルデオは……笑いながら
『イエ、宇宙船です』
と回答した……
………………………………
「はい、宇宙空母です」
と官邸会議室で答える柏木大臣。
「ま、こればっかりはまだ言えねーよな」
と白木。
「わかっていても言えませんね、ははは」
と新見。
『ニホン的ですネェ~』
とフェルさん。
「お、フェルフェリアさん、わかってきましたな」
と三島。
そんな感じで、記者会見は終わる……
「はぁ~……これで取り敢えず出しつくしましたね……」
柏木は、思わずネクタイを緩め、そんな感じで、やれやれな諸氏。
なんとなく一仕事感。スタッフの持ってきてくれるコーヒー……フェルはレモンティーをすすったり。
「で、三島先生。真面目な話、米国ですが……こういう発表をしたのはいいですが、例の国連安保理もあります。米国は何か言ってきましたか?」
そういうと、新見が三島に代わって答える。
「それは心配いりませんよ柏木さん」
「と、いいますと?」
「米国からは、その点は任しておけと、ドノバン大使から報告を受けております」
「そうですか……んじゃあとは……さっきの話ですね……」
柏木は、手元にある自保党の部外秘書類を手にとって見る。
「……この時点で、私の補欠選挙もナシですね、三島先生」
「おう、まぁそういう感じだな。でも先生には変わらず大阪8区から出てもらうよ」
「はい」
「まぁこれに関しては、吉高派の連中が五月蝿くってなぁ……絶対勝てる候補者立てろって……」
「でも私、もし勝っても吉高派には入れないでしょ、立場上」
「そこんところは形式的に在籍してやってくれよ。それは吉高爺にも言ってるし。さすがに先生に関しては派閥に入れるわけには行かねーって、みんな理解してるよ。やっぱ先生はイゼイラの関係もあるし、特別だわ」
「はい。なら、安心できますが……」
もう今から当確扱いである。
しかしまぁ、実際そうだろう。
そして、柏木は書類をめくり……次のページで大きく吐息を吐く……
「しっかし……これ、本当に大丈夫なんでしょうねぇ……」
「だから大丈夫だって……そっちの手続きは、向こうさんでしてもらえるらしいから……」
「はぁ……ならいいんですけど……」
「本当はな……総理は先生を比例区で出したかったらしいんだよ」
「まぁ、解散総選挙なら、私の立場を考えると、そうした方がいいですよね、普・通・は……」
「でも、吉高派の関係もあってな……んでもって、総理が出した代わりの作戦がコレよ……」
柏木は苦笑い。
「総理、先生の突撃ナントカがうつったみたいでな……がははは」
「んなの、うつんなくていいですよ……でも心配だなぁ……」
「だーかーらー、心配すんなって。党が全面フォローするからさぁ……」
「はぁ……」
そういいつつ、チラとフェルの方を見る柏木。
柏木がなぜにこんなにフェルを心配しているか……
それはその書類に書かれていた名簿にあった……
その内容……
自由保守党・衆議院選挙比例代表者名簿、立候補者第1位……
『フェルフェリア・カシワギ・ナァカァラ』
そりゃ柏木先生、大心配である……
しかしフェルさん、ウキウキであったりする……
いつも『銀河連合日本』をご愛読していただきまして、誠にありがとうございます。
さて、今話で長かった『銀河連合日本章』を終了いたします。
で、次は……これまでみなさんのご声援をいただきつつ書き進めてきました本作も
【 最終章 『進む時代……』 】
に入ります。とはいえ、またこの章でも、いろいろ収束させていくお話もありますので、一つの章として、変わらずお楽しみ下さい。
そして、今後の予定としましては、エピローグやいくつか番外編なども考えております。
そして、今章で、あえて収束しない・させないお話もあります。
その点は……
……という感じでwよろしくお願いいたします。
あと……連載1年を記念したしまして……
本作の特徴でもあります。「なるべくあるものはありのままに書く」という私的な方針で、どうしても避けては通れない……フェルさんと柏木先生の関係のお話を書かねばならんという事もありまして……その点の社会的なお話や、イゼイラ・ティ連人の風俗習慣も描写したいというのもありまして……
『18禁作品』の投稿を予定しておりますw
実は作品自体はもうほぼ出来上がっております。
本編を書きながら、コツコツと合間を見て書きました。ええw
そちらも投稿予定です。
お楽しみに……なのかな?
それでは今後とも本作ともどもよろしくお願い申し上げます。




