出港
「それじゃあ秀一と誠翔の部屋はここな、適当に荷物置いていいから」
「ハイ、ありがとうございます」
俺は西村さんの後について行き部屋を案内してもらった。家の敷地に入った時から思っていたことだがまるでどこかの旅館と言われても納得できるような家だ。一人で歩いてしまったら迷ってしまいそうだ。
おれは荷物をほどいて必要な物を取り出し、釣りの準備をした。
「秀一、一応ネットで調べて必要そうな物は持って来たし釣り道具こっちで借りれるって事だったけど何持ってけばいいんだ?普通に帽子とかタオルとかそんな簡単な物だけで良いのか?」
そう考え秀一の方に目を向けると秀一は何かお洒落なサングラスと帽子をかぶっていた。
「秀一なんだそれサングラスか?普段眼鏡かけてないから新鮮な見た目だけどカッコいいな」
「これただのサングラスじゃないんだ。釣り用偏光サングラスって言って確かに眩しさを抑える効果もあるんだけど水面のギラつきを消して水中の魚や障害物を見やすくしたり、紫外線とかから目を守る効果もあるんだ」
まさかそのサングラスにそんな効果があったとは。サングラスはただ眩しさから目を護るだけしか効果が無いと思っていたが奥が深いというか興味深いというか。
「もしよかったら後でそのサングラスちょっとかけさせてくれ。それで持ち物の相談なんだけどタオルと帽子は持っていくとして後何を持っていけばいいとかあるか?」
「いや、それだけあれば大丈夫だよ。ほとんどの道具はおっちゃんが貸してくれるから」
「そうなのかしっかりとお礼を言わなきゃな。ところで西村さんって下の名前なんて言うんだ?」
「下の名前は満だね」
「西村満さんね。サンキュー教えてくれて」
俺達は談笑しながら釣りの準備をしタオルやタオル以外にある程度おやつなどのような軽い準備をしてから西村さんと秀明さんのもとへ向かった。
「親父~、おっちゃ~ん。準備完了したぞ」
「おう分かった。それなら秀一、誠翔、お前ら二人とも好きな竿選べ。全部初心者でも使える竿だから見ためで選びな」
「もちろん俺はいつものやつ!」
「ハイハイいつものな」
そう言うと西村さんは秀一にオレンジ色の釣り竿を手渡した。
「誠翔はどれが良い?」
「そうですね…どれも初心者が使える竿なら…。青色にします!」
「オッケー青色な」
西村さんは青色の竿を丁寧に俺に釣り竿を手渡してくれた。
「竿を選んだなら早速海に向かうとするか!」
「え、もうですか?俺と秀一は車に乗ってただけなので良いとして秀明さんは運転しぱなっしだったから疲れてるんじゃ」
「大丈夫だよ、秀明は釣り好きだからこういうのにはなれてるんだ。それに考えてみろ、その程度の行為で超人最上家の人間が疲れると思うか?そんなわけないだろ」
俺はその言葉を聞き秀一の方に振り替える。秀一は車の中でずっと資料を作り続けていたため少しは疲れて車で酔っていてもおかしくない。しかし秀一は酔っているどころかピンピンしてより一層元気になっていた。
西村さんは俺の表情から気持ちを察したのか肩に手をかけてくる。
「そういう事だ」
俺と秀一と西村さんは荷物を担ぎながら車に向かって歩き出した。先ほど降りて一緒に家に入ったはずの秀明さんはいつの間にか既にキャンピングカーの運転席に座っていた。
「レンタルのキャンピングカーに釣り竿入れるわけにもいれないし俺の車とキャンピングカー二台で行くって事で良いよな?」
「おう勿論!もう出発するって事でのか?」
「そうだな…あと10分ぐらいで出発する予定だな」
「分かった、それまで楽しみにしてるぜ!」
西村さんは話が終わった後に新しい場所に進み始めた
「それじゃあこの中に釣り道具を入れてくれ」
「結構大きな車なのにパンパンですね」
「多い時はクーラーボックスパンパンになったりするし珍しい魚取るために大きな機械持って行ったりするしな」
「こだわりが強くてすごいですね」
俺は釣りに必要であろう荷物を積み込み釣りの支度を終えた。支度を終えた後は改めてキャンピングカーに向かい秀明さんに海に向かう事を伝えた。
「それじゃあ秀一はキャンピングカーで、誠人は俺の車に乗りな」
「はい、分かりました」
俺は西村さんの車の助手席に乗りそして車を走らせ始めた。
「誠人は釣りにはあんまり行った事が無かったんだったか?」
「そうですね。しかも行った事があると言っても釣り堀だったり釣り体験で釣るような誰でも釣れる感じなところでここまで本格的な場所に行くのは初めてですね」
本格的な釣りは海でも川でもやった事がない。だから今回の釣りは本当に楽しみだ。
「西村さんは本当に釣りがお好きなんですね」
「あぁ、その為にあの家を建てたと言っても過言じゃないな」
「そう言えばあの家本当に凄いですよね。まるで旅館みたいで」
「だろぉ!あの家はこだわって建てて貰ったんだ!それだけじゃない、内装の小道具だったり家具だったりは自分で作った物もあるんだ!後何といっても一番のお気に入りは庭の池だな、あれは何度も作り直してやっと出来たんだ!」
「え!家具や池って自分で作ったんですか!?」
「全部が全部ってわけじゃないけどな」
なんてことだ。この話をされるまであの家具や小物は全部どこかの高級な家具専門店の物だと思っていた。そのくらいの出来の物をまさか自分で作っていたなんて。そして何よりも驚きなのは池を何回も作り直していたという点だ。果たしてどれだけの時間と体力が必要になるのだろうか。
「こういったらあれですけど西村さん見た目はものすごく外国にいそうで洋風好きに見えるのに和風好きなんですね」
「そうだな~。ご飯だってやっぱり洋食でも中華でもなくやっぱり和食だな」
「そうなんですね。そういえば西村さんは何の仕事をしているんですか?やっぱり漁師とかですか?」
「おうそうだぞ!結構な数卸すからもしかしたら俺が獲った魚を食べたことがあったりするかもな」
俺達は軽い雑談を楽しみながら目的地まで向かい十数分経ったほどで車が止められた。
「ついたぞ、それじゃあ荷物を下ろすか」
俺と西村さんは車から降りテキパキと釣り道具を下ろした。しばらく経ったところで秀一達も海に到着し荷物を下ろしきった。
「よし、みんな忘れ物は無いな?最後に確認しろよ」
「はい、大丈夫です」
「俺も大丈夫」
「そうか、なら良し。それじゃあ向かうぞ!」
俺は釣り道具を抱えながら西村さんの後について行った。それにしても楽しみだ、海の釣りを楽しみながらもし釣れたら新鮮な魚を食べられるんだから。果たしてどこで釣りをするのか…堤防か?それとも岸壁か?
そんなワクワクした気持ちでついて行くと着いた先は堤防と岸壁どちらでもなかった。
「よーしお前らこれに乗れ~。揺れてるから乗る時気を付けろよ」
着いた先には大きな船…それもクルーザーだった。
「あ…あの、これで釣りをするんですか…?」
「あぁそうだぞ。なんだ?やっぱりこれじゃ小っちゃいか?今回釣る魚は大物はいないからこれで十分だと思ったが…やっぱり仕事用の船で行くとするか」
「いっいえ!これで大丈夫です!ただてっきり堤防とかで釣りをするものだと思って」
「昔っから友人と海釣りをするときはこれだったからな。しかもこういう時じゃなきゃあまり使う機会もないし。まぁ気にするな!釣りは堤防でしようが船でしようが楽しさは変わらないからな!」
俺はまだ上手く状況が呑み込めないままクルーザーに乗せられた。クルーザーの中を少し探検してみるともしかしたら普通の家よりも過ごしやすいんじゃないかと言うくらい快適な内装をしていた。
ソファーにはすでに秀一が寝そべっていた。
「秀一…お前いっつも釣りする時これ乗ってるのか?」
「いっつもじゃないぞ、何回もこの海に来たことあるけど俺も人生で三回目くらい。いっつもは堤防とか岸壁で釣るぞ。ただ今回はおっちゃんが初めて本格的に釣りする誠翔に楽しんでもらいたいって事でこれになった」
俺がクルーザーに呆気に取られていると西村さんが中に入ってきて声を聞こえてくる。
「そろそろ出発するぞ~」
「オッケー!おっちゃん早くいこうぜ!」
俺は現状をまだ上手く呑み込めないままクルーザーは出発した。




