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雲の上と草の根~実は高スペックなことを本人だけが知らない~  作者: あかかど


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懐かしの小説

「それじゃあ失礼します。あ、卵焼きごちそうさまでした。ぜひまた機会があれば食べさせてください」

「勿論。楽しみにしてて」


俺は生徒会長に一瞥し生徒会室を後にする。


思っていたより早く話が片付いたな。空いた時間をどう暇つぶししよう。秀一には今日は今日生徒会室で用事があると言ってしまったため恐らく今頃クラスの友達とご飯を食べているだろう。どうしようか…おっ、あれは。


すぐに教室に戻る気にもなれなく、どう時間を潰そうか考えていると一つの表札が目に留まる。


「図書室か」


普段ここら辺には寄らないため、図書室の場所こそ知っていたがわざわざ寄ろうとは思わなかった。しかし、今は時間があるため暇つぶしにはちょうどいい。


俺は図書室に入り辺りを見渡す。図書室にはいくつもの本棚があり、ジャンルごとに仕分けられている。また、自習スペースもあり受験生だろう、数人が勉強していた。俺は特に目的の本を探すわけでもなくぶらぶらと本棚にある本のタイトルを目で追っていた。すると一つの小説が目に留まる。


「うわ~懐かしい~。昔読んでたな」


その本は有名な推理物シリーズのであり、普段小説などを読まない俺でも楽しんで読むことのできる作品だった。一回目は犯人とトリックを考えながら読み、二回目は犯人を動きに注目しながら読んだり何回も読み返していた。よくシリーズの一巻を読み終えるごとに雲雀と感想を話し合っていた。


俺はその本を手に取りパラパラとページをめくり読む。


あ~そうそう、こういう事件を解決するために事件現場に向かうんだったな。最後に呼んだ時から数年たつが覚えているもんだな。


暫く本を読んでいると、意外と集中して読んでしまい結構な時間が経ってしまったことに気が付く。そろそろ教室に戻らなくては。


「この本借りてくか」


俺はこの本を借りるために本を持ちだす。今まで借りたことは無かったが、借り方を見るに、どうやら必要事項を貸出用紙に書けば誰に言わなくても一人で借りることが出来るようだ。


俺は貸出用紙を一つ取り、置いてあるボールペンに名前や学年クラス、学籍番号などの必要事項を記入し小説を借り、教室に戻る。教室に戻ると既に皆授業の準備をしていたため、俺も急いで準備する。


「誠翔遅かったな、結構話長引いた感じ?」

「いや別に話自体は結構早く終わったんだ。これに時間を取られてな」


そう言い俺は真波に借りてきた小説を見せる。


「小説か、俺あんまり小説って自分から読んだ事ないな」

「別に俺だってあんまり積極的に読むわけじゃないけどこれは一巻一巻短いし昔読んでてそれで懐かしくてね」

「思い出の本ってわけか」

「そうなるな」


俺は真波と話し終えた後先生が来るまでまた本を読み始めた。




「それじゃあ皆さん今日はこれで終わりです。気を付けて帰ってくださいね」


ホームルームも終わり皆が帰宅し始める。俺も帰宅しようと考えているとスマホにメッセージが届く。秀一からだった。


『俺今日は用事あるから先返る!』

『分かった、気を付けて』


秀一今日は用事があるのか。という事は一人で帰るのは久々になるな。…まぁ別に用事があるわけでもないしこのまま学校で小説の続きでも読んで帰るか。


俺は一度バッグに入れた本を取り出し机に座って小説の続きを読み始めた。


図書室で立ち読みしていた時も感じていたが、やはり懐かしい。犯人や大まかなトリックは覚えていたが、物語の小さな部分など忘れていた部分もあり記憶の小さなピースを埋めていくようで楽しかった。覚えている部分、覚えている部分両方含めて続きを楽しみにしながらページをめくった。


「いや~面白かった。借りて正解だったな」


少しだけ読んで帰るつもりが結局最後まで読み切ってしまった。おかげもう外も真っ暗だ。窓から外の様子を窺うと部活が終了したのだろう。集団で何人かの生徒が帰っている。そしてもう一つ


「雨か」


小説を夢中で読んでおり気が付かなかったが雨が降っていた。それもそこそこの激しさの物だった。折り畳み傘を持ってきてよかった。これ以上激しくなる前に早く帰るとしよう。


俺は席を立ち教室の電気を消し、小説を返しに図書室へ向かう。


「あれ、誠翔?」


図書室の前に着いたところで声をかけられる。声をかけられた方に振り返るとそこには雲雀が立っていた。


「どうしたの誠翔、こんな時間まで残って」

「本を返しに図書室に来たんだ。雲雀さんは生徒会の仕事かな?」

「うん、そうだよ。あれその本…うわ~懐かしい~!そのシリーズよく読んでたな~!」

「このシリーズ面白いよな。毎回犯人のトリックが思いがけないものだったり」

「私第三作品目が好きなんだよね!」

「あ~三作品目な!あれは犯人に同情しちゃうような動機があるんだよな~」


そうだ、雲雀は三作品目がお気に入りだって言ってたな。こう話していると小学生時代に二人で本の感想を話していたことを思い出す。これもまた懐かしい。今日図書室に来なければこんな会話することは無かっただろう。


「その本今から返すんだよね?」

「そう。今日の昼借りたのに面白くてもう読み終わっちゃった」

「私もそれ久々に読みたいから頂戴」


俺は雲雀に今日借りていた小説を渡す。そして俺は返却用紙、雲雀は貸出用紙に必要事項を書き図書室を後にする。


雲雀と話しながら生徒玄関まで向かい、上履きから外履きに履きなおす。外を確認すると先ほど外の雨を確認してから10分も経過していないと思うが雨の勢いが更に酷くなっていた。


「あちゃ~雨か。もう学校しまっちゃうし、止みそうもないしどうしようかな」

「雲雀さん傘持ってきてないの?」

「うん。天気予報では雨じゃなかったからさ。放課後になったばっかりの時は晴れてたし大丈夫だと思ったんだけど」

「そっか」


俺は自分のバッグに入っている折り畳み傘を雲雀に渡す。


「はい雲雀さん、これ使って」

「え?でもそれだと誠翔はどうやって帰るの?」

「走って帰るよ」

「それじゃあ濡れちゃうよ!この傘で一緒に帰ろうよ!」

「折り畳み傘だから普通の傘より小さいんだよそれ。だから二人で一緒に帰るとどっちも濡れちゃうよ」

「でもそれだと誠翔が…」

「大丈夫だって。女性を濡らせて帰るわけにはいけないし、男なんて体が丈夫だからちょっと濡れたところで風邪なんて引かないよ」


俺はそう言うと雲雀に有無を言わせる前に雨の中に出て家に向かって走り出す。


「じゃあね雲雀さん。体冷やさないようにね」


雨の中傘を差さずに雨の中を駆けるなんていつぶりだろうか。俺は頭の上にバッグを乗せ雨をしのぎながら家に帰った。家に帰ってすぐにシャワーを浴び暖かい飲み物を飲み体の温かくなるような食べ物を食べる。


俺は寝るまでの間ネットで今日呼んだ小説の情報を調べた。


もういい時間だしそろそろ寝るとするか。


俺は寝室まで移動し明日の準備を済ませベッドに入る。スマホで目覚ましをかけベッドで横になる。


「ヘくしっ。雨で体でも冷えたか?」


横になったと同時にくしゃみが出た。まぁしっかりと寝てれば大丈夫だろ。そう考えながら俺は眠りに入った。



ピピピピ…ピピピピ…


「うっ…頭痛ってぇ…。怠いし喉も痛い…」


完全に風邪を引いたなこれは。


『だけどそれと同時にでも相手の事を気にかけすぎて自分の体調を疎かにするタイプでもある』


あの人エスパーかよ。

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