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「ほれ、お前達の報酬じゃ。」
狼車に着いたらおじいさんはそんなことを言いながら、さっきお姉さんから貰ったゴブリンの討伐報酬の袋からお金を取り出した。
「えっ?そんなの貰えないよ!!」
「何を言っとる、これはゴブリンの討伐報酬じゃ。さっき聞いておったじゃろ?」
「そう言うことじゃなくて、俺達はおじいさんに修業をつけてもらってるんだから、そんなの受け取れないよ。」
「気にするでない。これも修業のうちじゃ。」
「修業?」
「うむ、今まで狼の小僧はショートソードと木剣で戦っておったが、次はゴブリンより強いモンスターと戦う予定じゃ。そうなると今の武器では戦い辛いじゃろう。じゃからゴブリンの報酬で強い武器に買い換えるのじゃ。」
「な、なるほど…。」
「それに、お主らは金の使いも慣れておらんじゃろうし、武器の目利きもしたことがないじゃろ?良い機会じゃからな、これも修業じゃ。」
「俺の新しい武器かぁ~」
「まぁ、すぐに武器は小僧が作るものに代わるだろうがな。」
「えっ!?」
「そうなのか!?任せたぞシュウ!!」
いやいやいや、初耳なんですけど!?ってか今木工で手一杯なんですけど!?
「なぁに、時間はたっぷりあるんじゃ、気長にやるぞ。」
「はぁ…。じゃあ、今から武器屋ですか?」
「いや、武器屋も行くが先に生地屋じゃな。サクヤとばあさんに布をたくさん買うように頼まれてのう。」
「あぁ、最近ずっと裁縫してますもんね~。」
そうして俺達は生地屋を目指して歩き出した。
生地屋に着くとおじいさんは手当たり次第生地を選んでいった。
値段も確認してないけど平気なのかな?
結局何人分の服を作るんだ?って位生地を購入し、素材の買取りで得たお金をオーバーしていた。
その後、前回同様小麦や香辛料、お酒等を購入し、目的の武器屋に到着した。
今回訪れたのは冒険者向けの大衆店である。
ここは数打ちの品や見習いの品、中古品等が売っている。
もちろん、店側でチェックをしているので見習いの品であっても基本不良品はない。
戦闘中に壊れでもしたら命にかかわるから当然である。
まぁ、購入した奴の整備不良ってのはたまにあるらしいが…。
ちなみにこのような店は初心者冒険者用や予備の武器として買われることがほとんどで、クルス君のショートソードやイリヤちゃんの短弓もここで買っている。
ベテラン以上の冒険者になると鍛冶屋でオーダーメイドで作るのが普通であるらしい。
「さて、狼の小僧、自分で使う武器じゃ、自分で選んでみよ。」
「わかったぜ、師匠!!」
そう言ってクルス君は片手剣が並んでいるコーナーに向かっていった。
「じゃあ、俺も色々見てみようかなぁ~」
「待て小僧、お主最近鑑定を使っておるか?」
おじいさんに言われ、考えてみるが確かに最近鑑定を使っていない。採取は同じ所を定期的に回ってるだけだし、狩りはおじいさんやクルス君、従魔達に任せている。と言うか、最近は木工ばっかりやっていた。
「使ってない…ですね。」
「スキルにしても技術にしても使わなければ成長せんからな、鑑定を使って掘り出し物でも探してこい」
「掘り出し物?」
「普通は商人の中にも鑑定を持ってる者もおって価値のあるものはこんな店で安売りはせんのじゃが、お主の鑑定は儂の種族も見破る程のものじゃ、もしかすると商人達が見破れなかった品があるかもしれんぞ?」
「鑑定にもそんな差があるんだ?」
「熟練度みたいなもんじゃな。新人冒険者と古株の冒険者が同じ剣術スキルを持ってても差があるのと同じようなもんじゃ。今回は小僧に鑑定が備わったときから優秀だったんじゃろ。」
「なるほど。じゃあ、掘り出し物探してみます。」
「あぁ、それから探すのは中古品からじゃぞ?このレベルの店に何か効果がある武器を作る奴がいるとは思えんからの。それと、鑑定をしていると気付かれぬよう気を付けるんじゃぞ?」
「わかりました。では行ってきます!!」
そして俺は宝探しに向かった。




