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ダンジョンの入口は祠というか遺跡というか古い建物だった。ただ、入口は大きく馬車でも通れそうだ。中に入ると地下へ降りる階段が一つだけあった。どうやら、あれがダンジョンの入口のようだ。しかし、入口は一つしかないのでそれなりの人数の冒険者が並んでいた。
「俺達はこっちだ」
良く見ると並んでいる列は二つあり、リーダーに言われた方に並んだ。こちらは一階に行く人の列らしく、ゆっくりとだが進んでいっていた。
もう一つの列は転移装置への列らしく進んだり止まったりと繰り返していた。
「君たち、あれが転移装置だよ。帰りはあれを使って帰るからね」
ダンジョン入口の階段を降り、通路を歩いて最初の部屋に通りかかったところ、リーダーが転移装置を教えてくれた。そこは少し広めの部屋に真ん中辺りに少し段差があるだけの部屋だった。なんでもあの段差が転移装置らしく、床に魔法陣が書いてあるとか。そこに魔核を置くと転移するらしい。転移先は使った魔核で決まるらしいので、ダンジョン探索するときは常に各階の魔核をいくつか持っておけと言われた。
そんな話をしていると魔法陣の近くに人が急に現れた。
「ちょうどいい、見てみな、あれが帰ってきた人達だよ」
それを見ていたリーダーがどこかの階層から帰ってきた冒険者だと教えてくれた。
「帰りはあんな風にこの部屋のどこかに出てくるんだ」
どうやらこの転移装置は魔法陣から魔法陣ではなく、魔法陣から魔法陣のある部屋に転移するようだ。確かに魔法陣に転移するなら向こう側が空いてないと使えないし、不便だろう。魔法陣から送り出すだけなら並ぶ時間も少なくて済む。
いつまでも立ち止まって見ていられないので先に進むと次の部屋ではたくさんの冒険者が解体作業をしていた。なんでも、物を数時間置いておくとダンジョンに吸収されるという謎機能? を利用してここで解体をしているらしい。ここのおかげでダンジョンで狩れたモンスターの解体が便利になったとか。いらない血や内蔵が自然に消えるなら掃除も楽だろうしね。臭いも風が流れているのか時間が立てば消えるらしい。
そして、解体部屋を越えるといよいよダンジョンだ。
「それじゃあ、予定どおり三階に行こうか」
せっかく初めてのダンジョンに来たのだが、ゆっくりと探索はせずに空いているであろう三階に向かう。これは俺達がある程度戦える実力があり、「全力全開」の皆がいるから出来るのであって、俺達が完全初心者、冒険者に成り立てだったら混んでても一階で探索をすると言っていた。
一階は入口の建物と同じように遺跡風というか石のブロックを積んで出来た道だった。道は数人並べる程度の広さしかなく戦闘は気を付けなければいけない。槍なんかは狭くて使えないだろう。というか、クイーン達にとっても狭いので今回従魔達は転移装置の登録のためについてきているだけだった。今回イリヤちゃんはダンジョンが狭いために弓を使えないのでミュウを抱っこし、ぴーちゃんを肩に乗せて行動してもらってる。ミュウなら自分で走る広さはあるのだが、この階層に出るモンスターがウサギなので間違えて攻撃されないようにするためだ。
ちなみにこの階層に出るモンスターはキラーラビット、ウッドゴーレム、ビッグバットの三種類。キラーラビットは前歯の大きなウサギ、ウッドゴーレムは通称パペットと呼ばれる子供サイズの木人形、ビッグバットは大きなコウモリとそこまで強くはない。
しかし、ウサギは肉、木人形は薪、コウモリは皮膜が布代わりと利用出来るため、新人冒険者の稼ぎに役立っていた。
そんな事を考えてると向こうからキラーラビットがやってきた。




