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303

次の日、冒険者組は朝早くから出発した。魔法の鞄はあるが、他の冒険者には内緒のためそれなりの荷物を背負っていた。今回は一階から五階なのでそんな荷物は気にならないが、階が下になると荷物持ち(ポーター)を雇う事も考えろと言われたようだ。


俺達は商店まわりを始めた。前日に顔出しはしていたのでどこも問題なく対応してもらえた。本来は商人が運んだ商品の値段は教えてもらえないのだが、商店を教えてくれた商人と金額が離れすぎてもお互いに納得できないのでおおよその金額を教えてもらい、その金額を目安に交渉した。

結果的に、一緒に旅した人の店や紹介してくれた店なのでお互いに損をすることが無い条件で交渉することが出来た。ただ、販売する量は調整した。『アイテムボックス』や魔法の鞄があるので大量に売ることは出来るのだが、その存在は隠しておきたいし大量に売ると値下がりしちゃうからね。足りなくなったらまた売ればいい。


ポーションや塩以外にも香辛料や保存食なんかを売り、ダンジョン産の素材なんかを買っていると、それだけで一日が終わってしまった。


次の日はドワーフの鍛冶師を探しに行く。行くのはいつものメンバーで商人組は街をぶらぶらして掘り出し物が無いか探しに行くようだ。護衛がいないのでちょっと不安だけど一応鍛えてるし大丈夫だろう。


早速一軒目へ。そこはドワーフのお店ではなくドワーフの職人を雇っている店だった。まずは店内にある商品、武具を見る。さすがにドワーフの作品だけの事はありうちで作る物より品質も性能も良い。もちろんお値段のほうも……。

従業員の人に話を通してもらい、竜の鱗を使って武具を作れるか聞いてもらった。


「竜の鱗!? ダメダメ、俺の腕じゃ、まだ扱えねぇよ」


話をしてもらったら、ドワーフの職人さんが直接来て話を聞いてくれたのだが、すぐに断られてしまった。というのも、雇われの職人なので未だに修行中なのだとか。ドワーフが竜の鱗を使えると言ってもそれはベテランや匠と言われるような人達だけなのだとか。そして、この街にはそのレベルの人はいないと言われてしまった。


その後も同じように雇われている職人や自分のお店を持った職人など、教えてもらったお店を全てまわってみたが、どの職人さんも「出来ない」といわれた。

話を聞いてみたが竜の鱗を扱える職人は、やはり竜の鱗が手に入る自分の国を動かないらしい。ダンジョン都市に来ている職人達は修行の為に来てるから、むしろこれから竜の鱗の使い方を覚える立場なんだそうだ。もちろん自分のお店を持てば竜の鱗の使い方を覚えなくも充分にやっていけるので故郷に帰らないドワーフもいるらしい。


そんな話をうちに呑みに来ているドワーフ達から聞いた。お店を訪ねた夜に散策がてら呑みに行っていたおじいさんが、呑み屋で偶然会ったドワーフの職人と意気投合し、ドワーフ仲間を増やしながら呑み歩き、最終的にうちで呑み始めたのだ。こちらとしてもドワーフと縁を作れるのは良いことだし、ドワーフ達もうちのお酒や料理を気に入ったようでその後もよく来るようになった。


呑みながらの会話で竜の鱗を加工できそうな職人や彼らの師匠のお店を紹介して貰えたので、おじいさんの呑みニケーション能力の高さに感謝だ。もちろん俺と妹ちゃんはお酒は呑めないので果実水で参加していた。ただ、ドワーフ達はおじいさんと夜通し呑んでいたにもかかわらず朝から元気に働きに行った。その後もドワーフ達がちょくちょく呑みに来るようになったので、ここでもお店を出したほうが良いかもしれないなぁ。

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