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馬車を置きに厩舎に向かうと広い場所に出た。どうやらここに馬を放し飼い出来るようで厩舎を柵で囲んでいた。自分たちで世話をしろとの事だがこれならほとんど世話はいらないかもしれない。その証拠にステップホース達もクイーン達も広場を走り始めていた。
厩舎の中には藁などもすでに置いてありあまりする事がなさそうだ。
「ワフッ?」
厩舎を覗いていると子狼がやって来て後ろから一緒に覗いたところ、「あれ?」みたいな顔をしていた。
「どうかしたの?」
「ワフッワフッ!」
「あぁ、ほんとだ」
子狼が言うには「ご飯が無い!」だった。確かに宿の人も馬は想定してるだろうけど、さすがに狼は難しいか。となると、『アイテムボックス』にあるのを出さなきゃダメかな? と思っていたら
「なんかあったのか?」
とクルスくんがやって来たのでクイーン達の食事の話をしたら
「なら今から狩りに行ってくる! まだ暗くなる迄時間あるしな」
と言って走り出してしまった。確かに予定より早く着いたけどさすがに狩りに行く時間は……ってもう行っちゃった……。ん? クルスくんの後ろに見えるのはクイーン達か? よく見るとおじいさんまで一緒に行っちゃった。まったくしょうがないなぁ。でも、これからの宿でもクイーン達のご飯は考えないといけないかもしれないな。
行ってしまったものはしょうがないと、残ったメンバーで厩舎の支度と馬車の整備をする。
今回の旅のメンバーは熊の行商人、おじいさん、サクヤちゃん、俺、妹ちゃん、クルスくんにイリヤちゃん。それと、商人組から二人と冒険者組から六人。従魔達はステップホース親子の三頭にクイーンと子狼達、それにぴーちゃんだ。残念ながらミュウは子供の世話があるのでお留守番。
馬車はステップホースが牽く大型の箱馬車に少し大きくなった狼車。この狼車はステップホースの子供も牽けるようにしてあるのでクイーン達と交代しながら牽いてもらっている。
「よし、じゃあ少し見て回るか」
「案内してやるよ」
「いいの?」
「いきた~い!」
人数も多かったのですぐに仕事が終わってしまい、何をするかと悩み始めた所冒険者の男の子達が周辺を案内してくれると言ってきた。もちろんお願いした。妹ちゃんも興奮気味だ。
「すご~い!」
「うん、凄いね」
妹ちゃんが口を大きく開けて麦畑を見ている。隣にはサクヤちゃん。フレイの町にも麦畑や畑もあるのだが規模が違うので凄く景色が良い。
元々農村が大きくなっただけなので畑以外は特に見るものもなく、村を散歩して門の近くに来るとクイーン達の鳴き声が聞こえてきた。
門番のおじさんは狼の鳴き声に驚き槍を構えて警戒していたが遠くからクイーン達が近づいて来るのが見え警戒を解いた。
「おい、確かあの狼はお前達のだよな?」
「あ、はい、そうですよ」
「ならあの獲物は狼が狩ったのか?」
「あ~、多分そうですね」
門番のおじさんは近くに来ていた俺達に狼を確認し、クルスくんとおじいさんが抱えてるものを質問してきた。その二人は肩に獲物を担いでなぜか走っていた。
「なんであの二人は走ってるんだ?」
「さあ?」
おじさんも不思議がっている。そうこうしているとクイーン達が村に戻ってきた。
「狩ってきたぞ!」
「大猟じゃぞ」
「「「「ウォン!」」」」
二人はそれぞれ猪を担ぎクイーン達はウサギを二羽蔦で結び首からぶら下げていた。
「確かに大猟だけど、クイーンのご飯だよね? 多すぎない?」
「あまれば村のもんにでもやればいいじゃろ」
「それは助かるな。うちにも猟師はいるが宿屋を始めてから肉が不足がちでな」
俺達の話を聞いていたおじさんも話に加わってきた。
「この辺りは竜の森の影響か、モンスターはあまり出ないから狩りがしやすいんだがなぁ」
なんでも昔は村で賄う肉は十分狩れたのだが、最近はこの村を通る人が増えたせいで若干肉不足になってるらしい。食料自体は農村なので余裕はあるみたいだ。
門の近くで話をしていると畑仕事から帰ってきた人達が猪を見て、村の子供達が物欲しげな目で見ているのに耐えられず、おじいさんと相談し村の広場で宴会をする事になってしまった。
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妹ちゃんが可愛いです(*≧з≦)




