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「あら、これは優しい味ね」
「いつもと違って辛くないな」
「これはこれで美味いな」
今日は屋台で新しいスープのお披露目をしていた。従魔達の牧場は予想以上に好評で順調にその数を増やしていった。ビッグコッコは今まで以上のペースで卵を産み、ミルホーンも数頭が子牛を産んだ。正直ビッグコッコもミルホーンもメスだけなのでどうやって産むのか、どんなペースで産むのかは謎なのだが子供を産みやすいと思ってくれているので深くは考えないでおこう。
そうそう、ステップホースの子供も無事に産まれ今では元気に走り回っている。もしかすると出産ブームは子馬の影響もあるかもしれない。その証拠に新しくきたステップホース達にも子供が出来たからだ。
ビッグコッコやミルホーンが増えるということは当然卵やミルクの量も増える訳だが、卵は焼いたりスープで煮たりゆでたまごだったりとバリエーションも多く充分に消費できたのだが、さすがにミルクは皆でも飲みきれない量になっていた。そうなると加工品、バターやチーズ、ヨーグルトなどを作りたいと思っている。バターは昔実験教室で作ったことがあるので皮袋に入れフリフリと作ってみた。出来上がった物は味付けなどをしていなかったが元々のミルクが美味しいのでなかなか美味いバターが完成した。バター作りも孤児院の子供達が面白がって手伝ってくれるので大量に作ることに成功した。チーズは保存食というか携帯食として冒険者がよく買っているのでどこかから作り方を聞ければと思っている。
それでも余るミルクをどうしようか悩んでいたところ料理組がスープを作っているのをみてクリームシチューを思い付いたのだ。
「これならうちの子供でも飲めそうね」
「俺はいつもの辛いスープのが好きだな」
「これはどっちも捨てがたいな」
さっそくシャルちゃんに丸投げし、完成させたクリームシチューを屋台で売ってみたのだが反応は二つに分かれた。
女性や子供にはクリームシチューが、成人男性にはカレーが人気だった。カレーに甘口があればまた違った結果になったかもしれないがこればかりはしょうがない。リンゴとハチミツを入れれば甘くなるかな?
実験的に少量のクリームシチューを持ってきたのだが瞬く間に売り切れてしまい、食べられなかった人達から催促される位には評判は良さそうなので次回からはもう少し持ってこよう。料理組次第ではあるのだが今後二種類売るのか一日置きに売るのかも考えた方がいいかもしれないなぁ。
クリームシチューの初登場ということで久しぶりに屋台に来たのだが一際人が集まっている所があった。それはリンちゃんのところだ。最初は冒険者達の怪我を治していたのだがそのなかで「腕の痛みがなくなった」だの「膝の痛みがひいた」だのと言い出す者が出てきたのだ。それを聞いたおばちゃん達が挑戦したところ、「肩こりが治った」や「腰痛が治った」と評判になり、今ではおじいちゃんおばあちゃんの依頼がひっきりなしにくるようになった。
そのおじいちゃんおばあちゃんも最初はゴブリンということで怖がってはいたのだが、今では孫のように接している。
夕方になるとおじいちゃんおばあちゃん達は家に帰り代わりに冒険者達がリンちゃんに殺到する。ほぼ無料で治療してもらえるからだ。今現在薬等は品不足、値上りをしていて回復手段が貴重になっているからだ。その為回復魔法が使えるリンちゃんは人気となっている。もちろん値段が安いのはリンちゃんの練習を兼ねているためで皆には事前に伝えてあるので治らなかったからといって文句を言う人はいない。というかリンちゃんが治せないような怪我をしてる人はいない。
冒険者達も最初は敬遠していたがなれてくると女性冒険者達がリンちゃんを可愛がり始めていた。自分達が使ってたアクセサリーや服などで着せ替えして遊んでいるとも言うが……。まぁ、仲良くしてくれるのは良いんだが身近なモンスターになれるのもどうかと思うがテイムしてる俺が言うのも変な話か……。
『孤児院テイマー』
HJノベルス様よりついに発売されました!
好評発売中です!
と、思ったら発売一週間もしないで重版決定だそうです!
皆さんありがとうございます!
コミカライズも決定しているのでこれからも宜しくお願いします!




