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「外壁ももう完成かな?」
「でもなんかすぐ壊れそうじゃないか?」
「俺達が護衛で行った街や先輩冒険者から聞いた話だと村や町よりは丈夫だけど、この規模の町にしてはかなり貧弱らしいな。」
「むしろ、これくらいの規模だと街になるからそう考えると全然ダメじゃないか?」
孤児院でのお風呂作りから一年程経過して、町の外壁工事は完了した。しかし、正直その出来映えは今までよりもマシ、というものだった。
どうやら領主代行の息子が材料費をケチっているようで強度が不安である。
作業している人への賃金も少ないらしく日雇い労働者が少ないのも色々と影響していた。
孤児院からも何人か働きに出ていて、このまま工事関係で働くつもりだったのだが、低賃金の為に今は冒険者になる子も何人か出てきた。
(孤児院のお風呂は工事に行ってる子達の為の側面もあった。)
「でも、こういう工事ってもっと儲かるはずなんだけどね。」
「そうなのか?まぁ、孤児院の皆が冒険者になるくらいだから良い仕事じゃないんだろうな」
「むしろ、冒険者として薬草なんかを売ってた方が生活できるしね。」
今孤児院のメンバーで冒険者となったのは俺達のグループの冒険者を含め10人を超えていた。
予定では外壁工事に伴う仕事で日雇いしながら大工等に勤めるはずだった。
しかし、賃金が安く現状の生活はきつく、大工達も予定の賃金を領主から貰えず雇えなくなったのだ。
そういった人達は冒険者になり竜の森で稼ぐ事になった。その為に竜の森は人で溢れる事になった。
だが、狩場に人が多いので外縁部のモンスターはほとんどいなくなり、泊まりがけで素材採取する人も増えていた。
街道近くの森が採取しつくされて、薬草が採取出来なくなったのも大きい。これが森の奥に近づくと一日で生えてきたりするのだが…。
ともあれ、今は冒険者組が増えたため、交代で採取&討伐と訓練、依頼をこなしていた。
「最近こっちに来る冒険者が増えてきたね」
「そういや、こっちでたまに見かけるな。師匠なら大丈夫だろうけど、ここは平気なのか?」
「一応結界で隠してるけど何か対策した方が良いかもねぇ~」
冒険者が増えて、冒険者達の探索範囲が広がったのだが、結界のせいで不自然なまでに偏った探索範囲になっていた。
それに気付いた何人かの冒険者が小屋に近付いて来ていたのである。
「なら引っ越しでもするかの?」
「引っ越し?」
「うむ、幸いそれなりの幅の川もある事じゃし、向こう側へ行けばよい。近くに橋も無いしのう。」
「川向こうに行くのはいいけど、俺達も行けませんよ?」
「それは簡単じゃ。橋を作って、橋だけに結界を張っておけば良いんじゃ。」
なるほど、ならついでに川の近くに一軒家を作っておこうかな?元々こっちに住んでる話は兵士にしてるし、逆に近くに家が無かったらおかしいからな。
それと、森の中に川を渡れる所があるって口裏を合わせておこうかな。どうやって小屋に行くのか聞かれても困るし。
その後、さっそく俺達は引っ越しを始めた。と言っても引っ越し自体は建物はアイテムボックスに仕舞うので作業は水路、畑、橋を作ることになる。
橋は魔法を使い、石橋を。
水路は冒険者にバレないように地下水路を作ってみた。
畑は作物が残っているので新しいのを作りつつ、今あるものも管理を続けた。
そして、一ヶ月もしないで引っ越しは無事に終了した。




