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とりあえず俺はおじいさんとおばあさんに必要なものを自作出来るか聞いてみた。
「ふむ、まぁ大丈夫じゃないか?」
「そうねぇ、多分大丈夫だと思うわよ。」
とのお言葉をいただいた。しかし、普通に空間魔法を使うのは簡単だが、効果を少しだけに調整するのはしたことが無いらしいので、どうなるかはやってみないとわからないと言われた。
また、テント等は持っていないらしく、実物を買ってそれを参考に作った方が良いと言われたので町で買うことになった。
町でテントを確認してみると、そこにはピンからキリまで…とはいかず、安いのか高いのか、それと何人用かのサイズ違いしかなかった。
値段の違いも素材の差で作りは同じらしい。
俺達は自作の見本にするだけなので、安い方の一人用を購入した。値段的にも10級9級冒険者でも買える値段だった。
その後も俺達は護衛、というか旅に必要そうなものを購入していった。
焼き固めたパンや干し肉等の食料、携帯用の鍋、寝袋とフード付きのマント、照明用ランプに火打ち石等だ。
水は水袋に入れていくだけで足りるのかな?水を生み出す魔道具もあるが、それはさすがに高いので買えない。これも自作候補かな。
とりあえず思い付くものを買った俺達は孤児院に帰った。
事後報告になってしまったが、院長先生に護衛依頼の練習として、今度おじいさんと野営することを話した。
「冒険者として必要なのはわかりました。ですが、あなた達は駄目ですよ。」
なぜか俺と妹ちゃんの野営は許可がおりなかった。
「当然でしょう。いくら必要と言ってもまだ10歳に満たないのですから。少なくとも10歳を越えるまでは駄目ですよ。」
とのことだ。確かに言われた通りだし、竜の森に行かせてもらってる手前強くは言えなかった。
「おとまり…。」
しかし、妹ちゃんは行けるはずだった野営に行けなくなりしょんぼりしてしまった。
そこで俺は考えた。
「院長先生、なら、野営じゃなくておばあさんの所に泊まるのは?俺達が行けないと知るとおそらくサクヤちゃんも行けないと思うんだ。だから、代わりに泊まりに行けば良いかなって。まぁ、野営とは関係無いけど。」
「さくやちゃんとおとまり!」
「それに、おじいさんが野営に行くと畑や従魔の世話が大変だと思うし。」
「そうねぇ、じゃああちらに聞いてみて、泊まっても良いと言われたら許可します。」
「わ~い!さくやちゃんとおとまり~!」
妹ちゃんが院長先生の言葉で大喜びだ。
まだおばあさんに確認取ってないんだけどね…。
と言うか、サクヤちゃんとは孤児院でお泊まりしてるよね!?
後日おばあさん達に確認したところ、お泊まりはしても良いと言ってもらえた。サクヤちゃんも留守番になり、畑や従魔の世話も当然することになった。
野営の準備をし始めようとしたが、道具類は小屋で作るので確認は後でしようと思う。となると、出来るのは保存食の味見かな?さっそく買ってきたパンと干し肉を食べてみた。
硬い!!
最近は稼ぎがあるのでパン屋で買ったり孤児院で焼いたパンを食べているが、昔食べていた売れ残りのパンよりも固い。
孤児院の子供達も最初は食べたそうにしていたが、俺達が不味そうに食べるのを見て嫌そうな顔をしている。
「なんだ!?この固いパンは!」
「これを食べるのは辛いわね…」
「野営するとこんなの食べなきゃなんないのか?」
「いや、一日二日位の距離なら普通のパンで平気じゃない?」
「そうだな、あくまでこれは保存食だからな。」
焼き固めたパンは評判がすこぶる悪かった。まぁ、長旅にならなければ問題無いのかな。
この町の護衛依頼ならそんなに遠くはないだろうから問題は先送りしようかな。
この後に食べた干し肉も固く塩辛く俺達は野営の保存食に絶望したのだった。




